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51話 ディアブルス様のはからい

「……アルメリア、大丈夫か?」


 リードハルト王国の王宮から出た馬車の中でディアブルス様が私の身を案じてくれている。


「はい。ただちょっと色々なことを思い出してしまって」


「無理もない。ここにはキミにとって辛い思い出ばかりであっただろうからな」


「でももう大丈夫です。今はディアブルス様が隣にいてくださいますから」


「私もキミが隣にいてくれるから、今が人生の中でも最も楽しいと感じている」


「ディアブルス様……」


 私も素敵な旦那様と結ばれ、そして今ある幸せを確かに噛み締めている。

 だからこそ、いい加減本当の気持ちを彼に自分の口から伝えなくては。

 と、思い彼の顔を見ると、彼も私の方をジッと見つめていたことに思わず恥ずかしくなり顔を背ける。


「そ、そういえばディアブルス様。あの衛兵の方が仰っていた外患誘致罪のことなのですけれど、あれは何についての罪なのですか?」


「ああ、あれは奴の妻……というべきなのかわからないが、あのロゼッタ・フランソワーズという聖女だ」


「ロゼッタ様が?」


「うむ。ロゼッタ・フランソワーズはどうやらエルデロン公国の出身で、彼女は裏でエルデロン公国の人間をリードハルト内に密入国させていたようなのだ」


「それは初めて聞きました。一体どういうことなのでしょうか?」


「ロゼッタはエルデロンのとある貴族令嬢なのだが、どうにもその一族がリードハルト国内でも幅をきかせようと、リードハルト王国の一部の特権階級の者たちを脅して領土や金銭を要求していたらしい。そのことはダルトン宰相から教えられたのだ」


「……なるほど。ロゼッタ様は何がしたかったのでしょう?」


「アレはかなり強かで腹黒いようだ。シオン陛下を唆したのもどうやら彼女らしい。どうやらフランソワーズ家はだいぶ貧困な貴族だったらしいから、その反動で色々とあったのかもしれんな。まあ、彼女を捕らえればじきに詳しいこともわかるだろうが、あとはこの国のダルトン宰相に全て任せるさ」


 ロゼッタ様とはほとんど関わることはなかったけれど、あれほどの聖魔力の才能を持っていたというのにそのようなことをしてしまったのは非常に残念だと思った。


「そうだ、アルメリア。言い忘れていたが、今日はこのまますぐにアドミラルには帰らない予定だ」


「そう、なのですか?」


「ああ。時間の方は問題ないか?」


「はい。執務の方も多少滞っても問題ない状態にして出てきておりますから」


「さすがはアルメリアだ」


「ところで何処へ行かれるのですか?」


「キミが以前望んでいた場所、このリードハルト王都から少し離れた場所にあるリードハルト修道院だ」


「え? ま、まさか……」


「ああ、そうだ。キミのお母上に会いに行こう。すでに裏は取ってある。キミのお母上は元気に過ごされているそうで、キミに逢えるのを楽しみにしている。私もぜひご挨拶に伺いたかったからな」


「そ、それは本当ですか!? ああ……ッ! ディアブルス様、ありがとうございます、ありがとうございます!」


 私は思わず感極まってしまい、目頭が熱くなってしまった。


 ディアブルス様は本当に私の望みをなんでも叶えてくれる。

 こんな素晴らしいお人が自分の旦那様であるなんていまだに信じられない。


「こんな急な報告になってすまないな。ただ、キミを少し驚かせたくてね。クラヴァットのお礼だと思ってもらえれば、とね」


「はい……はいッ!」


 私はなんて幸せ者なのだろう。

 こんなにも私のことを深く想ってくれるなんて、血の繋がった身内でも中々いないというのに。


 私は改めてこの人に一生を捧げることを誓うのであった。

 

 リードハルト修道院はリードハルト王国の僻地に建てられており、リードハルト王都からそこまでの道のりはアドミラルのフィンガロン邸よりは近いとはいえ、それなりに距離はあり、馬車でもまだ二日ほどはかかる。


 もう日も暮れ始めているので私とディアブルス様は、この先の道の途中にある旅の宿で一晩を過ごすことになっている。


 もちろんその宿も予めディアブルス様が予約を取っておいたというのだから、さすがである。


「……ふふ」


「? どうされましたディアブルス様?」


「いや、キミが嬉しそうなのが、私も嬉しくてな」


 私はなんだか小旅行の気分で少し浮かれてしまっていたようだ。


「ご、ごめんなさい……」


「いや、いいんだ。むしろ楽しんでもらいたくてわざわざ修道院に行くことも、道中の宿のこともこのギリギリまで黙っていたのだからな」


「ふふ、ディアブルス様がサプライズがお好きだなんて以外でした」


「キミが先にサプライズなプレゼントをくれたからな。私には良いプレゼントがこれくらいしか思い浮かばなかった」


「ありがとうございます」


「それとアルメリア。これから向かう宿はな、とある貴族が経営しているとても立派な宿なのだが、そこでしか体験できない素晴らしいショーもあるから、それも楽しみにしていてくれ」


「まあ! それは本当に楽しみです!」


 ディアブルス様が仰ってくれたそのショーの内容は、現地でのお楽しみだと言われ、それも凄く楽しみとなった。


 けれどまさか、その宿で行われるショー以上に、そこで大変な出来事が発生してしまうなんて、この時の私はまだ知る由もなかったのである。



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