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45話 変な気分だわ

「アルメリア様。仮にあなた様がディアブルス様に対して愛がないとしても、ここを出ていけとは誰も言いません。だから本音を私めだけに、お教え願えますかな?」


 シルベスタさんは本当にディアブルス様のことを案じていらっしゃるのね。


 それも当然よね。自分の子のようにディアブルス様を幼い頃から面倒見てきたのだから。


 でもねシルベスタさん。


「安心してください。私は決してディアブルス様と離婚するつもりなどありませんわ」


「ふむ?」


「私は、えっと……その、ディアブルス様のことを……異性としてきちんとお慕い申しあげております」


「おお、おお!」


「だから……シルベスタさん。申し訳ないですけれど、私はディアブルス様の妻でありたいし、あり続けたいと思うのですけれど……ご迷惑、でしょうか?」


「迷惑など滅相もない! アルメリア様がそのように思ってくださっているとは……このシルベスタ、とても嬉しく思いますぞ。できることならディアブルス様ご本人にお聞かせしたいくらいです」


「ま、まだディアブルス様にはお伝えにならないでくださいね? その……は、恥ずかしい、ので……」


「ええ、ええ。それはアルメリア様ご本人から直接お伝えになる方がよろしいでしょう。それで、アルメリア様は一体いつ頃からディアブルス様のことをお好きになられていたのですか?」


「い、いつからと言われると……その、気づいたら、でしょうか」


「なるほどなるほど。それではディアブルス様のどんなところに惹かれましたかな?」


「そ、そうですね。誰にでもお優しくて、賢くて、いつも冷静で……それに彼のコンプレックスであるお顔も私からしたら格好良く見えますし……」


「うんうんうんうん。さすがはアルメリア様です。よくわかっていらっしゃる。ところでもしや最近ディアブルス様を妙に少し避けていたのは……」


「あ……そ、その……なんだか意識してしまって……ディアブルス様の近くにいるとドキドキが止まらなくなってしまい執務に支障をきたしてしまうと思いまして」


「ふむふむ。なるほど。アルメリア様に避けられているとディアブルス様が少し落ち込んでおりましてな」


「そうだったんですね。それは申し訳ないことをしてしまいました……」


「そこで逆にディアブルス様とのお時間をたくさん増やされてはいかがでしょう?」


「逆に、ですか?」


「そうですとも。アルメリア様が落ち着いて執務に集中する為にはそのドキドキの原因を解消しなければなりません。それはつまり二人の関係性をより明確に、より親密にするということが一番なのです」


「そ、そうなのでしょうか……」


 でも確かにディアブルス様はお忙しそうだし、ゆっくり語らい合う時間は朝食以外ではほとんどない。

 定期的に様子見には来てくださるけれど、それも無理して時間を割いてくださっているようだし。


 できればまた二人きりでお出かけとかしたい、な。


「この際もう仕事なんてほったらかしで、二人きりで同じ部屋、同じベッドの上で一晩過ごしてみるのはどうです?」


「え、ええ!?」


「男女の語らいは深夜こそお互い本音が出しやすくなるというものです。そしてもっと積極的に、情熱的になり、やがては深く深く愛し合いッ!」


「いい、いきなり、そ、そんな、そんなことまでは……!」


 なんだか異様なほどに盛り上がり始めてしまったシルベスタさんに若干恐怖心を覚え始めたその時。


「コラァーッ!」


 という聞いたこともないような怒鳴り声と共に私の執務室の扉がバァーンッ! と、盛大に開かれて、


「何を寝ぼけたことを言っているんだシルベスタ!」


 見たこともないほど真っ赤な顔をしたディアブルス様が飛び込んできたのだ。


「お、おやおやディアブルス様。突然どうされました?」


「この大馬鹿者がぁ! 誰がそこまで言えと言った!? いや、そもそも私は何も言ってないだろうがッ!」


「おお、落ち着いてくださいディアブルス様! アルメリア様も驚いておりますぞ!」


 ディアブルス様が私の顔を見てハッとしたような表情をした。

 目が合ってしまった私は思わず視線を逸らした。


「え、え、えっと、ディアブルス、様? あの、まさか、私とシルベスタさんの会話をずっと聞いていらしたのですか?」


「ち、違うッ! 今、偶然たまたま運良くちょうど奇跡的にアルメリアの執務室の前を通ったらシルベスタが馬鹿なことを言っているのが聞こえただけだ! 大丈夫だアルメリア! 私は何も聞いていない!」


「あ、ああー、そ、そうですか」


 ディアブルス様の必死さに思わず私は少し萎縮してしまった。


「おい! シルベスタ! もう行くぞ! すまなかったアルメリア。この大馬鹿者が迷惑をかけた。シルベスタはたまに頭がおかしくなるから気にしなくていいぞ! ではな!」


「あ、はい」


 ディアブルス様はそれだけを言い残すとシルベスタさんを強引に引きずって連れ去ってしまった。


 なんだか嵐のようだった。


 それにしても私ったら、良くないわ。と、さっきシルベスタさんが言っていたことを思い出す。


 ディアブルス様を意識しすぎて彼を避けるような態度を取るのは良くないわ。

 気をつけて、改めないと。


 とはいえやはり彼が私に好意を抱いてくださっているかもしれないと知ってしまった今は、なかなかそれも難しい。


 ……なんだかフワフワしたような、変な気分だわ。




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