「大結晶の洞窟へ」 その5
私が振り向いたあの後直撃して背中に大きな切り傷が入り撤退を余儀なくされる。心身共にボロボロなユイさんは最後まで私を運んで近くの場所で力尽きてしまった。
「ぐっ・・・ぅぅぅぅ!!」
少し休むとユイさんは疲弊した顔で背中の傷を治療してくれた。予想を遥かに超える力に生命力に勝てる兆しが見えない。本来の力を出せないユイさんは恐らく継続戦闘は無理だ。
「引き返す・・・と言ってもあの大穴は今いる場所から反対方向だしどうしようか」
ユイさんはもう殆ど動けない、ハルカさんも防御が間に合わず受け流しながら軽傷で済んでいる。
「ユカリちゃん、もし良かったら私の武器使う?」
あれこれ悩んでも仕方無い、そう思った矢先にハルカさんはある提案をする。
「ハルカさんの?」
私はハルカさんの武器を見ると最初見た時は私と同じぐらいの長さだった剣がいつの間にか両剣刃になっている。それも特殊で表面の所々に赤い線が光っている。
「対化物討伐用化学兵器:サイフリートよ、君なら・・・お姉さんよりも有効に使えるんじゃない?」
ハルカさんはちょっと強引に押し付けられて取り付く島もなく受け取ってしまった。
「ふぇ?」
持ち手を握ったその瞬間、真っ白だった剣が突如真っ黒になってしまった。
「こ、壊しちゃった??」
ついに剣まで嫌われてしまったのかと私はおどおどしながらハルカさんに事業を聞こうとしたがハルカさんは少し納得した表情をしていた。
「ユカリちゃん、剣は貴女を選んだわ」
壊したと思いヒステリックになりながらもハルカさんはうんうんと頷いた。
「えっ?選んだ?」
「そうよ〜普通ならその剣は真っ白なんだけど選ばれた者にのみ剣が黒くなるように開発された剣なんだよ♪」
選ばれた?つまりそれは・・・?
「わ、私は普通じゃない!?」
図書館で読んだことある、未知のモンスターと渡り合えるように試行錯誤を繰り返したその伝説の剣で国が滅ぼそうとするモンスターを打ち倒して英雄になった人物がいることを!
「そうね、それが使えるなら少なからず凡人じゃないかな〜?」
ハルカさんに言質を取ると私は一気に有頂天となった。
「あんまり声を張らないで、化物に気付かれるわ」
つい喜んでしまいユイさんのお叱りに正気に戻ったが胸はまだ躍っている。
「えへへ、選ばれた者♪これさえあれば何とか倒せないかな〜?」
武器の性能自体は別に何でも良い、普通じゃない武器を持つだけで何か凄い強くなった気がする。
「でも選ばれたからと言って調子に乗らないように、それ自体はモンスター専用武器みたいなものだからね」
そっか、万能という訳じゃないのか・・ヘタげに邁進するとやられちゃうかもしれない、肝に命じておこう。
「分かりました、でも本当にこんなに凄い物貰ってもいいんですか?」
私は託された武器を見つめながらハルカさんの方へ視線をずらすと彼女は少し懐かしそうな表情をしながら頬を上げた。
「うん、本当なら一緒に戦いたかったね・・・ごめんね」
誰かの記憶が一瞬だけ脳内に響いた。
誰か知らない女の子が、ハルカさんと一緒に笑い合っていた。




