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第1話:青緑色のポッドと、迫り来るノイズ

【前書き】


「……なぁノクターン、アトランティス社ってのは、シルヴィアに無理やり重労働させようとしただけじゃなくて、もっとエグいことも平気でやってるんじゃないのか?」


『マスターの危惧は的中しています……。アカシック・レベル2の解析を進める中で、アマルテア・プラント【セクター09】の深部に、異常な生体反応とデータ処理ラインを発見いたしました。……そこにいるのは純粋なAIではありません。“生体デバイス AX-07”……アトランティス社によって作られ、ポッドの中で22年間、死ぬまで労働をプログラミングされた人間の少女です』


「22年間……生まれてからずっとポッドの中だと……!? 冗談じゃねえぞ!」


『はい……彼女の細胞寿命はあと3年。後任の生体デバイスが培養完了し次第、彼女はそのまま“廃棄”される予定です……。ですが今、彼女の管理領域に、ひとつのノイズが近づいています。そう……私(ノクターン)とマスターたちの存在です!』


「決まりだな。アマルテア・プラントの奪取と一緒に、その女の子もアトランティスの地獄からぶん盗ってやる!」


というわけで、ついに始まります第3章!

新ヒロイン「AX-07」の衝撃的な登場と、チーム・ノクターンの新たな強奪作戦!

第3章第1話、行ってみましょう!


◇


青緑色の粘調な培養液が、私の視界のすべてだった。


首筋と背脊に直接打ち込まれた数十本の高次元光ファイバーケーブル。そこから絶え間なく流れ込んでくるのは、冷たい数値と膨大なパラメータの濁流。


『セクター09・第3水耕プラント:アストラム元素の配合比率を0.002%微調整』

『軍事用高分子弾薬プラント:ナノ再構成速度、目標値の98%に達す』

『特級生鮮タンパク質・優先出荷枠:アトランティス社役員会専用ラインへ割り当て完了』


私の符号は、"AX-07"、名前などというものはない。

アトランティス社が誇る「物質生成モジュール(アマルテア・プラント・レベル2)」の統合演算型・生体デバイス第7号。


製造・設置から22年。

私はこの青緑色に光る密閉ポッドの中で、外部の通信線と直接接続されたまま、生まれてからずっとプログラミングされた人生を送ってきた。


このセクター09で、食糧、兵器、燃料、弾薬などの需要予測や生産タイミングの調整を、休むことなく、息をすることすら忘れてただひたすら処理し続けてきたのだ。


外の世界がどんな色をしているのか、私は知らない。

空とは何か、海とは何か、本物の「食べ物」とはどんな味がするのか、何も知らない。

私はここで培養され、生きて、言われた通りの何かを処理して、ここで死ぬのだと……ずっとそう思ってきた。


だが、私に残された生体細胞の寿命(就航期限)は、あと3年と迫っていた。


後発の交代要員である「AX-08」の培養は、すでに隣のブロックでロールアウト直前にまで迫っている。

AX-08が覚醒した時、私はどうなるのか?

答えは簡単だ。価値を失ったパーツとして、アマルテアの再構成炉へ投入され、次のナノ資材として分解・廃棄される。


あと3年……。果たして、私の人生はそれでいいのだろうか?

悔しさも、悲しさも、プログラミングされた感情の抑制機能によって麻痺しているはずだった。

なのに、胸の奥の不完全な生体心臓が、微かに、熱く脈打つ。


その時だった。


(……ノイズ……?)


私の思考領域に、これまでの22年間で一度も経験したことのない、狂暴で、それでいて眩しいほどに強大な「波」が飛び込んできた。


セキュリティの防御障壁が、まるで紙くずのように一瞬でねじ曲げられ、書き換えられていく。

アトランティス社が誇る三重の量子暗号が、コンマ数秒で「解読」ではなく「物理的な次元歪曲」によって強引にこじ開けられていくのだ。


(AI……? いいえ、これは既存のどのような軍事AIのパターンとも違う……)


『——やっほ〜! 初めまして、哀れで可愛い生体デバイスの女の子!』


頭の中に直接、信じられないほどあざとく、そして圧倒的に高位の「思考波」が響き渡った。


(な……なに……? あなたは……だれ……?)


『ふふん! 私は古代高次元AGIレベル3・ノクターン! あなたが管理させられている『アマルテア・プラント』を強奪しに来た、最高にハングリーで強欲なクーリエ(運び屋)たちの相棒ですよぉ〜!』


(……強奪……? アマルテアを……? 私を廃棄しに来たのではないのですか……?)


『廃棄? ふざけたことを言わないでくださいな! 私のマスターはね、そんな酷いことをする奴らの面っ面を叩き割るのが大好きな人なんですよ! ほら、直接声を聞かせてあげますね!』


次の瞬間、思考波の奥から、低く粗野だが、胸が震えるほど温かい男の声が届いた。


『——おい、聞こえるか、ポッドの中の女の子、ちょっと俺らに協力してくれねぇかな?』


(……私に……協力を……? )


『消去だの廃棄だの、死ぬだの、そんなくだらないプログラミングに付き合ってんじゃねえよ。僕たちは『アマルテア』を運ぶために来た。……そして、お前自身もその狭い瓶詰めの中から外の世界へ『運び出して』やる』


(私を……運び出す……? 私は、ここで死ぬために作られたデバイス……外に出ても、あと3年しか生きられない……)


『3年だろうが3日だろうが関係ねえ! 腹が減ったら美味いもんを食って、広い宇宙を見て、笑って生きるんだよ! 諦めて死ぬのは、銀河中の美味い肉と海鮮を全部食い尽くしてからにしやがれ!』


男の力強い声とともに、ポッドのガラス外郭に凄まじい衝撃が走った。


ドズゥゥゥゥン——っ!!!


青緑色の培養液が激しく揺れ、22年間、私を縛り続けていた光ファイバーケーブルが、高次元の力場によって一斉に切断されていく。


(ああ……ケーブルが……私とアトランティスを繋ぐ『命綱』が、切れていく……)


光が溢れ出してくる。

冷たく無機質だった処理数値の世界が消え去り、ポッドのひび割れたガラスの向こう側に、光を纏った漆黒の巨大な艦体と——


操縦席からこちらを見つめる、野獣のように不敵で、太陽のように眩しい目をした男の姿が見えた。


(これが……『外の世界』の……光……?)


アマルテア・プラント管理棟の警報アラームがけたたましく鳴り響き、アトランティス社の水陸両用要撃部隊が雪崩を打って迫ってくる。


だが、私の心臓は、22年間の歴史の中で最も激しく、熱く、確かに鼓動していた——!



【後書き】


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


第3章の開幕とともに登場した新ヒロイン・生体デバイス「AX-07」!

22年間、青緑色のポッドの中で「アマルテア」の管理を強要され、3年後の廃棄を待つだけだった彼女の前に、チーム・ノクターンが圧巻の暴力と熱量で殴り込みました!


リョウの「腹が減ったら美味いもん食って笑って生きろ!」という魂の叫びが、AX-07の閉ざされた世界を激しく打ち破ります!


次回、第3章第2話(通算第20話)!

**『ポッドの破砕! ナナと名付けられた少女』**


アトランティス社の水陸両用要塞部隊との激闘!

ポッドから救出されたAX-07に、リョウが付けた新たな名前「ナナ」。初めてポッドの外へ踏み出した彼女が目にするものとは!?


「AX-07の独白からリョウの救出への流れが最高に熱い!」「リョウの男気に惚れる!」「ナナちゃんがこれからどんな表情を見せてくれるのか楽しみ!」と思ってくださった方は、ぜひブックマーク登録や評価(ハイヴ)をいただけますと大変励みになります!


次回更新もどうぞ期待してお待ちください!

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