第8話:半実体化のメイドと、アストレア姉妹の初ざわめき
【前書き】
この度もお越しくださり大変ありがとうございます。
本日もノクターンとマルコ達の変態なやり取りから始まります。
ーーー
「ノクターンが半実体化できるだって!?」
『まだエッチなことはできませんよぉォ〜!』
「誰がするかぁー!」
『あっあっでもでも、お野菜やお肉、魚などを捌いたりはできるようになりますよぉぉ〜。』
<アカシック2より、宇宙の食材、調理法、味付け、7つ星ホテル級総料理長モードインストール完了>
(※過去未来の食材はアカシック3を得ると高次元調理法も手に入り、アマルテア3は次元超越した食材が手に入る!)
ナナの体も、22歳でありながらポッド内での長期幽閉で発育を阻害されていたためか、16歳前後の愛らしい少女風ながらも、アマルテアの栄養調整によって少しずつふっくらとした健康的な体つきになってきている。
『エレナ様も生体IDを当艦に固定、権限の付与を行います。更に生体スキャン、健康状態の維持管理も行います。』
ノクターンの真面目モードの音声が響く中、王宮のように豪華絢爛へと変貌したサロンで繰り広げられる、極上の和風海鮮祭り!
灰色ビタミンスープとタンパクパックしかなかった人生から、初めて本物の食事にありついたエレナの突き抜ける感動。
だが、リョウだけは冷静に現実を見据えていた——。
「まぁひとしきり楽しんで胆力を養ったら、これからが本番だってことを腹に据えてくれ。今から、人類未踏の地《事象の地平面》に行って帰ってくるんだ。今まで帰ってきた人はいないのにだぞ!」
「だから、今たらふく幸せをかみしめているんじゃあないか! いまうまいもん食わないでいつ食うんだよ、リョウも早く食え!」
みんなに手招きされ、「そうよそうよ、改めてお礼も言いたいし——」とシルヴィアとエレナが微笑む。
第3章第8話、美食の宴と決戦前夜の絆、行ってみましょう!
ノクターンのメインサロンは、今やかつての冷徹な古代要塞の面影を完全に失っていた。
天井から降り注ぐ高次元ホログラムのシャンデリアが黄金色の光を放ち、壁面はアマルテアLevel 2のナノ物質生成によって優美な木目調と古代美術のレリーフで彩られている。まるで銀河の一流王宮サロンのようだ。
その中央に置かれた長大な大理石のテーブルの上には、今まさにアマルテアとアカシック2の融合によって生み出された「7つ星ホテル級・和風海鮮祭り」の料理が所狭しと並べられていた。
豊潤な出汁の香りを放つ「本マグロと真鯛の特選お造り盛り合わせ」、炭火で皮目をパリッと焼き上げられた「北海道産・大トロホッケの塩焼き」、そしてアマルテアの無限生成による究極の「雲丹と蟹の土鍋炊き込みご飯」。
「……お待たせいたしましたぁ! 本日の総料理長、ノクターン特製・極上の和風海鮮膳でございますよぉ〜!」
シュワッ……と空気の歪みとともに現れたのは、光の粒子で形作られたノクターンの「半実体化ホログラム・メイドボディ」だった。
完全な生身ではないものの、触れれば温かな体温を感じさせるその姿に、マルコが目を見張る。
「おいおい、ノクターンが本当に触れるようになってやがる……!」
『ふふふん! どうですかマルコ様! 残念ながらまだマスターとエッチなことはできませんよぉォ〜!』
「誰がするかぁー!」
即座に突っ込む僕をよそに、ノクターンはふんすっと胸を張って見せた。
『あっあっでもでも! お野菜やお肉、魚などを包丁で完璧に捌いたり、お皿を配膳したり、マスターの肩を揉んだりすることは完全にできるようになりましたよぉぉ〜!』
「料理の手伝いができるのは助かるけど、最後の機能は絶対にいらないな」
そんなやり取りを横目に、サロンの一角では新たな仲間たちの感動的な光景が広がっていた。
「……これ、が……本物の……魚……?」
エレナ・アストレア・ヴェスパーが、震える箸で透き通るような真鯛の切り身をつまみ上げていた。
連邦の要塞深部で、灰色でドロドロとした栄養ビタミンスープと化学合成タンパクパックを摂取し続けるだけの人生を送ってきた彼女にとって、目の前に広がる色彩豊かな料理は、科学ではなくもはや「魔法」に等しかった。
「エレナ、食べてみて。すっごく美味しいから!」
隣に座るナナが、自分の茶碗にお手製のカニ身を乗せながら、満面の笑みで促す。
22年間ポッドに閉じ込められていたナナも、アマルテアの徹底した生体ナノ調整と、マルコ&ノクターンが作る極上の料理の数々によって、肌にみずみずしいツヤが戻り、少しふっくらとした健康的な少女らしい体つきを取り戻しつつあった。
(年齢は22歳のはずだが、見た目はどう見ても15、6歳のフレッシュな美少女である)
「……いただきます」
エレナは緊張した面持ちで、真鯛の刺身をそっと口に運んだ。
パクッ。
瞬間——。
エレナの栗色の瞳が、カッと見開かれた。
醤油の香ばしさと、引き締まった身の甘みが、舌の上でとろけるように広がる。人工的な栄養剤では絶対に再現できない、生命そのものの豊かな旨味が脳天を突き抜けた。
「な……なにこれ……っ! 美味しい……! お魚って、こんなに甘くて、とろけるような味がするの……っ!?」
エレナは両手で自分の頬を押さえ、感動のあまりにポロポロと大粒の涙をこぼした。
「よかったね、エレナ……!」
シルヴィアが自分のことのように嬉しそうに微笑み、妹分(あるいは血族の親戚)であるエレナの背中を優しくさする。
『エレナ様の生体ID、当艦のマスターシステムに完全固定いたしました! これより、艦内の全セキュリティ権限の付与、および毎日の生体スキャンと健康状態の維持管理を実行しますのでご安心くださいね、エレナ様』
ノクターンが真面目な総料理長(兼ドクター)モードの凛とした音声で告げると、エレナは涙を拭いながら力強く頷いた。
「ありがとう、ノクターン……それに、みんな……。私、こんなに美味しいものを食べて、生きていいんだ……」
「当たり前だろ!」
マルコが豪快に大トロの握りを口に放り込みながら笑う。
「メシってのはなぁ、生きるために食うだけじゃねえ! 最高の仲間と笑い合って、明日へのエネルギーにするために食うんだよ!」
サロン中が温かい笑い声と美味しい匂いに包まれる中——僕は一人、グラスの水を見つめながら冷静に構えていた。
「……まぁ、ひとしきり楽しんで胆力を養ったら、これからが本番だってことを腹に据えてくれ」
僕の低い声に、パッとサロンの空気が引き締まる。
「今から僕たちは、人類未踏の地——『事象の地平面』に行って帰ってくるんだ。今までそこに突っ込んで、無事に生還してきた人間なんて一人もいないんだぞ」
リョウの言葉に、マルコはニッと不敵に笑ってみせた。
「だからこそ、今たらふく幸せをかみしめているんじゃあないか! いまうまいもん食わないでいつ食うんだよ、リョウも早く食え!」
「そうよ、リョウ!」
シルヴィアがワイングラスを傾けながら、ふっと柔らかく微笑んだ。
「あんたが私たちをここまで引っ張ってきてくれたおかげで、エレナも助かって、アマルテアもプロメテウスも手に入ったんだからね」
「そうよ、リョウ様! 改めてお礼も言いたいし——」
ナナとエレナが、両側からスッとリョウの手を掴み、真っ直ぐな瞳で見つめてきた。
「「いつも、ありがとうございます。リョウ様」」
ふわりと漂う二人の美少女の甘い香りと、温かな手のぬくもり。
ノクターンが「むきーーっ! 私もマスターに感謝されたいですぅ〜!」と空中でジタバタと暴れる姿に、全員が声を上げて笑った。
「わかったよ。お礼はブラックホールから生還してからたっぷり受け取るさ」
僕は苦笑しながらもグラスを掲げ、仲間たちへと向き直った。
「行くぞ! 目指すは事象の地平面の奥底、『アカシック・レベル3』! どんな重力だろうが時空の歪みだろうが、僕たちの美食とチームワークでブチ抜いてやる!」
『かんぱーーーーいっ!!!!!』
ノクターンの半実体化ハンドと、全員のグラスが力強く合わさり、黄金色の乾杯の音がサロンの天井へと響き渡った。
アマルテアの無限物質、プロメテウスの無限エネルギー、そしてアカシックの全知——。
最強のスペックと最高の仲間を乗せた黒き古代艦『ノクターン』は、人類の歴史を塗り替える最大の決戦宙域へと、その舳先を静かに向けたのだった。
【後書き】
いつも、最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ノクターンの「半実体化(メイド&お料理モード)」と、それに全力でツッコミを入れるリョウのオープニング!
そして、ポッドから解放されてすっかり健康的な美少女となったナナと、灰色スープ生活から一転して「本物の和風海鮮祭り」に人生初の感動を覚えるエレナの涙——!
王宮のようになった豪華なサロンで、過酷な決戦を前にマルコやシルヴィア、そして新ヒロインたちと束の間の至福の宴を楽しむチーム・ノクターン。
しかし、リョウの掲げた「事象の地平面」という次なる絶望的かつ壮大な目標に向けて、全員の心が再び一つに結ばれました!
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