第4話:嵐の前のアマルテアと、猛追する蜂の巣
【前書き】
「はぁ〜食った食った! 腹も満腹、アストラム燃料も弾薬も満タン、クルーの気力も団結もまん丸だな!」
『ふふふん! アマルテアLevel 2の全自動補給と、私の高次元エンジンの完全同期により、ノクターンのコンディションは過去最高を更新中でございますよぉ〜!』
「そうはいっても俺たち、かなり強くなってるんじゃねえか? ナナちゃんっていう最強の生体演算パートナーも加わったし、クルーも充実してきてるし、変態AIもかなり育ってきてるしな!」
『ちょっとマルコ様!? 変態AIとは心外ですぅ! 変態ではなく“マスターへの一途で健気な愛”と呼んでくださいな!』
「……二人とも、気を抜いてふやけてる場合じゃないぞ。レベル2とはいえ、聖遺物を連邦から一基、アトランティス社から一基……それぞれ大本命を強奪されたんだ。敵軍どもは今頃、スズメバチの巣を叩き落とされたどころじゃない勢いで、鬼の形相で僕たちを探し回っているに違いない」
「ふふ、望むところよ。今のノクターンなら、並の追撃艦隊なんて返り討ちにしてあげるわ!」
というわけで、無制限補給を得たチームの過信と、迫り来るメガコーポ&連邦の包囲網!
第3章第4話、行ってみましょう!
「——はぁ〜っ、食った食った! もう胃袋が破裂しそうだぜ!」
ノクターンのブリッジ兼メインサロン。
マルコが腹をパンパンに膨らませ、操舵席の横にあるミーティングチェアに深く深体をもたれかけさせていた。
テーブルの上には、ついさっきまで並んでいた最高級A5和牛のステーキ、特上生ウニ丼、本マグロの大トロ刺身、そして茹で立てのタラバガニの空殻が山のように積まれている。
……もちろん、食い散らかした先から【アマルテア・プラントLevel 2】のナノ分解アームが作動し、皿も残骸も一瞬で分子分解されて次の資材へと還元されていくのだが。
「お腹も満腹、アストラム燃料も弾薬も完全満タン。クルーの気力も団結もまん丸……文句なしの100点満点だな!」
マルコは満足そうに口元を拭い、隣で小さくお茶を飲んでいるナナの頭を優しく撫でた。
「なっ、ナナちゃん? 初めてのご飯、本当に最高だったろ?」
「はい……! マルコ様……リョウ様……。胸の奥が、まだぽかぽかと温かいです……」
ナナは毛布に包まれたまま、少し照れたように頬を緩めた。
22年間、青緑色のポッドの中で栄養液を注ぎ込まれるだけだった少女の肌には、すでに人間らしい血色が戻り始めている。
『ふふふん! ナナちゃんの超並列演算プロトコルが当艦の補給ラインに組み込まれたことで、アマルテアの生成効率はさらに20%向上いたしましたよぉ〜!』
空中を可憐に旋回するホログラムのノクターン(ARメイドモード)が、誇らしげに胸を張る。
『弾薬の無制限補給、艦体装甲の自動ナノ修復、さらには乗組員の皆様への最高級特級食材の無限ドバドバ生成……! 今のノクターンは、文字通り“無敵の動くパラダイス”でございます!』
「そうはいっても俺たち、ここ数日でかなり強くなってるんじゃねえか?」
マルコが腕を組み、ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべた。
「サルベージ屋上がりのお前に、腕利きメカニックのシルヴィアちゃん、俺っていう最高級シェフ、アマルテアを完璧に使いこなすナナちゃん……! クルーも充実してきてるし、この変態AIもかなり育ってきてるしな!」
『ちょっとマルコ様!? 変態AIとは心外ですぅ!』
ノクターンが頬をぷくーっと膨らませて抗議する。
『変態ではなく“マスターへの一途で健気でちょっぴりアグレッシブな愛”と呼んでくださいな! それに、私もアカシック・レベル2を得たことで、情報処理能力は旧連邦のスーパーコンピューター100台分に匹敵するまでに成長しているのですよぉ〜!』
「はいはい、変態愛ね」
シルヴィアが呆れたように笑いながら、コンソールのバイタルチェック画面を叩く。
「でも、マルコの言うことも一理あるわ。歪曲シールドの展開速度も上がってるし、アマルテアのおかげでエネルギーと資材の心配がゼロになった。連邦のパトロール艦隊くらいなら、正面から叩き潰せるだけの火力を維持できるわ」
仲間たちの頼もしい言葉。
クルーの連帯感と自信は、ペルセポネで出会った頃とは比べものにならないほど強固なものになっていた。
だが——僕は操舵桿を握り直すと、ブリッジの全天周ホログラムに映る死宙域の外縁部を鋭い目で見つめた。
「……みんな、浮かれるのはそこまでだ。気を抜いてふやけてる場合じゃないぞ」
僕の低い声に、マルコとシルヴィアがパッと表情を引き締める。
「僕たちが手に入れたのは、聖遺物のレベル2だ。……相手からしてみれば、世界の覇権を左右する『オーバーテクノロジーの核』を、連邦(アカシック2)とアトランティス社(アマルテア2)からそれぞれ一基ずつ、根こそぎぶん盗られたんだぞ?」
僕の言葉に、シルヴィアがハッとしたように息をのんだ。
「そう……よね。アトランティス社にしてみれば、セクター09の要塞を破壊された上に、22年かけた生体デバイス(ナナ)とアマルテアを同時に奪われたんだもの……」
「ああ」
僕は頷き、メインモニターに銀河恒星連邦の通信暗号データを表示させた。
「レベル2とはいえ、聖遺物を強奪された敵軍どもだ。……もはやスズメバチの巣を叩き落されたどころの勢いじゃない。鬼の形相で、銀河中の索敵レーダーと特務艦隊を全動員して僕たちを探し回っているに違いないんだ」
『マスターの仰る通りです……』
ノクターンの表情から冗談が消え、冷徹な古代AGIとしての光が宿る。
『アカシック・レベル2の広域通信モニターに、恐ろしい数の暗号通信が殺到しております。……銀河恒星連邦・特務八局、およびアトランティス社私兵艦隊『ネプチューン』が、合同で【死宙域・全宙界封鎖ライン】の構築を開始いたしました』
モニター上に、赤と青の無数の光点が死宙域の出口を埋め尽くしていくネットワーク図が表示された。
「合同艦隊……!? あの二大勢力が、表向きは対立してるくせに裏で手を組んで僕たちを囲み込もうとしてるのか!?」
マルコが目を見開く。
(……やっぱりな)
僕は胸の奥で、冷ややかな確信を得ていた。
連邦とアトランティス社。
表向きは領域権益を争う敵同士に見えて、超上層部(元老院と取締役会)のレベルでは完全に繋がっている。
彼らにとって、自分たちの裏の野望——『隣の銀河への侵略』を脅かす僕たちチーム・ノクターンは、何としても歴史の闇に葬り去らねばならない最高危険度の排除対象なのだ。
「……面白い」
僕はスロットルレバーをゆっくりと前方に倒した。
「敵が蜂の巣をつついたような大騒ぎで追いかけてくるなら、返り討ちにしてやるまでだ。……僕たちには、無限の補給と、最高の仲間がいる」
「リョウ……!」
シルヴィアが強く頷く。
「おうよ! 追撃部隊が来たら、アマルテアで作った無限のナノ弾幕で返り討ちにしてやるぜ!」
マルコが力強く拳を突き合わせた。
ナナも小さな手を胸の前でギュッと握りしめ、静かだが力強い声で言った。
「私も……ノクターン様と一緒に、全演算力でリョウ様たちをお守りします……!」
『ふふっ、マスター! 次のターゲット……連邦・特務八局が最深部に隠し持つ【高次元エネルギー・リアクター(プロメテウス・コア Level 2)】の要塞座標、アプローチルートの設定が完了いたしましたぁ!』
ノクターンの声が、ブリッジ全体に高らかに響き渡る。
「行くぞ、チーム・ノクターン! 猛追してくる蜂どもを蹴散らして、連邦の喉元に『プロメテウス』を奪いに行くぞーーっ!!」
『スリップドライブ起動! 目標、連邦・第4要撃要塞……発進ですっ!!』
漆黒の古代艦ノクターンは、黄金色のアマルテアの光を纏いながら、敵の包囲網が待つ漆黒の宇宙へと、迷うことなく跳躍していった——!
【後書き】
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
「満腹・満タン・団結完了」で自信を深めるチーム・ノクターン!
マルコの「俺たち強くなってねぇか? 変態AIも育ってるし!」という調子乗りと、ノクターンのあざとい抗議!
そして、聖遺物を二基も奪われて「スズメバチの巣を叩き落されたどころじゃない鬼の形相」で殺到する連邦&アトランティス社の合同追撃網!
表向きは対立しつつも裏で繋がっている二大勢力の陰謀(プロジェクト・アンドロメダの影)を感じ取りつつ、リョウたちは次なる本命『プロメテウス・コア Level 2』の強奪へ向けて発進いたしました!
次回、第3章第5話(通算第23話)!
**『要撃要塞の鉄壁! プロメテウス強奪作戦開始』**
連邦特務八局が誇る無敵の要塞防衛線!
無限の弾薬と資材を手に入れたチーム・ノクターンが、圧倒的な火力と高次元技術で連邦の強大な陣形をいかに打ち破るのか!?
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次回更新もどうぞ期待してお待ちください!




