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第7話:闇取引の戦利品と、絶対不可侵のコンボイ

【前書き】


「なぁマルコ、まさかここでからめ手が来るとはなぁ。いかにも女スパイって感じじゃないか? 最終的にどこの所属なのかはわからないが、2重3重スパイなんてのもあるって話じゃねえか?」


「リョウ、おまえ、ノクターンのお説教を聞きすぎて、更に変なノンフィクション脳内再生映像の見過ぎじゃねえのか? カミラさんは信用できる人だぞ!」


「クックック、やっぱおまえ引っ掛かりやすいや。まぁ、なんかあってもノクターンが思考認識するから、大丈夫なんだろうけどな」


『ふふん! マスター、高次元思考波スキャナの精度をナメてはいけませんよぉ〜! カミラ様の思考パターンの87%は「自分の利益とドン・カルロへの忠誠」ですが、残りの13%は「リョウ様たちの青臭いハングリーさに少しキュンとしている」です! ハニトラの成功率は0.01%以下ですのでご安心くださいねぇ!』


「……ノクターン、人の乙女心(?)を勝手に数値化して暴露するんじゃないわよ!」


というわけで、ルビコン・ゲートの裏で繰り広げられる暗闘と、腹が減っては戦ができぬ『特級食材』の補給回! 第2章第7話、行ってみましょう!


「——よし、これで契約は成立だ」


応接室の重厚な空気の中、リョウは三百万クレジットがチャージされた金融チップをポケットに収めると、不敵な笑みを浮かべてカミラに向き直った。


カミラは紫煙をゆるやかに燻らせ、満足そうに目を細める。


「交渉成立ね、ハングリーな運び屋さんたち。……と言いたいところだけれど、ひとつ忠告よ。アトランティス社と連邦暗部(特務八局)の連合艦隊は、すでにこのルビコン・ゲートの『外縁部』に暗躍しているわ。彼らはこのステーションをまるごと包囲し、あなたたちがデータをオークションに出品する前に、物理的に消去するつもりよ」


「ステーションごと消去だと……!? ここには数万人の民間人や闇商人がいるんだぞ!?」

マルコが怒りで拳を握りしめた。


「彼らにとっては、極秘の環境破壊型テラフォーミング兵器のデータが漏洩するリスクに比べれば、無法者の数万人なんて誤差の範囲内なのよ。彼らの『最終実験』は、このルビコン星系そのものを実験場にして生態系を書き換えることなんだから」


「……どこまでも腐ってやがるな」


リョウは冷ややかな目で窓の外、ネオンが蠢く巨大ステーションの街並みを見下ろした。

表の法を盾にしながら、裏では星ひとつを犠牲にする実験を平然と行う。連邦の暗部と巨大企業の暗闘。自分たちがただの「安月給のサルベージ屋」だった頃には知る由もなかった、銀河の真の醜悪さだった。


だが——今の自分たちには、それに対抗し得る「最強の聖遺物」と「居場所」がある。


「安心しろよ、カミラさん」

リョウは口元を歪めてニヤリと笑った。


「僕たちの船を沈めるには、連邦の正規艦隊が束になって来ても足りないぜ。……それより、約束の『特級食材の優先調達権』と『ノクターンのエネルギー補給』の手配、頼めるか?」


カミラは一瞬驚いたように目を見開き、やがて楽しそうにクスッと笑った。


「ええ、もちろんよ。ドック『区画88』の裏手に、ドン・カルロ直営の特級闇市があるわ。そこで好きなだけ仕入れて頂戴。代金はすべてドン・カルロのツケにしておくわ」


「よっしゃあ!! 聞いたかリョウ! カミラさんはやっぱり最高の聖女だぜ!!」

「さっきまで女スパイって疑ってたのは誰だったんだよ……」


リョウは呆れ顔で肩をすくめつつ、耳元の超小型通信機をタップした。


「シルヴィア、ノクターン。聞こえるか? 交渉成立だ。今から特級食材と補給物資を持って船に戻る。買い出しのリストを回してくれ」


『了解よ、リョウ! こっちは裏市場のコンソールから、最高品質の超高純度アストラム燃料パックと、ノクターンの「実体合成フェーズ」に必要な分子フレーム構成パーツの買い出しルートを確保したわ!』

シルヴィアの弾んだ声が返ってくる。


『キャーッ! さすがマスター! 頼りになりますぅ〜! これで私の「リアルメイドボディ(可動域180度・耐圧装甲付き)」の完成が格段に近づきましたよぉ! 早く帰ってきてくださいねぇ!』


「耐圧装甲付きのメイド服ってなんだよ……」

リョウは苦笑しながら、マルコとともに応接室を後にした。


◇


数時間後。ドック『区画88』に停泊するノクターンの貨物ハッチ前は、とんでもない熱気に包まれていた。


「おいおいおい! 見ろよリョウ! これ、連邦首都星系の極秘農園から密輸されたっていう『本物のA5ランク・銀河和牛のサーロイン』だぞ! こっちには『氷結惑星の天然ウニ』と『シャキシャキのリアル長ネギ』まである!!」


マルコが目を輝かせ、次々と運び込まれるコンテナの蓋を開けては絶叫していた。


連邦の一般市民が一生かけても拝めないような、遺伝子組み換えや合成タンパク質ではない「本物の自然食」の山。三百万クレジットの報酬とドン・カルロのコネがもたらした、最高級の戦利品だ。


「これだけの食材があれば……回鍋肉も、特上ステーキ丼も、極上ウニのカルパッチョも思いのままだ……! クーリエになって本当によかった……!」

マルコが感動のあまり涙ぐんでいる。


「感動してる暇があったら、早く積載スペースに運べよ。それからシルヴィア、エネルギーパックの充填率はどうだ?」


リョウがタラップを見上げると、作業用つなぎの袖をまくりあげたシルヴィアが、コンソールを操作しながら顔を出した。


「バッチリよ! 超高純度アストラム燃料を100%充填完了! ノクターンの高次元融合炉の出力、以前の1.5倍まで上がっているわ! これなら、敵の巡洋艦どころか『要塞砲』の直撃にだって耐えられるわよ!」


『ふふん! シルヴィア様の完璧なチューニングと、最高級燃料のおかげで、私のシステムパフォーマンスは過去最高です! いつでも「RealBody(実体化)」の合成をスタートできますよぉ〜!』


ノクターン(ARメイドモード)が空中を舞いながら、ノリノリで胸を張る。


「実体化は後だ、バカAI。……来るぞ」


リョウの言葉に、全員の表情が一瞬で引き締まった。


ドックの警報アラームが、けたたましく鳴り響いたのだ。


『警告:ルビコン・ゲート外縁宙域にて、多数の未知の超空間跳躍(スリップアウト)を感知。艦隊規模……重巡洋艦4、高速駆逐艦12。識別信号……【アトランティス社私兵艦隊】および【連邦特務八局・無識別暗黒艦隊】!』


ステーション全体がグラグラと激しく揺れる。

外縁部の防衛シールドが、敵艦隊の斉射を受けて悲鳴を上げているのだ。


「来たか……! カミラの言った通り、ステーションごと僕たちを圧殺する気だな!」

マルコが肉のコンテナを急いで艦内へ放り込み、ハッチをガツンと閉めた。


「連邦の特務八局まで出てくるとはね……! 表向きは『無法ステーションの治安維持』を名目に、裏でデータを抹消して、この星系の環境実験を強行するつもりよ!」

シルヴィアがブリッジの操縦席へ駆け込む。


『マスター! ステーションの出撃ハッチが敵のハッキングによりロックされました! 通常手順では脱出不能です!』


「通常手順なんて使うかよ!」


リョウはメインシートに飛び乗り、操舵桿をガシッと握りしめた。

その目が、獣のように不敵な光を放つ。


「ノクターン! 4Dスペース(高次元格納庫)の出力を全開にしろ! このドックの防壁ごと、時空歪曲シールドで突き破る!」


『畏まりました、マスター! 【時空歪曲突撃(ディストーション・チャージ)】モード起動! メイドの初仕事として、あの不法侵入者どもを盛大にお掃除しちゃいますねぇ!!』


ノクターンの漆黒の艦体が、青紫色の眩い高次元粒子を全身から噴出させ始めた。


全長120メートルの流線型のボディが、物理法則を無視した重力波を発生させ、ドックの分厚い耐熱装甲を紙くずのように歪ませていく。


「マルコ! 補給した肉とウニの固定は完璧か!?」

「おうよ! どんな激しいドッグファイトになろうが、肉一きれ傷つけさせねえぜ!!」


「シルヴィア! エンジンの限界突破、頼むぞ!」

「任せなさい! ヴァルケンも連邦の特務も、まとめて黒こげにしてやるわーっ!!」


「よし……チーム・ノクターン、出撃(テイクオフ)だーーっ!!」


ズバババババンッ——!!


爆音とともに、ノクターンはルビコン・ゲートの装甲を内側から吹き飛ばし、死の宇宙へと一気に飛び出した!


目の前に広がるのは、星海を埋め尽くすアトランティス社と連邦特務八局の黒き大艦隊。

だが、最高級の食材と最高級の燃料、そして絆を深めた三人と一隻の成り上がりクーリエに、恐れるものなど何一つなかった。


銀河の支配者たちを相手どる、ハングリーで壮絶な大脱出劇が、いま幕を開ける——!


【後書き】


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


ドン・カルロとの交渉成立、三百万クレジットと特級食材(A5和牛とウニと長ネギ!)の獲得、そしてノクターンの超強化!

しかし息つく暇もなく、アトランティス社と連邦暗部(特務八局)の連合艦隊による「ステーション丸ごと消滅作戦」が始まってしまいました。


次回、第2章第8話(通算第14話)!

**『高次元突撃! 連合艦隊を打ち破る最高峰の火加減』**


超強化されたノクターンの時空歪曲攻撃と、マルコの「料理の火加減」から編み出された驚愕の砲撃シークエンスが炸裂します!

さらに、ノクターンの「実体合成フェーズ」はいよいよ最終段階へ……!?


「面白かった!」「ノクターンのメイド実体化が楽しみ!」「和牛ステーキ食べたい!」と思ってくださった方は、ぜひブックマーク評価やハイヴ(評価点)をいただけますと、執筆の大きな励みになります!


次回更新もどうぞお楽しみに!

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