私、魔王と結婚します
「今日は丁度満月なんだ早速連れて行きたい所がある」
そう言って連れて来てくれたのは城の裏手にある泉だった
花もなく生き物も近寄らないためか静かな場所
ここだけ切り取られた空間のようで少し寂しい
「泉を越えた向こうは崖になっている 行くなよ」
「はい わかりました」
記憶にあるここはたくさんの思い出ある
初めて気持ちを伝えてくれたり喧嘩したり子供達ときたり…
「月明かりだけで暗いが水面に月が映ると一変するんだ」
私は水辺に行き手をつけた
「ユリ、君が手紙をくれた時想像した
どんな思いで書いたのだろうと やりとりをしていくうちに魔界にきたらどんな表情をしてくれるだろうかと」
「……」
「体験した事を手紙ではなく俺の側で聞けたら幸せだろうなと」
「ギルバート様…」
水面から目を離しギルバートを仰ぎ見ると悲しい顔をしていた
「エギルから君は楽しく過ごしていると聞いてはいたが」
「エギルから…?」
「何を驚く?君もエギルに会っていたのだろう」
「どういう事です?私会った事がなっきゃあ!」
ギルバートに詰め寄ろうとして立ち上がると踏み外してしまった
「危ない!」
ギルバートが咄嗟に掴んでくれて落ちずにすんだ
「ありがと…ござい…ます」
嫌な予感のせいか落ちそうだったからかバクバクと鼓動が早い
「大丈夫だ怯えるな」
「教えて下さい!エギルはエギルはっ」
急に視界が明るくなった
水面に満月が浮かび上がり発光した玉が数え切れないほど広がった
「ユリ落ち着け」
「落ち着けですって⁈馬鹿にしてるんですか!」
「エギルどういうことだ?」
「おやおや魔王様気づいていましたか」
泉を中心に明るいせいか茂みからきたエギルは闇から現れた悪魔のように見えた
「お初にお目にかかります エギル バローデと申します」
「初めて会うだと?」
「ふふっ秘密にしたかったのですがね 定期的に報告してもらってまして私の手柄じゃないんですよ」
「定期的にですって?」
「似てないですかねー?弟と会ってるはずですが」
「弟は王都を出てから行方不明だと言っていたではないか」
「名前はなんですの?誰がエナ達の側にいるのよ!」
「そんな怒らないで下さい カルロス、カルロス バローデです」
確か…副団長が…カルロスだったはず
「ギルバート様っ今から帰りたいすぐ今すぐに!」
「ユリ…そうだなエギル テレポートに向かいながら詳しく話せ」
「話すも何もないですよ
ちゃんと魔物を一匹残らず倒しましたよ
壊れた家などありましたが怪我人はいませんしね」
記憶の中のエギルはいつも優しく微笑み魔界の世界を教えてくれていた
兄様がいたらこんな感じかなぁと思ってたが別人の様に思え恐ろしい
どうしてそんな事を言うんだとばかりに首を傾げている
「それにエターナルに行けませんよ だってテレポートエネルギーを使い果たしました」
「…そうか…」
「いつでも使えるわけではないんですの?」
「例え使えてもどうするんです? 何のために?」
「…それは」
密告者がいると言う?全て筒抜けだと
…そうだ全て筒抜けなんだ
一気に熱が覚める感覚だった
「エギル様貴方は…」
どこまで知ってるの?とは言えなかった
魔族と共存派と反対派があること?
エナの事 それ以前の女が産まれていた事?
「しっかりしろ一応使えるか確認しに行くぞ」
頷きで返すとドレスのスカートに隠している太腿にベルトで巻いたエナから貰った護身用の短剣を撫でる
「ユリ様大丈夫ですよ」
「っ!」
「エギル…ユリが恐がっている離れて歩け」
「クスクスッそれは失礼しました」
それから何も話さず謁見の間に着いた
何もなかった床がギルバートが屈んで撫でると魔法陣が浮かび上がって消えた
「駄目だ繋がってない」
「そんな…どうして使えないんですの?」
「何故か百年程前からテレポートが不安定だったんだ
俺が魔力玉を作り形は残しているんだが」
「安定って今日使えたではありませんか?」
「今日も安定してなくてな魔力玉が全てなくなっている
次の安定して使えるのを待つか俺が魔力玉を作るのが先がだな」
「人間界と魔界は時の流れが違います
魔王様はズレがないよう繋げてますがそれだけで魔力を使い切る程です
姫様とやりとりを初めてからずっとです
止めるよう行って下さい それなら魔力玉など作らずともテレポート使えますよ」
「そ…れは でも」
無理して作れるようでもなさそうな上に止めるように言ったら
向こうではどれ程 時が進んでるかもわからない
「ユリ、今日は無理だか明日から作れようにする心配するな」
「ギルバート様…ありがとうございます」
「困りますねー冗談ですよ睨まないで下さい」
「部屋に戻ろうもう遅い」
「はい…」
私、何も出来ないものね
ギルバートに任せてるしかない
短剣を撫でながらギルバートについて行った




