真実の上映
高津の目の前にある巨大なスクリーンが、突如として激しい砂嵐に飲み込まれた。耳をつんざくようなホワイトノイズが場内に渦巻き、観客席の床が微かに震える。
砂嵐が収まると、そこには見慣れない部屋が映し出されていた。清潔すぎて逆に不気味な、この映画館の裏側だ。
画面の中で、支配人である黄泉野完結が優雅に微笑んでいる。その足元には、恐怖で震え上がる男が一人。
「ご安心ください。あなた様という人間の人生は、ここで名実ともに『完結』いたしますが、その魂の叫びは、当館の銀幕の中で永遠に輝き続けるのです。これ以上の光栄はございませんでしょう?」
(完結……? こいつ、人殺しを芸術か何かと勘違いしているのか。狂っている……だが、なぜか逃げ出せない)
支配人は男の頭頂部にドリルの先端を垂直に突き立てた。
「それでは――採取を始めさせていただきます」
ギィィィィィィィィィン!!
凄まじい轟音が映画館のスピーカーを突き抜ける。脳を直接穿たれる光景を前に、高津は拳を握りしめ、爪が食い込む痛みで正気を保った。
――再び、画面を激しい砂嵐が覆い尽くす。ノイズの向こう側で、誰かの啜り泣く声が混じる。
画面が切り替わると、そこには支配人が廊下を歩く姿があった。その後ろには、訳も分からず連れてこられた複数の迷い人たちの姿がある。
「この奥は、映像制作の心臓部となる聖域。並んでいる機材には、決して触れぬようお気をつけください。これらは魂を削り、形にするための繊細な道具ですから」
支配人が部屋の中央にある古びた木製のドアを指差す。
「では、上映の際にお渡しした『監視遺物』の半券はお持ちですか? その半券を握りしめたまま、こちらのドアノブを回して中へお入りください。そうすれば、あなた方は銀幕の内側へと足を踏み入れることができる」
(半券が……『監視遺物』だと? 俺のポケットに入っているあの紙切れが、あそこへ続く鍵なのか。この映画館自体が、魂をフィルムに変える巨大な装置というわけか)
高津は上着のポケットに手を入れ、震える指先で半券を確認する。これが単なるチケットではないことを、この映像は告げていた。
――またしても、視界を遮る濃密な砂嵐。ノイズがまるで意思を持っているかのように、高津を威圧する。
最後に映し出されたのは、あまりに鮮明なスクリーンの一角だった。
そこに映る「標本」となった年配の男の、声なき絶叫を上げる苦悶の表情。あまりに高画質で、その瞳の奥にある諦念までが手に取るように分かる。客席の後方で、支配人・黄泉野完結が満足げに深く頷く姿が、スクリーンの端に影のように重なる。
(見つけたぞ、黄泉野。あんたの居場所は、スクリーンの向こう側じゃない。この劇場の中だ)
高津は暗闇の中で立ち上がった。画面の中の悲劇を眺める観客のままでは終われない。彼は警察手帳を懐に隠し、静かに支配人の影が消えたはずの、劇場裏の通路へと歩を進めた。




