第5話:要塞深部の血脈と、秘密の協力者
【前書き】
要塞攻略に必要なのは、圧倒的なパワーだけじゃない。
時に「内側からの鍵」こそが、鉄壁の扉を開く最大の武器になる。
マルコの一言から明かされた、連邦要塞の深部に囚われし「もう一人の末裔」の存在。
シルヴィアの血脈、連邦とアトランティスの醜悪な裏取引、そして新たな出会いの予感——!
第3章第5話、要撃要塞潜入作戦・事前密談編、行ってみましょう!
ノクターンのメインサロン。
アマルテアLevel 2の覚醒によって無制限の補給と美食を手に入れた僕たちだったが、次なる目的地——連邦・第4要撃要塞の立体ホログラムを前に、再び重苦しい静寂が漂っていた。
ふと見ると、マルコが腕を組み、何かを深く思い立ったようにじっと思案に耽っている。
普段なら真っ先に「次は何食う!?」と騒ぎ立てる男が、珍しく眉間にシワを寄せて黙り込んでいるのだ。不審に思った僕が声をかけてみた。
「なんだ、何か悩み事か?」
さらに追い打ちをかけるように、空中をすいぃーと飛んできたホログラムAIのノクターンが、ARメイド服の裾を揺らしながら割り込んできた。
『マルコ様の疑問思考波動を感知しましたよぉぉ〜! 何か御悩み事ですかぁぁ〜? 100体位なら子供を持ってもいいかな〜なんて思い始めましたぁぁあ〜?』
「誰が100体も子供作るかよバカ野郎! 単位も『体』じゃなくて『人』だろ! っていうか何で俺がノクターンと子供作ることになってんだよ!」
間髪入れずに怒号を飛ばすマルコ。
そのやり取りを見かねたシルヴィアが、溜め息を吐きながら二人の間に割って入った。
「はいそこ、変態AIと料理番の不毛な会話は終わり! で、マルコ、本当は何を考えてたのよ?」
マルコはコンソールのホログラム画面に視線を戻し、真剣な面持ちで語り始めた。
「いや、実はな……先のアマルテア2奪取の時はナナちゃんという、たまたま利害の一致した強力な味方になってくれた助力があったおかげで奪取できただろ? アカシック2の時はほぼ奇襲というか闇討ちというか、宙域の性質上相手の追手がかかりにくいところだったおかげでどうにか奪取できたんだが……」
マルコはそこで一度言葉を詰まらせ、再び深い思案に耽る様子を見せた。
「あぁー……次に狙うプロメテウス・コア2の要撃要塞の抵抗は、今までの比じゃあねえだろうな」
僕が先を促すと、マルコはパンッ! とひらめいたように手を打った!
「そうなんだよっ! 連邦の要撃要塞深部に、誰か協力者を探し出せないものかと考えているんだ!」
「なるほどな……確かに今までは、たまたま上手くいっていただけだったのかもしれないな」
僕は顎に手を当て、要塞の立体構造図を見上げた。
「連邦からしてみれば、アカシック2を奪われた時点で大失態だ。次に僕たちが狙うのはプロメテウス2だとアタリをつけて、相当な警戒をしているのは間違いない。……なぁノクターン、何かいい案はないのか?」
すると、空中で可憐に漂っていたノクターンが、スッと表情を改め、胸に手を当てて敬礼してみせた。
『はいぃー、一つ心当たりはあります。……シルヴィアさんには黙っていたのですが、あなたは私たち聖遺物の開発設計者の末裔なのですよぉォ〜』
「うすうす感付いていたわよ! なんでいまさらそんなこと!?」
シルヴィアがジロリとホロAIを睨みつけ、語気を強めて問い返す。
ノクターンは耳をすぼめるようにしょんぼりとした仕草を見せたあと、まじめな顔つきに変えると、どこからか取り出したホログラフィックの黒板に手際よく図解し始めた。
『はいいぃ〜……実は、シルヴィア様に精神的な負担をかけないようにと、情報を小出しにしていたのですぅぅ〜。実は開発設計者の末裔の方々は数人、生存が確認されていまして、その一人がシルヴィア様でアトランティスに強制労働させられていたのです。連邦とアトランティスが裏では繋がっていることは先日も申し上げたところなのですが……彼らは末裔の方々を“分配”して活用しているのです』
「……!!」
サロンの空気が一瞬で凍りついた。
全員がシリアスな面持ちになり、息をのんでノクターンへ視線を寄せる。
静寂を割って、シルヴィアが震える声で口を開いた。
「どういう事よっ! 私に……親戚がいるってことなの?! その人たちが、あの地獄の強制研究をさせられているの!?」
『はいぃ〜……あの、その、要撃要塞のコアメンテナンスの深部に一人おられるのが、現在確認できていますぅ……』
ノクターンが黒板の図をズームアップさせると、要塞最深部・高次元炉心ブロックの片隅に、ひとつのバイオID反応が点灯した。
そこに描かれていたのは、シルヴィアと同じ『高次元工学適性因子』を持つ、一人の若い女性の生体データだった。
(……連邦の要塞深部で、プロメテウス・コアの維持・メンテナンスを強制されている“末裔”……)
マルコがゴクリと唾を飲み込み、シルヴィアは言葉を失ったまま画面を見つめている。
毛布に包まれたナナも、かつての自分と同じ境遇の存在を知り、胸の前で小さく手を握りしめていた。
「その方に……なんとかコンタクトを取る方法はないのかな?」
僕が呟くように問いかけると、ナナがぽつりと呟いた。
「私がポッドに閉じ込められていたころに、同じような境遇のかたの魂の共鳴をいただいたことがあります……。“あきらめないで”とだけ……とても温かい波動でした。きっと、その方なのではないでしょうか……?」
自分の過去を重ね合わせるように、胸の前でキュッと手を握りしめるナナ。
そして、ノクターンは不敵に、そして少し切なげに微笑んだ。
『ナナちゃんの感じていた波動共鳴はプロメテウス・コアの共鳴波を使えば、彼女の端末に直接プライベートラインを開くことは可能です……。マスター、シルヴィア様……彼女を連邦の地獄から救い出し、要塞の鍵を手に入れますか……?』
「決まってるだろ」
僕はスロットルレバーに手を置き、力強く言い放った。
「僕たちの目的は、プロメテウスの横取りと……仲間(末裔)の救出だ!」
シルヴィアが強く頷き、目元に決意の光を宿す。
鉄壁の第4要撃要塞を内部からぶち破るための「真の作戦」が、今ここに動き出した——!
【後書き】
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
マルコの「内通者が必要だ」という鋭い洞察から明かされた衝撃の事実!
シルヴィアの先祖(開発者)の血を引く「もう一人の末裔」が、連邦の第4要撃要塞深部でプロメテウス・コアの強制メンテナンスをさせられていることが判明いたしました!
ノクターンの「変態AI」発言による爆笑のオープニングから、一気にシリアスな救出&強奪作戦へと加速する最高の緩急!
かつてアトランティスで強制労働させられていたシルヴィア、ポッドに閉じ込められていたナナ、そして今度は連邦要塞深部に囚われた新たな「開発者の末裔(新ヒロイン候補)」……!
次回、第3章第6話(通算第24話)!
『要塞深部からの通信! 孤高のエンジニア』
ついに接続される秘密のプライベートライン!
要塞最深部で孤独に戦う新たな末裔との出会いと、要塞攻略の「裏の鍵」が手に入る激熱の展開へ突入します!
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