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第15話‐①



そして次の日、朝食を部屋で軽く済ませた後、アイルが尋ねてきた。


「えっと………面会謝絶では?」

「わたしは関係者なので大丈夫です」

「……」


というのも、食事を運んできてくれた者によれば葵との面会は基本謝絶だそうだ。怪我に障るからと言うことだが、そんなに大した怪我ではないのになと内心思っていたりする。


昨日は夜中だったし、そんな事情知らなかったので普通に接していたが、メイドさんらしき人に事情を知らされれば、アイルも来れないと思っていた。

なので、昨日の話の続きを話さずに済む!と思っていたのだが…。


「さて、昨日の続きを話しましょうか」


その言葉にベッドに寄りかかって身体を起こしている葵は苦笑いを浮かべた。

アイルはベッドの横に置かれている椅子に腰を下ろしている。ニコニコと微笑む表情の裏にドス黒いものが見えるのは気のせいだろうか。


まぁとりあえず、通されてしまったのならば仕方ない。

朝イチで来るあたり、例え入れなかったとしてもそれは正面から入れないだけで、窓から入ることもアイルならできる。

どの道、逃れられないのなら今更抵抗したところでどうにもならない。

目の前の本人は逃すつもりは毛頭ないようだし。


葵は覚悟を決めるため「ふぅ……」と一度息をはいた後、前を見据えながらゆっくりと話し出した。


「……以上があたしの経験してきた出来事です。そういう訳であたしはここを出て行く以外の道がなくなり、アンデッドを殲滅した後、ここには戻らず一人で生きていこうと決めたのです」

「………………」


一通り話終わり息をついた。


掌に付いていた血について、今までの人と極力関わらないようにしてきた行動について、実は聖女の浅倉椿と同じ異世界人だということなどなど、クレイツおじさんしか知らなかった色々なことを全て打ち明けた。


これで万が一クレイツおじさんに怒られたとしても言い訳はできる。

クレイツおじさんは葵の治癒魔法が自分に使えないということなどをアイルに話をしていたらしいので、先にアイルに言ったのはクレイツおじさんだよね?と牽制ができる。


葵は一通りを話終わり、チラリとアイルを見た。


「……」


すると、険しいようなはたまた悲しいようなよく分からない表情をしていた。


何かを言った方がいいかなと思ったが、現実ではありえないような呪いが原因だと言われ何も言えないのかなと冷静に判断する。

が、そもそもそんな話すぐには信じられるわけないのだ。もしかしたら疑われているのかと何故だか沈んだ心を無かったことにした。


葵とて相手からそんな事を言われたら最初は信じないだろうと無理やり納得させる。


アイルは少しの間何も言わなかったが、何かに気付いたようにゆっくりと口を開いた。


「……あの時で一回、師匠の部屋の前で蹲っている葵さんの掌に付いていた血で二回……そして、洞窟の中で三回吐血をし、髪を縛っていた結い紐が消えた……と……」


アイルはぶつぶつとそう呟いた。


葵にかかる呪いについて考えているようだ。

とりあえず、疑われてはいないのだとほっと安心する。


だが、葵に一つ引っかかる言葉があった。


「……あの、あの時で一回とはどの時ですか?」

「ん?あぁ……師匠と葵さんが湖の傍でアンデッドと対峙していた時のことです。あの時葵さんが吐血をするのを物陰から見ていたのですよ」

「…………見て、いたのですか?」

「えぇ、無理にわたしが出てアンデッドを刺激してはいけませんでしたし……何より、貴方に興味が湧いてきたのでしばらくの間陰から見ていました」

「…そうだったんですね…その時の吐血をする様子を見ていたのなら、あたしがクレイツおじさんの部屋の前で血の付いた掌を見られた時には既にあたしが吐血をするというのを知っていたと言うことですよね?それなのにも関わらず、アイルはそれをクレイツおじさんに言わなかったのですね…………口止めをした意味がなかったですね」

「…………口止めされていましたからね。それに…葵さんが困ることはしたくなかったからですかね」

「…………」


口止めをされていたから。

順番が逆ではないか。

湖で吐血をした時見ていたのなら、その後すぐにクレイツおじさんに言えたはず。

葵が口止めをしたのは掌に付いていた血を見慣れたことに対する口止めだ。

あの時湖での吐血を見られているとは思わず、初めてアイルに見られたとその時は思っていた。だがすでにアイルは掌に付いた血を見る前に吐血のする様子を見ていたとすると、アイルは例え口止めをしなくても言わずにいてくれたと言うことだ。

その理由は葵が困るから。

なんだそれは。

イケメンではないか?


アイルは自分の好奇心には勝てない。

まして今回の出来事はその好奇心の中に入るはずなのに、その好奇心よりも葵を優先してくれたと言うことだ。

どうしよう、こんなのもう好きにならずにはいられないではないか。

誰でもここまで"大切にしているような言葉"を言われてしまっては好きになってしまう。


「っ…………!!」


気付いた時には遅かった。


「ゴホッゴホッゴホッゴホッ……」


その感情に気付いてしまった葵は瞬間に咳き込んでしまう。



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