第13話‐⑤
『……いや、今はまだ話す時ではないな』
「……え……?」
『それにそろそろお主を帰してやらんとお主を心配している奴が暴れそうだ』
「え……?心配?……ていうか、あの!あたしの質問に答えていませんよね?」
また、もふもふのペースに飲み込まれそうになったが何とか言葉を挟み込む。
『だから、今はまだそれを話す時ではないと言ったであろう』
「あたし全然納得出来ていないんですけど……」
『ふむ…面倒くさいなお主は』
「…………貴方様がただのんびり屋過ぎるのではないですか?」
確かに自分でも自身の事を面倒くさがり屋だと思っている。
だが、こんなマイペースでのほほんとしたのんびり屋さんにはちょっと、いやかなり妥協はしている。
本当はもっと他にも聞きたいことがあるのに、絞りに絞って、たった二つの質問だけにしたのだ。
これでも頑張って絞ったとてもとてもとても気になる質問なのに、たった一問しか答えてないってどうよ?
なんか、今までこのもふもふに妥協していたのがバカみたいだ。
『……まぁなんだ、そんな顔をするな……私はただお主を心配しているだけだ。ただでさえ、情報過多なのにこれ以上情報を与えてしまえばお主は混乱するだろう?だから今はとりあえず目の前の事に集中するといい。時期が来たら必ず先程の質問に答えてやろう……まぁ、言わずとも"半分"は戻ったら分かると思うがな』
「…………」
また、突っ込みたい言葉を言われてしまったが今はとにかくまた感情が表に出ていたのかと頬を両手で挟み込む。
こんなに表情が出ていたのかと恥ずかしくなる。
そして、『言わずとも半分は戻ったら分かる』とは一体どういうことなのだろう。
そこまで言っているのにその先を言ってくれないもふもふはきっとあたしの心を弄んでいるに違いない。
葵は気を取り戻して頬から手を離した。
『まぁ……そうだな。あえて言うなら私はお主に借りがあるとでも言えばいいだろうか』
「……借り?」
『いや……恩人とも言えるな。一度までもならまだしも二度も助けられるとは私もまだまだであるな』
「…………」
一人で勝手に納得してうんうん頷くもふもふ。
先程の質問とどんな風に結びつくのか全然分からん。
それに、微睡んでいるもふもふはもうすぐで本当に寝てしまいそうだ。
その証拠に既に目はつぶっており、大きな口だけがうごいている。
『……さぁそろそろ帰らねばならないようだ』
「えっちょ……待ってください!まだ話は終わっていません!」
『……さすがの私もあれを止めるのは骨が折れる』
「さっきから奴とかあれとか何なんですか!?全然話の内容が分からないんですけど!」
葵の叫ぶような言葉にパチリと目を見開いた。
そして……
『……たいむあっぷだ』
「え……」
そのなんとも言えない使い慣れていないと思われる言い方に可愛らしいなんて思った瞬間、葵の地面がぐにゃりと沈み始めた。
「えっちょっ……何!?」
急の出来事に葵は沈み混まないように必死に足を動かす。
だが、ぶよんぶよんするその地面に格闘していたら、今度は眠気が襲ってきた。
(あ、やばい……目が開けられない)
葵は抵抗虚しく、徐々に目が閉じていく。
今ここで意識を手放したら、もう二度と会えないであろうもふもふにずっともやもやをかかえることになる。
そうはなりたくないのだが、その気持ちを裏切るように瞼が閉じて言った。
そして意識がプツンと切れる寸前、もふもふの声が聞こえてきた。
『…………〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。〜〜〜〜〜〜〜〜〜。〜〜〜〜〜、〜〜〜〜〜、〜〜〜〜〜……〜〜〜〜〜〜〜〜〜、〜〜〜〜〜…………〜〜〜〜〜、また近々会おうとしよう』
凄い長めな言葉をもふもふは言っていた気がするが、そのほとんどが聞こえず、何を言っているのか分からなかった。
だが最後の「また近々会おうとしよう」と言う言葉だけは葵に耳にしっかりと聞きこえた。
こんな状況の中、そんな長ったらしいセリフを言うだろうかと心の中で突っ込みつつ「あぁもう!本当にのんびり屋さんなんだから……」と苦笑いと浮かべて今度こそ意識を手放した。




