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怪異館シネマシアター  作者: 弌黑流人


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聖地巡礼と閉ざされた闇

 堺瞳には仕事での取材と、プライベートな取材という、ふたつの行動指針がある。

 仕事での取材とは、地元のローカル雑誌に掲載する記事を深掘りするためのもの。そしてもうひとつのプライベートな取材、それこそが、彼女の愛する映画の舞台となった場所を巡る「聖地巡礼」だった。


「聖地巡礼とはよく言ったものよね。一体、誰が言い出したのかしら」


 ハンドルを握る瞳は、満足げに呟いた。

 今向かっている場所は、地元に新しくできたホラージャンル専門の映画館で鑑賞した作品のロケ地だ。スクリーンに映し出された建物や風景に見覚えがあったため、仕事の休みを利用して車を走らせている。目的地まではさほど遠くもなく、1時間ほどの心地よいドライブだった。


 彼女がその映画館で見たのは、『飢餓残滓』と『監視遺物ー完全版ー』の2本。今回の聖地巡礼の最初の目的地は、『飢餓残滓』の作中に登場したあの不気味なトンネルである。


「やっぱり。うん、ここがあの映画の舞台となった場所で間違いないわ」


 車を降りて近づくと、圧倒されるような存在感がそこにはあった。トンネルの入り口に立つと、暗闇の向こうにある出口の光が小さく見える。それほどに長く、傷や汚れで不自然なほど真っ直ぐな道のりだった。

 ただ、現在はもう使用されていないらしく、立ち入り禁止の金網が重々しい鎖に巻かれて設置されている。


「私が昔、肝試しに来たときにはこんな金網はなかったなぁ。もともと心霊スポットとして有名だったけれど……わざわざ封鎖するほどの何かがあったのかしら……とくに目立った記事はなかったんだけど……、安全を考慮するなら当然の処置ね」


 独り言全開の瞳はスマートフォンを取り出すと、レンズを向けた。仕事柄、記録をつけるのは癖になっている。辺りを撮影しながら、現在のトンネルの状況を解説するように声を吹き込み、動画に収めていく。画面の向こうの暗闇は、まるで光を吸い込んでいるかのように深く、妙に冷たい空気が漂っていた。


「さて、中に入るのは難しそうだし、次に行きますか」


 ひとしきり記録を終えると、彼女は心地よい達成感とともに1つ目の巡礼を終えた。次の目的地へと向かうため、再び車の運転席に乗り込む。


 職業柄、撮影したものはその場でチェックを入れるのが癖になっていたので、エンジンをかける前に先ほどの動画を確認していると、画面の奥、撮影された動画の暗闇の片隅に、かすかなノイズが走って消えたのを見た。


「あれ?今のなに!気のせいかしら……」


 奇妙に思い、もう一度巻き戻して見てみたが、二度目にはそのノイズは確認できなかった。やはり光の加減か何かの見間違いだろうと自分を納得させ、彼女は車を発進させる。


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