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第13話‐③



一通り話し終わった葵は一度「ふぅ……」と高鳴る鼓動を落ち着かせながら再度口を開いた。


「あたしは自分にその感情を向けることでしか、逃げる事が出来なかった」


どこかに逃げることでしか、あの時の自分を助ける事が出来なかった。

少しでも心を軽くしたかった。


「でも……どんなに制約を作ろうとも、独りなのだと自覚をしては心に蓋をした感情が出て来てしまって……」


毎回毎回、押しつぶされそうだった。

蓋をしてもすぐに出てくる感情に振り回されて、いっその事死にたいとすら思ったほどだ。

そして、段々と条件などが勝手に変わっていき、吐血をするようになった。


「結局あたしは何度も何度も吐血を繰り返し、その度に減っていく周りのモノを集めては失い……学んでいないんですよね……もうあの時のようにような気持ちはしたくないのに……」


その一連の流れを呪いと呼び始めてからも、何回、何十回モノが消えただろうか。

最初は数えていたけれど、途中からその行動自体が億劫になりやめた。


「ただ……自分でかけた制約なのに、それが勝手に変わっていって勝手にモノが消えるというその出来事自体にも辟易してきてより辛くなって……」


自分でかけた制約を辛いと思うようになり、もう何回やめたいと思っただろうか。


「……あたしは、どうしてこう……いつもいつも自分の思い通りにいかないのでしょうね」


不幸が重なったと言われればそれまでだ。

だが、葵にとってそれは現実で、不幸という言葉では片付けられないほどの出来事だった。


そして、後悔はしていないと言えば嘘になる。

ここに来てからの一日一日がとても楽しくて幸せで、できることならずっといたいと思った。

けれど、二回目の発作をした時、怖くなった。

また、目の前から誰かが消えてしまうかもしれない。祖父のようになんの前触れもなく簡単に呆気なく自分の目の前から居なくなってしまうかもしれない。


そして、三回目の発作を起こしたら、次こそは人が消えてしまうかもしれない。

久しぶりの発作に危機感がまるでなく、二回目にしてやっと気が付くなんて、今までの葵が見たらなんて言うだろうか。

きっと軽く笑って呆れた顔をするのだろう。


(……笑えればいいんだけどね…)


もうあそこに戻ることは出来ないのだと、改めて自覚をしたら抑える事の出来ない感情が葵の心を埋め尽くした。

本当はあそこにいたいのだと、離れる選択肢なんてしたくないのだと感情がぐちゃぐちゃだ。


そう思えば思うほど、ぽたぽたと白い空間の地面に落ちる雫の数が増えていく。

久しぶりにこんなに泣いただろうか。

どんなに酷い怪我をしても、奈落の底に落ちても泣かなかったのに……あぁ、いやこの世界にきて三度目だ、涙を流すのは。

昔に枯れるほど泣いたというのに、まだ涙が残っていたみたいだ。


葵はこれ以上涙がこぼれ落ちないように、真っ白い天井を見上げた。


なんだか少し心が軽くなった気がした。

今まで誰にも言ってこなかったことを口に出して話したからだろうか。

心がスッと軽くなり、嘘のように気持ちが晴れていった感覚があった。

そして、今までの自分のしてきた事に馬鹿だなぁと思いつつ、頑張ったよね自分と励ます言葉を送った。


『……やっと許したようだな』

「……え?」


上を向いていた葵はもふもふに視線を戻した。

もふもふはしっぽをゆったりと振りながら、先程と同じようにお行儀よくお座りしている。


『人の想いというのは時に刃物になるのだ。それは言葉通りになる者もいれば、全く違った角度から己を苦しめる者もいる……お主のそれはそんな違った角度から己を苦しめた言わば呪い。そして、その想いが強くなればなるほど人は無意識にまた新たな呪いをかけてしまう。お主の最初の制約から段々と変わっていったというのは恐らくそれが原因だ。知らぬ間に想いが積み重なって無意識に呪いを重ねがけしていたのだろう』

「……あたしが自分自身に……呪いを?」


確かに自分で呪いとか言っていたけれど、その不思議な出来事が呪いみたいなものだったからそう言っていただけで、まさか本当に呪だなんて言われるとは思っていなかった。


『……人間が呪いをかけるのはさほど珍しいことではない。昔から呪いとは人と切っては切れぬものであり、有名どころと言えば丑の刻参りがあるがお主でも知っているだろう?』

「…丑の刻参り………」


いつから知っているのかは覚えていないが、勉強三昧だった葵ですら聞いたことのある言葉だった。



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