第61話 六千人の共通点
三人が数日かけて集めてきた追加情報を、前回と同じ手順で読み上げる。
サリーにインプットし終えた瞬間、間を置かずに音が鳴り出す。
カシャカシャカシャ、ピコピコピコ♪
妙に古臭い、いかにも“計算してます”と主張してくる電子音だ。演出だけは妙に凝っている。
「カイセキ、カンリョウ」と、なぜかカタコト。
「で~もぉ~、なんかフツーすぎて、あんま面白くない感じかも~」
「もったいぶらずに早く言え」
「せっかちさん。
結論いくよん。魔術適性がある人は、二親等の直系血族の中にエルフがいる確率百パーセント!」
「エルフだとっ……」
「ファンタジー世界では定番中の定番。魔力が高くて美人で貧乳。男の欲望をぎゅぎゅっと煮詰めたようなキャラだよね~」
「二親等。祖父か祖母までだな」
「そゆこと~。でもでも~、逆は成立しないの、不思議」
「逆?」
「血族にエルフがいても、魔術適性がない人がいるってわ~け~」
「使えるヤツは祖先にエルフが必ずいるけれど、エルフがいたとしても使えないヤツはいる。そういうことか」
「たぶん、そこが魔術イコールエルフの図式になっていない理由かもね~」
「解析ありがと」
「どいたまっ! また気軽に呼んでねマスター」
俺はわざとらしく咳払いをひとつ入れる。自分で導いた結論じゃなく、借り物の答えだ。気持ちを切り替えないと居心地が悪い。
「分析結果だが、魔術が使える者は、父、母、祖父、祖母。その誰かに必ずエルフがいる。ただし、逆は成立しない。エルフの血を引いていても、魔術適性がない人がいた」
「私、耳長族の血を引いています。けど魔術は使えません」と、ケイシーが呟く。
横でアランが眼鏡の縁に指をかけ、わずかに押し上げる。
「普段から種族について気にしていませんので、盲点と言わざるを得ません。
それにしても、約六千人分の情報を短時間で分析するとは、ユウナギ殿の能力には感服いたしました」
静かな声だが、さっきまでの探るような硬さが消えている。
これは完全に評価が変わった顔だ。俺の手柄じゃないだけに、逆に居心地が悪い。
「耳長族に魔術適性があるなんて感じたことはないがなあ」
「あたしもよ。普段は種族なんて気にしないもの」
ダニエルとジェイミーが同じように首をひねる。
どうやらこの世界では、いわゆる“ファンタジーの定番”は常識ではないらしい。
「例外が含まれるということは、これは確定事項ではなく、まだ仮説の段階。そう認識してよろしいでしょうか」と、アランの声に興奮の色が見える。
「そうだな。謎を解くための鍵を拾った程度だ」
「承知しました。では、さっそく宰相閣下へ報告してまいります」
その言葉を聞いた瞬間、背筋にひやりとした感覚が走り、
「ちょっと待って!!」と、気づけば声が出ていた。
全員の視線が一斉にこっちに向く。
「どうされました?」
「アランが職務に忠実なのは理解している。
……だが、その報告、今の形のまま宰相に上げれば、王国は確実に混乱する」
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