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第3話 慈悲深き神官

 介護してくれる人を自分で探すしかない……。


 そんな考えが頭をよぎると、無意識にリンダに視線が流れる。

 彼女ならば教会関係者だし、慈悲深いはずだ。どうにかして助けてもらえるよう交渉しよう。


 気づけば、男たちは食事を終えている。

 二人は立ち上がると顔を見合わせ、にやり、と口角を歪める。

 その表情を見た瞬間、胸の奥がざわつく。

 嫌な空気だ。


「食欲を満たした後は、やっぱ性欲だよなぁ」

「同感だ。スッキリしないと仕事の効率が落ちるってもんよ」


 笑い声が耳に残る。そのまま二人は、迷いなくリンダへ歩み寄る。


「えっ?」


 戸惑いの声が小さく漏れる。次の瞬間には、もう距離は詰められている。

 男たちは彼女の両脇に腰を下ろし、ためらいなく腕を伸ばす。

 太い指が、細い腕を掴む。


「嫌っ! 何をするんですか」

「だ~か~ら~、ちょっと気持ちよくなるだけだ」


 軽口とは裏腹に手つきは荒い。

 もう一人の手が脚へ伸びる。

 毛深い手が、太ももを掴む。

 逃れようとする動きに合わせて、布が乱れる。


「嫌っ、放して」

「任せとけって、痛いのは最初だけだから、すぐに良くなるから、平気、平気」


 リンダは体をよじり、必死に逃れようとする。

 しかし力の差は明らかだ。押さえ込まれ、動きが制限されていく。


「おい、服は破るなよ」

「わかってるって」

「神官の服にしか欲情しない変態好事家に売るんだ」

「俺は中身のほうがいいけどよ」

「同感だ」


 笑いながら交わされる言葉。その軽さに、背筋が冷える。

 汚い手が、脚をなぞるように這い上がる。

 抵抗のたびに布が乱れ、白い陶磁器のような艶やかな太ももが光に照らされる。


「ほら見ろよ、傷一つねえ」


 値踏みする視線。

 商品みたいに扱う声音。

 神職者の生肌。それはとても背徳的だ。

 その光景に視線が奪われる。


「いやぁ! やめてっ!!!」


 張り裂けるような叫び。

 それで、意識が戻る。


「おい、やめろ!」と、考えるより先に口が動く。


 あまりにも男たちの動きが手慣れていたので思考が遅れた。

 もしこの現場が街中だったのなら、俺は見て見ぬふりをしただろう。だが今は、リンダを助けられるのは俺しかいない。


 手を伸ばす。

 だが、届かない。

 透明な壁に触れるだけだ。硬い感触が指先を押し返す。

 男たちは振り向き、にたりと笑う。


「悔しいよなあ。そこから出られりゃ、三番目に混ぜてやったのによ」

「同感だ。指をくわえて見てるだけなんて、かわいそうによぉ」

「ほら、しっかり見せてやんな」


 男たちはリンダのひざを掴み、抵抗する動きごと押さえつけ、こじ開ける。

 白いドロワーズが視界に入る。


「いやぁ……見ないで……」と、震える声。


 その一言で、胸の奥で何かが弾ける。

 溜めていた感情が一気に噴き上がって、思考の順番なんてどうでもよくなる。


「やめろって言ってるだろ!」


 拳を叩きつける。

 ゴン、と鈍い音。

 まるで水の底を殴っているみたいで、力の行き場がどこにもない。

 男が唾を吐き、眉を寄せる。


「やめろと言われて従うバカがどこにいるんだよ、頭を使えよ“鳥籠の中の無能”」


 ――ああ確かに俺は“鳥籠の中”なのかもしれない。


ここまで読んでいただきありがとうございます。

続きが気になると思っていただけたら、ブクマしていただけると励みになります。

全112話 毎日投稿します。

最後まで楽しんでいただけたら幸いです。

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