第12話:選択の時! 最初の強奪ターゲット
【前書き】
「……というわけでマスター! 弾薬や燃料が無限に生成できるうえに、特級の食いもんと私のリアルボ……」
「それは後回しっ!!」
「痛っ!? シルヴィア、突っ込む手が容赦ねえな!?」
「当たり前でしょ! リアルボディも肉も後回し! 今の私たちに必要なのは、ブラックホールの超重力に耐える無制限の『エネルギー』と絶対防御の『シールド』が優先よっ!」
「いやしかしシルヴィアちゃん……腹が減っては戦ができぬって昔の人も言ってたろ? A5和牛とウニが無限に湧き出る船になったら、戦意だって百倍増しだぜ!?」
「はいはい、戦意よりも船が潰れたら元も子もないの! リョウ、バカ二人は放っておいて早くビシッと決めて!」
「……やれやれ。よし、決まりだ」
というわけで、食い気か!? パワーか!?
第2章第12話、運命のターゲット選択編、行ってみましょう!
◇
死宙域の冷気と重力波の乱流がノクターンの時空歪曲装甲を叩く音の中、ブリッジの空気は妙な熱気に包まれていた。
「……というわけで、状況を整理するわよ」
シルヴィアが腕を組み、ホログラムモニターに表示された二つの絶対秘匿宙域を指し示した。
「私たちが目指す真の宝の地図『アカシック・レベル3』は、銀河中心の超巨大ブラックホールの事象の地平面の内側に沈んでいる。……でも今のノクターンの出力じゃ、飛び込んだら二度と戻ってこられない」
「だから、そこへ挑むための『足腰』として、二つの『レベル2・聖遺物』のどちらかを先に強奪しなきゃいけないってわけだな」
リョウはシートに身を委ね、操舵桿に手を置いたまま二つのターゲットを睨みつけた。
ひとつは、アトランティス社が所有する海洋・水耕栽培プラネット【セクター09】の地下要塞に眠る——**【物質生成モジュール(アマルテア・レベル2)】**。
もうひとつは、銀河恒星連邦・特務八局が最前線要撃要塞の最深部に隠し持つ——**【高次元エネルギー・リアクター(プロメテウス・コア・レベル2)】**。
『はいっ! アカシック・レベル2の解読データによれば、どちらも現段階で私たちが強奪可能な唯一の選択肢ですよぉ〜!』
ノクターン(ARメイドモード)が空中を可憐にクルリと旋回し、自慢気に胸を張る。
『アマルテア・レベル2を手に入れれば、艦体の自動修復資材はもちろん、弾薬・燃料が無限に生成できるうえに、特級の食いもんと私のリアルボ……』
「それは後回しっ!」
バシッ! と、シルヴィアのチョップが空中を舞うホログラムノクターンの脳天(に発生させた局所力場ノイズ)に叩き込まれた。
『ひにゃっ!?』
「痛っ!? シルヴィア、突っ込む手が容赦ねえな!?」
横で見ていたマルコが自分の頭を押さえて身をすくめる。
「当たり前でしょ! リアルボディも肉も後回し! 今の私たちに必要なのは、ブラックホールの超重力に耐える無制限の『エネルギー』と絶対防御の『シールド』が優先よっ!」
シルヴィアがコンソールを叩きつけ、息を荒くして叫んだ。
「連邦の『プロメテウス・コア』を先に奪えば、ノクターンの高次元融合炉は実質的に無限の出力が手に入るの! 歪曲バリアを常用できれば、アトランティス社や連邦の主力艦隊に囲まれたって掠り傷ひとつ負わずに脱出できるわ! 安全と確実性を考えるなら、プロメテウス一択よ!」
「いやしかしシルヴィアちゃん……」
マルコが口元をフキフキしながら、食い下がるように身を乗り出してきた。
「『腹が減っては戦ができぬ』って、地球の古いことわざにもあるだろ? アマルテアを手に入れればだぞ!? A5ランクの銀河和牛も、獲れたての氷結ウニも、分子構造から完全再現して毎日食い放題なんだぞ!?」
「また肉の話!? 命が掛かってるのよ!?」
「肉は命だ!! 美味いもんを食って気力を百倍にして挑まなきゃ、連邦の要塞なんて攻略できるかよ! それに、弾薬と燃料が無限生成できるようになれば、実質的な作戦行動時間は無限になるんだぜ!?」
「燃料はアストラム燃料を買い足せばいいでしょ! 現状のエネルギー出力の底上げが先!」
「買い足す金はどこから出すんだよ! 三百万クレジットだって無限じゃねえんだぞ!?」
ギャーギャーとブリッジ内で巻き起こる、技術者 vs 料理番の熱いバトル。
『うふふ、マスター。お二人とも私を愛してくださっていて、メイド冥利に尽きますねぇ〜』
ノクターンがリョウの肩のあたりでニコニコとウインクしてみせる。
「……やれやれ」
リョウは苦笑いを浮かべながら立ち上がり、喧嘩中の二人の間に割り込んだ。
「静かにしろ、二人とも。……僕たちの目的をもう一度思い出せ」
リョウの低い、だが力強い声に、マルコとシルヴィアがパッと口を閉ざした。
「僕たちは、連邦の支配者になるために戦ってるんじゃない。メガコーポの兵器を奪って威張りたいわけでもない。……ただ、悪党どもの鼻を明かして、誰も手を出せない最強の船を作って、銀河一美味いものを食いながら自由に生きるためだ」
リョウはモニターに映る【アトランティス社・セクター09(海洋プラネット)】をビシッと指差し、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「アトランティス社は、あのルビコン・ゲートをステーションごと消去しようとした敵だ。そして……僕たちの運命の荷物を狙い、特務八局と手をつんで裏でコソコソ動いている」
リョウの瞳に、獲物を狙う野獣のような鋭い光が宿る。
「まずはアトランティス社の面っ面を張り倒して【アマルテア・レベル2】を強奪する。弾薬と資材を無制限にして、最高級のA5和牛とウニを腹いっぱい食ってから……その大火力で連邦の『プロメテウス』を粉砕しに行く!」
「「……!!」」
マルコがパッと顔を輝かせた!
「流石は俺たちのマスター(運び屋)だ! 敵をぶちのめす順番とご飯の順番を完璧に理解してやがるぜ!」
シルヴィアも呆れたように息を吐きつつ、口元を緩めた。
「……もう、相変わらず無茶苦茶な優先順位ね。でも……ただ連邦から逃げ回るより、敵の喉元に噛み付く方がリョウたちらしいわ」
『あははっ! 大賛成ですマスター!』
ノクターンが空中で可愛らしくサリュート(挙手敬礼)を決めた。
『ターゲット確定! アトランティス社が誇る海洋・水耕栽培プラネット【セクター09】! 地下要塞に眠る『アマルテア・レベル2』の強奪シークエンスを開始いたしますぅ〜!』
リョウはスロットルレバーを力強く押し込んだ。
「行くぞ、チーム・ノクターン! アトランティス社の秘密基地に突入して、無限の肉と全自動プラントを根こそぎ横取りしてやるぞーーっ!!」
『スリップドライブ起動! ターゲット・セクター09……発進ですっ!!』
漆黒の古代艦・ノクターンは、青紫色の光の粒子を撒き散らしながら、高次元空間へと跳躍した。
銀河の覇者たるメガコーポを相手取る、最高に強欲で愉快な「聖遺物大強奪作戦」が、今まさに幕を開けたのだった——!
【後書き】
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ノクターンのリアルボディ&肉の無限生成への欲望と、シルヴィアの安全第一なツッコミ!
「弾薬・燃料が無限に生成できるうえに食いもんとノクターンのリアルボ…」、「それは後回しっ!」とシルヴィアが突っ込む、エネルギーとシールドが優先よっ!「いやしかし腹が減ってはいくさが…」とマルコの最高にコミカルなやり取りを経て、最初の強奪ターゲットがアトランティス社の海洋プラネット【セクター09】(アマルテア・レベル2)に決定いたしました!
敵への返礼(仕返し)と美食、そして戦力増強を一石三鳥で叶えるリョウの決断!
次回から、物語はいよいよ『第3章:アマルテア強奪! 海洋要塞プラネットの激闘』へ突入します!
次回、第3章第1話(通算第19話)!
**『海洋惑星セクター09! 潜入と海鮮の予感』**
青い海と過酷な水陸両用要塞が広がる新ステージへ!
アトランティス社が誇る水密兵器を相手に、ノクターンの高次元性能とチームの「現場の知恵」が再び炸裂します!
「マルコとシルヴィアの掛け合いが最高!」「やっぱり肉とウニの無限生成が先で嬉しい!」「第3章の海洋要塞編が楽しみ!」と思ってくださった方は、ぜひブックマーク登録や評価をいただけますと大変励みになります!
次回更新もどうぞ期待してお待ちください!




