第44話 四色の庭園
城の中を見られるかと期待していた。けれど、ダニエルは正面の道を外れ、迷いなく脇道へ入っていく。ほんの少し肩透かしを食らった気分だ。
そのまま進むと、建物の影を抜けた瞬間、視界が一気に開ける。
庭園だ。
石畳の両脇に広がる芝は短く刈り揃えられていて、色むらも段差も見当たらない。低木は定規でも当てたみたいに高さが揃い、上も横も直線的に切られている。
さらに奥、等間隔に立つ背の高い木は枝の広がり方まで似通っていて、自然物なのにどこか作り物めいて見える。
少し進むと十字路に出る。
中央は円形に抜かれていて、サンクチュアリを置いても、まだ余白があるくらい広い。
四方の花壇はそれぞれ色が分かれていて、赤、黄、白、青と、きっちり区画されている。
「綺麗でしょ」と、ジェイミーが自慢顔だ。
「赤は高貴、黄は繁栄、白は安寧、青は知性。そういう意味があるのよ」
へえ、と素直に思う。
花の種類なんて、ヒマワリとチューリップを見分けられるかどうか怪しい程度の知識しかない。春の七草とか、実用的なのは覚えているが。
「なるほど、よく考えられてますね。見た目だけじゃなくて、意味も持たせてるのは面白い」
そう返しながら、円の中央に目をやると、ダニエルがそこでぴたりと止まる。
「ここで待機だ」
「お茶会でも開くんですか」
「いいわね。空は晴れてるし、花は綺麗、お茶にはもってこいよ」と、ジェイミーが乗ってくる。
「ご用意しましょうか? 遠征のときに買った茶葉が残っています」と、ケイシーも自然に会話に加わってくる。
「お茶請けも欲しいところだな」
「そういえば、甘いお菓子は買いませんでしたね……。干し肉では雰囲気を損ねてしまいます」
「干し肉なら花見酒のほうが好きだわ」と、ジェイミーが舌なめずりする。
「俺はお酒飲まないんですよ」
「あら、残念。潰してあげようと思ってたのに」
物騒なことをさらっと言うな。というか、絶対強いタイプだろうなこの人と、そんなことを考えたところで。
「おまえたち、覚悟しておけよ」
ダニエルが腕を組んだまま真剣な表情をしている。硬さというか、張り詰めたものがそこにある。
――なんだそれ。お茶会の流れじゃなかったのか。
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