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怪異館シネマシアター  作者: 弌黑流人


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休館日の日常

 「またのご来場を心よりお待ちいたしております」


 黄泉野完結は挨拶のあと、一礼をしてお客様を見送る。その瞳は、お客様のそれぞれの後ろ姿に注がれ、満足に満ちた色へとかわる。


 (本日も畏怖をお持ち帰りいただけて恐悦至極に存じます)


 心の内で感激と感謝の入り混じった悦びに華を咲かせる。


 明日は休館日。と言っても、支配人である黄泉野と映像制作の助手には仕事がある。


 休館日当日、スタッフルームにて、黄泉野が記憶の保管庫から映像資料を抽出し、パソコンのフォルダへと振り分けていく。


 振り分け方は二通りある。映像に出てくる者たちの関係性や、さらに根強い関係性のある者がいないかを知る『調査』が必要なものと、そうでないもの。そうすることで、作品によっては完全版に至る場合もあるのだ。


つぐみさん、今日はこちらの映像処理をお願いします」


 黄泉野は助手であり、妻の黄泉野鶫に映像制作の全般を全幅の信頼を持って任せている。彼女のカメラワークは観るものに強烈な印象を植え付ける不思議な力があり、その才能を高く評価している。彼女に出会えたことが、黄泉野にとって最高に幸運なことだと言ってもまったく過言ではない。


「ええ、わかったわ。いつも通り私好みの演出で調理してあげる」


「頼んだよ。それと、他に何か必要なものはあるかい?」


「いいえ、これと言ってないわ……、そうね、それじゃあ、今から作業に取り掛かるとして、1時間おきに意識を戻しに来てくれるかしら?」


「お安い御用さ。熱い珈琲付きで引き戻しに行くとも」


 ここで言う意識の引き戻しとは、彼女自身が映像元となった登場人物たちの意識に入り込み、映像として使えるところを切り取り保存する作業を指す。


 だが、他人の、恐怖に固まった意識に入り同じ時間を共有することは、入り込んだ鶫の精神に少なからず負担を強いる。この仕事を始めた頃は、何度か深く同調しすぎてこちら側に戻ってこれなくなったことがあるのだ。


 そこで時間に区切りを設け、その都度こちら側に引き戻すことが夫である黄泉野の重要な仕事となっている。


「さて、こちらのアクションものはどうしたものか悩みますね……」


 遊園地とピエロと殺し屋という仮タイトルを付けてフォルダに振り分けていく。


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