第7話:80億の包囲網と、15秒の奇跡
【前書き】
「あの得体の知れぬ黒い艦艇を宙塵に帰すのだ。この首都アルリウ星系のオールトの雲に没せしめよ!」
サジタリウス星系恒星連邦・元老院総書記長『ゲオルグ・ヴァルザック』の発した強権命令。
100万の星系から招集された駐屯艦隊——その総数、実に約80億隻!?。
首都星系外縁の宙域全体を覆い尽くす、銀河国家の全戦力。
対するは、黒き古代艦『ノクターン』たった1隻。
だが、今の僕たちには【全知のアカシック】と【無限のアマルテア】、そして超AGIノクターンと超生体デバイス・ナナの並列演算が備わっている!
15秒間のタイムリミット! 80億隻の包囲網を潜り抜け、エレナの待つ要塞最深部へ突入せよ!
第3章第7話、手に汗握る電撃強奪戦、どうぞお楽しみください!
「……なんだありゃあ……冗談だろ……!?」
ノクターンのメインサロン。全天周ホログラムモニターを見上げたマルコが、開いた口が塞がらない様子で戦慄していた。
僕たちがスリップドライブ(高次元跳躍)を解除した先——サジタリウス星系恒星連邦の首都【アルリウ恒星系】の外縁宙域。
そこに広がっていたのは、星空ではなかった。
視界のすべてを埋め尽くしていたのは、赤と青のIFF識別信号を点滅させる無数の巨大戦艦、重巡洋艦、軽巡洋艦、駆逐艦、多目的護衛艦、戦闘機動空母、巡洋駆逐艦、宙防艦、機動要塞などなど、多種多様な軍用宇宙艦艇が出そろって、観艦式でも始めるのかといった様相を呈している。
100万の星系からそれぞれ5,000〜1万隻ずつ緊急招集されたという連邦駐屯艦隊。その総数、実に約80億隻!?。
星系の外縁をなす「オールトの雲」の氷小惑星群すら覆い隠すほどの鉄の壁が、第4要撃要塞を中央に抱え込むようにして、幾重にも連なる幾何学的な球形包囲陣を形成していた。
「アカシック・レベル2に続き、アマルテア・プラントLevel 2まで奪われたんだ……。連邦のトップも正気を失ってるわね」
連邦軍の通信が漏れ聞こえ、司令部からの通達をシルヴィアが額の汗を拭いながら、コンソールの数値と共に読み上げる。
「連邦元老院書記長……ゲオルグ・ヴァルザックの直命よ。『あの黒い艦艇を宙塵に帰し、アルリウのオールトの雲に没せしめよ』だって。全星系の戦力を集結させて、文字通り銀河の力で押し潰す気よ!」
「80億隻……! 宇宙の塵どころか、一瞬で原子レベルに分解されそうな数じゃねえか!」
マルコが叫ぶ。
だが、操舵桿を握る僕の胸の奥に、怯えは一切なかった。
今のノクターンは、ペルセポネで出逢った頃の傷ついた古代艦ではない。
『アカシック・レベル2』による全宙域のリアルタイム戦術予測。
『アマルテア・プラントLevel 2』による無制限のナノ修復と高圧歪曲エネルギーの充填。
そして何より——
「大丈夫です、リョウ様……」
僕の隣に立つナナが、華奢な手で僕の袖をギュッと握りしめた。
その瞳には、かつてポッドの中で絶望していた影など微塵もない。
「ノクターン様との超波動演算同期……完了しています。80億隻の砲撃管制データの隙間、コンマ0001秒の死角……すべて私とノクターン様で並列予知いたしました……!」
『ふふん! 最高峰の超AGIである私と、超生体デバイスであるナナちゃんの合体演算ですよぉ〜!』
ノクターンのARメイドモードが、胸を張って不敵に笑う。
『100万星系の艦隊が束になってかかってこようと、今のノクターンとマスターたちの前には、止まっている標的も同然ですぅ〜!』
「頼もしいね!」
僕はニヤリと笑い、スロットルレバーを限界まで押し込んだ。
「エレナとの約束の場所……要塞最深部の高次元バラスト排出口へ突っ込むぞ! 全員、衝撃に備えろ!!」
ドバアァァァンっ!!!
ノクターンの機体下部から黄金色のアマルテア光線が放射され、時空歪曲エンジンが唸りを上げた!
「全艦隊、撃てええええっ!! 侵入者を一粒子も残さず消し去れ!!」
連邦合同艦隊の司令官の叫びとともに、80億隻の戦艦が一斉に主砲を放った!
宙域全体が真白な光の熱波に飲み込まれる。数千億本の光束とプラズマ弾が、十字砲火となってノクターン一点へと殺到する!
だが——。
「見えたわ! ナナちゃんの弾道予測データ、操縦系にリンク完了!」
シルヴィアが叫ぶ。
ノクターンはまるで未来が見えているかのように、80億隻の砲火が交差するコンマ数ミリの「絶対安全エリア」を、完璧な高次元スライドで擦り抜けていく!
ドギャァァァン! ドズォォォン!
周囲の氷小惑星や連邦自身の前衛艦が味方の誤射で次々と爆発・崩壊していく中、漆黒の船体は掠り傷一つ負うことなく、高熱の爆炎を突き抜けて要塞へと肉薄した!
「な……なにィ!? 80億の集中砲火を回避しただと!?? バカな、どんな最新鋭AIでもそんな演算は不可能なはずだ!!」
悲鳴を上げる連邦司令部。
「マルコ、排出口の岩盤を吹き飛ばせ!」
「任せとけぇ!! アマルテア直結・高圧ナノ圧縮ビーム砲、撃ち込めえぇぇぇっ!!」
ズバアァァァァンッ!!
アマルテアから無限に供給されるエネルギーを束ねた巨大な光柱が、要塞側面の高次元バラスト排出口のチタン装甲をドロドロに溶かし、巨大な破砕孔を穿った!
「潜入成功! 内部ダクトへ突入するわ!」
ノクターンは寸分違わず壊れた排出口へと滑り込み、要塞内部のメンテ用暗黒ダクトへと消え去った!
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要塞最深部・高次元炉心ブロック。
「……来たわね!」
作業服の袖を捲り上げたエレナ・アストレア・ヴェスパーが、手にしたプライベート端末の点滅を見て不敵に笑った。
外部では80億隻の自軍艦隊が大騒ぎし、要塞全体が揺れている。だが彼女の瞳は冷静そのものだった。
「1000年前からのお間抜けな連邦の豚ども……私たちの血脈を舐めないで頂戴!」
エレナはコンソールのメインレバーを力任せに引き抜き、隠されていた緊急バイパスコードを打ち込んだ!
『緊急警告! 高次元炉心プロメテウス・コア、異常共振を検知! 一時的フェイルセーフ作動!』
『要塞全域の絶対不可侵シールド……低下します! カウントダウン開始!』
【15……14……13……】
要塞を覆っていた巨大な青白いシールドが、一瞬で消失した!
「今よ、シルヴィア! リョウ! プロメテウス・コアを引っぺがしなさい!!」
エレナが叫ぶ!
【10……9……8……】
ダクトの天井が豪快に吹き飛び、黒き古代艦ノクターンが炉心室へと躍り出た!
「行けぇぇぇ、重力サルベージ・アーム!!」
リョウの叫びとともに、ノクターンの艦首から伸びた高次元アームが、要塞の中央で眩い真紅の光を放つ【プロメテウス・コア Level 2】をガッチリと掴み取った!
【5……4……3……】
バヂヂヂヂッ!!
要塞のメイン電源が引き千切られ、真紅のエネルギー球体——プロメテウス・コアがノクターンの機体中央へと吸い込まれていく!
「エレナ、跳べぇぇぇっ!!」
シルヴィアがエアロックを開け、手を伸ばす!
「任せなさいっ!!」
エレナはコンソールの爆破スイッチを叩きつけると、手すりを蹴ってノクターンの開かれたエアロックへとダイブした!
ガシッと、シルヴィアとエレナの手が強く結ばれる!
【2……1……0!!】
「プロメテウス・コアLevel 2……完全強奪! 合体完了ですぅぅ〜〜〜っ!!」
ノクターンの歓声と同時に、機体全体から真紅と黄金が混ざり合った、凄まじい神話級の高次元オーラが爆発した!
「全エンジン、限界オーバーロード! 80億の包囲網を『時空歪曲突撃』でブチ抜くぞーーっ!!」
リョウがスロットルを最大まで倒した瞬間、ノクターンは要塞の天井を突き破り、外の世界——80億隻の連邦艦隊が待つ漆黒の宙域へと飛び出した!
「こ、コアを奪取されたぞ!う、撃て打て 撃て! 撃ちまくれ!」
「く、空間転移の歪曲空間にま、巻き込まれるぞ、全艦退避ひ、ひぃぃぃ~」
パニックに陥った連邦艦隊が一斉に光線を放つが、すでに遅かった。
プロメテウスの『無限エネルギー』とアマルテアの『無限物質』、そしてアカシックの『全知演算』が合体したノクターンは、真紅と黄金の光の槍と化していた!
ズゴォォォォォォンッ!!!!!
80億隻の艦隊が形成していた「鉄の壁」が、ノクターンの突撃一閃によって、まるで紙くずのように数千キロにわたって円形に消失・消滅していく!
「な……なんだあの力はあぁぁぁぁっ!???」
元老院書記長ゲオルグの絶叫が通信波に響き渡る中、漆黒の船体は80億の包囲網にポッカリと開いた巨大な穴を駆け抜け、高次元空間の彼方へと消え去っていった——!
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【後書き】
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
80億隻という狂気の大艦隊による「アルリウ星系包囲網」を、超AGIノクターン&超生体デバイス・ナナの奇跡の並列演算と、エレナ命がけの「15秒のシールドダウン」によって見事に突破!
連邦の悲願であった【プロメテウス・コア Level 2】の強奪&合体が完了し、新たな仲間「エレナ・アストレア・ヴェスパー」の救出にも成功いたしました!
アカシック2(全知)+アマルテア2(無限物質)+プロメテウス2(無限エネルギー)を手に入れたチーム・ノクターン!
もはや並の戦力では束になっても敵わない、真の神話級スペックへと船が覚醒いたしました!
次回、第3章第8話(通算第26話)!
**『プロメテウス合体! ダブル・アストレアと賑やかな食卓』**
激闘を終え、安全宙域へと脱出したノクターン艦内。
無事に救出されたエレナとシルヴィア(ダブル・アストレア)の再会、そしてプロメテウスの無限出力によってさらにパワーアップしたマルコの極上料理の宴が始まります!
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次回更新もどうぞ期待してお待ちください!




