第11話:イベント・ホライズンの壁と、究極の二択
【前書き】
「よし! アカシック・レベル2の奪取成功だ! この勢いでブラックホールの奥にあるレベル3へダイブして、全宇宙の宝の地図を完成させるぞー!」
『あ、あのですねぇ……マスター。ちょっと待ってくださいな……!』
「ん? なんだよノクターン、急にしおらしくなって?」
『アカシック・レベル2の解析を進めていて判明したのですがぁ……事象の地平面の超重力から空間を捻じ曲げて無事に戻ってくるには、想像を絶する膨大なエネルギーが必要になることが解ったんです。今の私には、いくら燃料の積載量を拡大しても追いつかないですし、高純度燃料を買い続ける資金にも限界がありますねぇ〜』
「な、なんだってぇーっ!? 燃料代で破産してブラックホールで遭難とか冗談じゃねえぞ!」
『ううっ……まずは物質生成【アマルテア】、もしくは高次元エネルギー【プロメテウス・コア】を手に入れるのが先決ですねぇ〜。私の完璧な実体化(RealBody)がどんどん遠ざかっていきますぅ〜……。今のところ、アマルテア・レベル2をアトランティス社が持っていて、プロメテウス・レベル2を連邦が隠していることはわかりました。アカシック2でもその座標は確認出来ましたよぉ。ですが、やはり各レベル3の正確な場所はアカシック3にしか記載されていないようですねぇ〜』
「なるほどな……足腰(エネルギーか資材)を固めてから、本丸のブラックホールへ挑めってことか」
『はいっ! というわけでマスター、どっちを先に強奪しに行きますか? 連邦のエネルギーか、アトランティスの物質生成か……決断の時です!』
というわけで、究極の二択作戦会議!
第2章第11話、新たな強奪ターゲット決定編、行ってみましょう!
◆
【データアーカイブ要塞・レテ】の追撃を振り切り、死宙域の外縁部へと滑り出したノクターンの艦内。
要塞から強奪した『アカシック・レベル2』の巨大なデータ群が、ブリッジの全天周ホログラムモニターを青白い光で埋め尽くしていた。
「……すっげぇな。これ、全部銀河中の裏市場の取引データと、連邦の秘密要塞のリストかよ!」
マルコが画面をスクロールさせながら、興奮を隠せない様子で叫ぶ。
「見てみろよリョウ! 【セクター14の闇市:極上ウニ・旬の出荷ルート】とか、【幻の自然栽培・本生わさびの極秘温室座標】までバッチリ載ってるぞ!」
「ああ、連邦の暗部様様だな。まさか美食の密輸ルートまでデータベース化してるとは思わなかったぜ」
リョウは満足そうに口元を緩め、操舵桿に手を置いた。
「これで銀河の情報の半分は僕たちの手の中だ。……よし、ノクターン! この勢いでブラックホールの事象の地平面に突入して、真の宝の地図『アカシック・レベル3』を強奪しに行こうぜ!」
「「おう!!」」とマルコとシルヴィアも意気込んだ——その時だった。
『あ、あのですねぇ……マスター。ちょっと待ってくださいな……!』
空中を漂うホログラムのノクターン(ARメイドモード)が、慌てた様子で両手をパタパタと振った。
「ん? どうしたノクターン。急にしおらしくなって?」
『ううっ……アカシック・レベル2のデータを使って、ブラックホール内部からの生還シミュレーションを突貫で計算してみたのですがぁ……大問題が発生いたしましたぁ!』
ノクターンはホログラムの画面に、ブラックホールの重力井戸と自艦のエネルギー収支グラフをポップアップ表示させた。
『事象の地平面を超えて、超重力と時間遅延を私の空間歪曲でねじ伏せて帰ってくるには……今のノクターンの動力出力では、**圧倒的にエネルギーが足りない**ことが判明いたしました!』
「なに……!?」
リョウが眉をひそめる。
「カミラから手に入れた超高純度アストラム燃料を100%充填しててもダメなのか?」
『全然足りませんよぉ〜! 今の私には、いくらタンクを増設して燃料の積載量を拡大しても追いつかないですし、そもそもそんな超高級燃料を買い続ける資金にも限界がありますねぇ〜……』
ノクターンはホログラムの裾をつまんで、くすんと鼻を鳴らす仕草をした。
『今のまま飛び込んだら、行きはよいよい、帰りは重力に捕まって永久に時間の止まった世界でお留守番……つまり即ゲームオーバーですぅ〜! 私の完璧でモッチモチな実体化(RealBody)がどんどん遠ざかっていきますぅ〜……!』
「そ、そんなの冗談じゃねえぞ!」
マルコが頭を抱える。
「燃料代で破産した挙句、ブラックホールの中に閉じ込められるなんて最悪のバッドエンドじゃねえか!」
コンソールを操作していたシルヴィアが、顎に指を当てて冷静に分析した。
「つまり……『アカシック・レベル3』という究極の情報を手に入れる前に、まずノクターンの物理的な性能(レベル2モジュール)を強化して、ブラックホールに耐えうる足腰を作らなきゃいけないってことね?」
『その通りですシルヴィア様! 流石はお知恵が回りますぅ〜!』
ノクターンはパッと顔を輝かせ、モニター上に二つの輝く光点を強調表示した。
『アカシック・レベル2のデータのおかげで、次に向かうべき【2つのレベル2・聖遺物】の精密座標が判明いたしました!』
1. **【アトランティス社所有】『アマルテア・プラント Level 2』(物質生成)**
* **効果**:高次元から分子を直接再構成する万能プラント!燃料・ 弾薬・機体修復資材が完全無制限化! さらに**A5ランク和牛・天然ウニ・新鮮な野菜が分子構造から無限ドバドバ生成可能**に! ノクターンのリアルメイドボディが「触れる・料理が作れる」レベルまで半実体化!
2. **【銀河恒星連邦・特務八局所有】『プロメテウス・コア Level 2』(高次元エネルギー)**
* **効果**:真空エネルギーを相転移抽出する永久機関! 燃料補給が永久に不要化し、主砲や歪曲シールドが常用可能に! **ブラックホールダイブに必要な絶対的な大出力を確保**!
『ただし……』とノクターンは小悪魔的な笑みを浮かべた。
『アマルテアもプロメテウスも、それぞれが秘匿されている場所はレベル2止まりの情報。さらに上の『レベル3』が銀河のどこに眠っているかは、やはり『アカシック・レベル3』を手に入れないと分からないようですねぇ〜』
「なるほどな……」
リョウは腕を組み、モニターに映る二つの目的地を見つめた。
「ブラックホールの奥へ挑むための『足腰』を作る二つの選択肢。連邦のエネルギーか、アトランティスの物質生成か……」
マルコが鼻息荒く身を乗り出す!
「おいリョウ! 決まってるだろ! 『アマルテア』を奪えば、今日から毎日A5和牛のステーキとウニ丼がタダで食い放題なんだぞ!? 肉だ! 肉を奪いに行こうぜ!」
「待ちなさいよマルコ!」
シルヴィアが割って入る。
「『プロメテウス』を先に手に入れれば、ノクターンのエネルギーが無限になって、どんな敵艦隊が来てもバリアで弾き返せるのよ!? 安全性を考えたら連邦のエネルギーが先でしょ!」
「二人とも落ち着けって」
リョウは苦笑しながら二人を制し、不敵な笑みを深めて操舵桿を叩いた。
「ノクターン、連邦の『プロメテウス』と、アトランティスの『アマルテア』……それぞれの防衛体制と、奪いやすさはどうだ?」
『ふふふ、マスター。アトランティス社の『アマルテア・レベル2』は、彼らが所有する海洋・水耕栽培プラネット【セクター09】の地下要塞に秘匿されています。一方、連邦の『プロメテウス・レベル2』は、厳重に警戒された要撃要塞の最深部にありますねぇ。どちらを攻めるにしても、一筋縄ではいきませんよぉ〜?』
ノクターンは可憐にスカートの裾を広げて一礼した。
『さあマスター! 連邦を叩いて無限のパワー(プロメテウス)を手に入れるか? それともアトランティス社を出し抜いて、無限の肉とご馳走を手に入れるか?……マスターの指揮に、このノクターン、どこまでもお供いたしますよぉ〜!』
リョウは二人の仲間と、頼もしい古代AIの顔を順番に見回した。
「よし……決まりだ! 僕たちが次に向かうターゲットは——」
銀河の覇権を狙う外道どもを出し抜き、最高のご馳走と最強の船を手に入れるための新たな強奪作戦が、今まさに始まろうとしていた——!
【後書き】
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ブラックホールダイブへの「エネルギー不足」という決定的な課題と、それを突破するための『アマルテア(物質生成)』vs『プロメテウス(無限エネルギー)』の二項対立!
* アトランティス社を選べば:燃料・弾薬・A5和牛とウニの無限生成&ノクターン半実体化!
* 連邦特務八局を選べば:無限エネルギー&絶対防御バリア!
弾薬・燃料が無限に生成できるうえに食いもんとノクターンのリアルボ…、「それは後回しっ!」とシルヴィアが突っ込む、エネルギーとシールドが優先よっ!「いやしかし腹が減ってはいくさが…」とマルコ。
どちらに向かっても超絶怒涛の展開が約束されています!
次回、第2章第12話(通算第18話)!
**『選択の時! 最初の強奪ターゲット』**
果たしてリョウが下した決断とは!? 食い気の勝利か、圧倒的パワーの奪取か!?
チーム・ノクターンの次なる大強奪作戦の火蓋が切って落とされます!
「A5和牛無限生成の誘惑が凄すぎる!」「プロメテウスの無限バリアも捨てがたい!」「ノクターンの半実体化が待ち遠しい!」と思ってくださった方は、ぜひブックマーク登録や評価をいただけますと大変励みになります!
次回更新もどうぞ期待してお待ちください!




