錆びついた死線(一)
暗転したスクリーンが微かなノイズと共に砂嵐を吐き出し、色彩を失った遊園地の廃墟を映し出す。場内を包み込むのは、風の唸りと、金属が擦れ合う高音のノイズ。サラウンドスピーカーが、観客の背後から迫るような圧迫感を生み出し、耳を圧迫する。
『錆びついた死線』と赤字で書かれたタイトルが浮かび上がり、カメラが空を映し出したところでぼやけて消えていった。
灰色の空の下、瓦礫の山で一人の女が意識を取り戻した。カメラは地面の泥にまみれたピエロの看板を舐めるように映し、そこからゆっくりとパンして、意識を取り戻した女の瞳へと寄る。焦点が定まらない、濁った瞳のアップ。女がゆっくりと瞳を開くと、濁った太陽が視界に焼き付く。身を起こした女の主観映像が、ひび割れたアスファルト、散乱した子供用の玩具を追う。
(……どうしてこうなったのか。何もかもが深い霧の向こう側にあるようで、何一つとして思い出せない)
観客だけに届くエコーのかかったモノローグが場内に響く。女は言葉を発さない。喉の奥から漏れるような微かな吐息だけが、フロントスピーカーから劇場内に響く。
身を起こした女の姿が映し出される。
灰色の機能性に優れたジャケットに、無数のポケットがついた地味なタクティカルパンツ。動きやすさを最優先した、彩りのない服装。
女は首をかしげ、己の手を見つめる。なぜこのような格好をしているのか。私は一体、何者なのか。足元には深くえぐれ、ひび割れたアスファルトが広がっている。鼻腔を突くのは、赤錆の混じった鉄の臭気と、腐敗した死臭。極彩色が虚しく色褪せ、亡霊のように立ち並ぶ廃墟。女が掠れた声で呟く。
「……こ、こ、は?」
その声は劇場内を震わせる。頭上には、濁った卵の黄身のような太陽が、不気味な鈍色を湛えて居座っていた。昼。だがその光は暖かさを一切持ち合わせず、ただこの世の終わりを冷酷に照らし出している。なぜ自分がここにいるのか。記憶は霧のように溶け去っている。女の瞳が激しく揺れ、喉が「ヒュッ」と鳴る。
時より訪れる鋭い頭痛。女は必死に口を塞ぎ、瓦礫の陰へと身を滑り込ませた。カメラは少し離れた闇の中から、盗撮のようなアングルで彼女を固定して映し出す。錆びついた観覧車が、巨大な骸骨の肋骨のように虚空を突き刺し、色褪せた回転木馬が、風に煽られて悲鳴のような金属音を奏でる。




