第8話:時空歪曲突撃(ディストーション・チャージ)と無限の欲望
【前書き】
「なあノクターン……さっきから話を聞いてると、お前、最初から相当なバケモノ性能だったんじゃないのか?」
『ふふん! 当然ですとも! 私の頭脳(AGI)は古代聖遺物の中でも最高スペックのLevel 3! 1000年前の大戦では、銀河を震撼させるレベルの大活躍だったんですよぉ〜!』
「……そんなヤツが、なんでペルセポネの塩湖の底でじっと丸まって眠ってたんだよ?」
『ううっ……どれだけ高次元AIが凄くてもですねぇ、"マスター”という生体認証と起動操作をしてくれる存在がいなければ、ただの重い黒い塊として永遠に眠り続けるしかなかったんですからねぇ! 何千年も孤独で寂しかったんですからっ! そこへたまたま、運命に導かれるように最古層近くまで掘り進んできてくれたのがマスター(リョウ様)たちだったというわけです!』
「なるほどな……だからあの時、グラブワンのドリルが引っかかった瞬間に起動したのか」
『はいっ! ですが、今の私はまだ不完全な「Level 1肉体」! フルスペックの超巨大要塞&モッチモチのリアルメイドボディになるためには、銀河各地に散らばった残りのパーツ(聖遺物)が必要不可欠なのです!』
「要するに、『助けてくれたお礼と、更に私を完璧な身体にして無限のA5和牛とウニをプレゼントします!』ってことね?」
『その通りですシルヴィア様! さあマスター、欲望の赴くままにパーツを横取りしに行きましょうねぇ〜!!』
「……よし、理由(食い気)は揃った。突撃だーーっ!!」
というわけで、ノクターンの衝撃のカミングアウトから一気に最高潮へ!
第2章第8話、大迫力の【時空歪曲突撃】編、行ってみましょう!
### 【第2章:無法のステーションと黒い同盟】
#### 第8話:時空歪曲突撃と無限の欲望
「全艦、主砲エネルギー充填! ターゲット、無法ステーション『ルビコン・ゲート』の区画88! 容疑船『ノクターン』ごと、ステーションの外郭装甲を粉砕せよ!」
ルビコン・ゲートの外縁宙域に展開した、連邦特務八局の漆黒の重巡洋艦『ヘルヘイム』。そのブリッジで、冷酷な冷笑を浮かべた特務指揮官が命を下した。
その周囲を囲むのは、アトランティス社の私兵軍事部門が誇る最新鋭駆逐艦12隻と、連邦の無識別暗黒重巡3隻。
彼らの目的はただ一つ。アトランティス社が隠蔽してきた「環境破壊型テラフォーミング兵器」の極秘データを永久に闇に葬ること。そして、それを奪い去った生意気な「運び屋」どもを、ステーションの住人数万人もろとも宇宙の塵に変えることだった。
数百発の対要塞プラズマミサイルと、高出力の熱核レーザー群が、ルビコン・ゲートのドック『区画88』に向けて一斉に放たれる。
眩い破壊の光束が空間を切り裂き、重厚な金属の防壁を蒸発させようとした——その瞬間!
ズギュオォォォォン——っ!!!
爆発の炎を切り裂いて飛び出してきたのは、光を吸い込むような漆黒の滑らかな流線形をもつ、全長120メートルの古代艦艇——『ノクターン』だった!
敵艦隊が放った無数のレーザーやプラズマ弾が、ノクターンの機体表面に触れた瞬間、まるで透明な水面に落とした絵の具のようにぐにゃりと空間ごと歪み、明後日の方向へと滑り落ちて消えていく。
「な……なにっ!? 直撃コースの熱核光線がすべて逸れただと!?」
「敵艦の周囲に強力な力場……いや、局所的な『空間歪曲の防壁』を確認! ダメージ、皆無です!」
オペレーターの叫びに、特務指揮官は苦虫をかみ潰したような顔で叫んだ。
「ええい、たかが120メートル級の小型回収船一隻に何を取って代かられている! 集中砲火だ! 逃がすな!」
◇
一方、ノクターンのブリッジ内は、激しい衝撃を吸収する慣性制御力場のおかげで、信じられないほど快適で……そして妙に熱気に満ちあふれていた。
「へっ! 見たか連邦のイカレ野郎ども! 追撃のミサイルが全部明後日の方向に飛んでいきやがったぜ!」
マルコが操縦席の横で、固定された特級食材コンテナの無事を確認しながら大笑いする。
「シルヴィア、高次元融合炉の出力はどうだ!?」
リョウは操舵桿を力強く握りしめ、正面の全天周ホログラムモニターに映し出される敵艦隊の包囲陣を見据えた。
「100%……ううん、カミラさんから手に入れた超高純度アストラム燃料のおかげで120%まで上昇中よ! ノクターンの外郭装甲に展開された『空間歪曲フィールド(Level 1)』、以前の倍以上の密度で安定してるわ!」
コンソールを叩くシルヴィアの瞳に、古代技師の血を受け継ぐ天才エンジニアとしての興奮が宿る。
『ふふん! お褒めいただき光栄です、シルヴィア様!』
ARメイドモードのノクターンが、空中をクルリと舞いながら可憐に胸を張った。
『私の本体(核筐体)に刻まれた高次元空間歪曲回路は、単なるバリアではありません。機体の進行方向にある“空間そのもの”を極限まで押し潰し、解放する——つまり、物理的な質量と速度を無限大に加速させる『時空歪曲突撃』が可能なのです!』
「つまり……目の前の敵艦隊ごと、空間を突き破って脱出できるってことか!?」
リョウがニヤリと不敵な笑みを浮かべる。
『その通りです、マスター! ですが……ふふふ、マスター。先ほどお話しした通り、今の私のこの能力は、まだほんの“Level 1”に過ぎないのですよぉ?』
「……おいおい、こんな芸当ができて、まだLevel 1だってのか?」
マルコが目を見張る。
『はいっ! 私自身の頭脳(AGI)はLevel 3の神領域ですが、物理的な肉体はまだまだ欠損だらけ。もしアトランティス社が隠し持っている【物質生成モジュール(アマルテア)】のLevel 2パーツを奪って合体させれば……』
ノクターンはホログラムの指先を口元に当て、ウインクしてみせた。
『今日買い込んだあの「A5ランク銀河和牛」も「氷結ウニ」も、分子構造から無限にドバドバ自動生成できるようになります! 補給の必要すらゼロになるんですよぉ〜!』
「「「な、何だってーーーっ!?!?」」」
リョウ、マルコ、そしてシルヴィアの叫びがブリッジに轟いた!
「和牛とウニが……無限生成だと!?」
マルコの目が文字通りドル箱……いや、特上ステーキの形に変わる。
「補給が不要になれば、どんな危険宙域でもずっと旅を続けられる……! ノクターンの実体化(RealBody)だって一瞬で完成するじゃない!」
シルヴィアが熱っぽく叫ぶ。
「……決まりだな」
リョウは操舵桿をギリッと限界まで押し込んだ。
「連邦の暗部もアトランティスも関係ねえ! 僕たちの邪魔をする奴らは全員吹き飛ばして、銀河中の聖遺物パーツを全部横取りしてやる! そして最後には……銀河一美味いもんが無限に食える理想の船にしてやるぜ!!」
『あははっ! さすが私のマスターです! 欲深くてハングリーなマスター、大好きですよぉ〜!』
ノクターンの声に応えるように、漆黒の艦体が青紫色の高次元光芒を暴風のように噴出し始めた。
「行くぞ野郎ども! 【時空歪曲突撃】——全開ーーーっ!!」
ドドドォォォォン——っ!!!
ノクターンが放たれた矢のように加速する。
その前方に存在する「空間」が極限まで圧縮され、巨大な歪みのレンズとなって連邦・アトランティス連合艦隊の真っ只中へと突入した!
「な……何だあの速度は!? 物理法則を無視している!」
「回避しろ! 衝突する——っ!!」
連邦の重巡洋艦『ヘルヘイム』の乗組員たちが悲鳴を上げる間もなく、ノクターンは空間の歪みそのものを極大の質量兵器として叩きつけた。
ズバアァァァンっ! 轟音とともに、重巡洋艦の分厚い特殊装甲が紙くずのように歪み、側面に巨大な風穴が穿たれる。
ノクターンは一傷追うこともなく、敵艦の巨大な躯体を文字通り「空間ごと粉砕」して突き抜けていった!
「ひ、一瞬で重巡洋艦が沈んだだと……!?」
「ダメです! 追いつけません! 敵艦、超空間跳躍のシークエンスに入ります!」
爆炎と光の塵と化した敵艦隊を背に、ノクターンは漆黒の宇宙へと解き放たれた。
「スリップドライブ起動! ターゲット座標——アトランティス社極秘軍事プラネット『セクター09』!」
シルヴィアが輝く笑顔で叫ぶ。
「狙うは最初のTarget……【物質生成モジュール(アマルテア)】の強奪だーーっ!!」
リョウの叫びとともに、ノクターンは光の尾を引いて高次元空間へと跳躍した。
無法のステーションを脱出し、チーム・ノクターンはついに「銀河の支配者たちから聖遺物を横取りする」という、最高にイカした大強奪の旅へと足を踏み出したのだった——!
【後書き】
14話を最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ルビコン・ゲートからの劇的な大脱出!
そしてノクターンの「AGI Level 3」としての恐るべき本領と、「物質生成モジュール(アマルテア)」を獲得すれば「A5和牛とウニが無限生成できる」という衝撃の事実が明かされました!
これによって、リョウとマルコの食い意地、シルヴィアの技術魂、ノクターンのフルスペック化という目的が完璧に合致! 敵を撃破しながら聖遺物を横取りしていくハック&スラッシュな大冒険が本格スタートします!
次回、第2章第9話(通算第15話)!
**『ターゲットはアトランティス! 海洋要塞プラネットへの潜入』**
最初のターゲットである「アマルテア・プラント」が眠る、過酷で美しい海洋惑星へ!
そこで待ち受ける新たな美食と、アトランティス社が誇る水陸両用兵器との激闘をお楽しみに!
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