第31話 いつ出発するんだ?
俺たちはゾロゾロと移動しながら、武器屋に到着。
その店の外壁は、磨かれた木で、余計な装飾はない。扉の横に小さな鉄製の看板が掛かっていて、槌と剣の刻印が光っている。
静かな見た目のわりに、店の奥からは金属を打つ音が微かに響いてくる。
リンダたちは、重たい木の扉を開き、その向こうへ消える。残されたのは、俺とケイシーだけだ。
「ケイシーも見てきたら」
「私は戦えませんよ」
「え?」
「……え? もしかして、異世界のメイドは戦うんですか?」
「実はそうなんだ。包丁を両手に握って『ご主人様を守るのがメイドの使命です』とか言うんだよ」
――もちろん漫画の話だが。
「私も戦闘訓練したほうがいいですか?」と、少しだけ真剣な顔になる。
「ケイシーには似合わないからやめたほうがいいね」
「こう見えて、私って結構力持ちなんですよ」
そう言って、ぐっと腕を曲げる。力こぶは……見えない。
「野ウサギにも負けそうなんだが」
「酷いですっ」と、頬をぷくっと膨らませる。
――うん、かわいい。
ケイシーとのやり取りを楽しんでいると、武器屋の扉が再び開く。
金属の触れ合う音と一緒に、リンダたちが出てくる。
手にしているのは、剣と矢だけじゃない。鎧や盾も見える。
「えらく買い込んだな」
「よく壊れるからな」
「え?」
――鎧を予備扱いする森って、何が棲んでるんだ?
「さあ、引き出しを開いてくれ。どれだけ入るか、試したいだろ? 入らなけりゃ返品だ」
発想が雑だ。後先を考えていない。
言われるままに引き出しを開けると、躊躇なく装備が放り込まれていく。それでも、するりと収まる。サンクチュアリの底が知れない。
「凄い……全部入ったぞ」と、ダニエルが子供のように顔を歪めた。
「まだ入りそうですね。朝市へ寄って買い足してから出発しましょう」
リンダの発言に、皆が頷いた。
――いや、ちょっと待て。いつになったら出発するんだ?
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