7話 素顔を見たい
「それでなんだがアルメリア」
とても美味な食事の数々をいただいて、私の人心地が付いたタイミングを見計らって、ディアブルス様が話しかけてきた。
「私との結婚の件、どうだろうか? 決して無理強いはするつもりはない」
仮面越しにストレートに尋ねられた。
そんなの私からすれば大手を振って受け入れたい。何故なら私にはもう人並み以上の幸せな人生なんてありえるはずがないと思っていたのだから。
ただ……。
「いくつか気になることがあります」
「なんだ? 遠慮なく言って欲しい」
「三つだけ教えてください。何故私なのか、何が目的なのか、そしてどうして私に素顔を見せてくださらないのか。失礼とは思いましたが、あなた様に利用されるだけだとしてもその辺だけは弁えて行動したいと考えました」
「なるほど、もっともだ。ではまず一つ目。キミ以外ありえないからだ。昨晩も言ったが、私の伴侶となる者には高い執務能力が求められる。私はこれまでにキミ以上に優れた者を見たことがないからだ」
私ってそんなに優れているのかしら?
それがまず疑問なのよね。
実家暮らしだった時でも王宮でも、そんなことを褒められた記憶はないし、当たり前のことを当たり前にやっていたつもりだったのだけれど。
「二つ目。主な目的は私の仕事の幅を増やす為だ。私は現在あまりに多くの執務や研究に追われ、満足に領地の視察すらできない。そこで私の仕事をある程度任せられる者が必要だからだ」
なるほど、それで私にその執務を手伝わせたいというわけなのね。
「三つ目だが……これは、その……なんというか、だな……ん、んん」
彼の素顔に関する質問を投げかけてみたら、初めて彼の言葉が淀んだ。
これまでの自信に満ち溢れたディアブルス様とは思えないほどに言葉を選んでいる。
「……」
私はジッと彼の顔を見据えて答えを待った。
首を何度もかしげているディアブルス様は実に困っているように見えた。その姿がなんだか可愛らしかったりもした。
ここで私が口を挟むのは失礼と思い黙っていると。
「旦那様のお顔は少々特徴的でして、お見せするのが恥ずかしいのですよ」
家令のシルベスタさんが勝手に喋り出していた。
「シ、シルベスタ! 余計なことを言うな!」
「クソめんどくさすぎます旦那様。どのみちいつかはバレるのです。さっさとそのアホみたいな仮面をお取りください」
「っく、シルベスタ。お、お前、これでも私はこの屋敷の当主だぞ。私に向かってそのような上からの物言いをして良いとでも……」
「それは失礼致しました。では仮面はお取りにならなくて良いです。私が旦那様のお顔の説明をアルメリア様に細かく細かぁく、ご説明させていただきますね」
「な、ちょ、おい待て、やめ」
「良いですかアルメリア様。よくお聞きください。旦那様のお顔はですね、まず目元が」
「ああああーッ! やめろ! わかった! 取る! 取るから言うなシルベスタ!」
「ふう。だったらさっさとしてください。クソめんどくさいです」
「わ、私はこれでも上司だと言うのにまったく何故……」
ぶつぶつと文句を言いながらも渋々と仮面を外すディアブルス様は、昨日までの印象とは打って変わって、なんだかとても愛着が湧いた。
それに彼の素顔はとても気になる。
「……と、取ったぞ。よく見るがいい」
強気な言葉とは裏腹に彼は若干プルプルと震えながら、目を細めて視線を泳がせた。
「ど、どうだ? これが仮面をつけていた理由だ。わかっただろう? 私の素顔は悪魔的なのだ。恐ろしい顔なのだ」
そう、だったのね。
まさかこれが主な原因で悪魔卿と呼ばれていたの?




