永遠の教壇
標本室の壁には、既に二つの「木材」が縫い止められていた。それは、あの映画『孤独視』で見た、拓海と沙織の成れの果てだ。彼らの表情は、永遠に固定された驚愕と恐怖に歪み、その皮膚はひび割れた古い木材へと変質している。
そして今、三つ目の「展示品」として、私が並べられる番が来た。
私は壁に押し付けられ、姿勢を固定された。
直後、巨大な、そして目に見えないほど細く鋭いピンが、私の両手、両足、そして心臓の真上に、容赦なく撃ち込まれた。
グシャッ、ボキリ。
肉が裂ける鈍い音と、骨が粉砕される生々しい音が、水を打ったように静かな教室に響き渡る。想像を絶する激痛が全身を駆け抜ける。私は絶叫しようと口を開いたが、そこには既に天井から垂れ落ちる、黒い墨汁のようなインクが流れ込んでいた。喉は焼け、喘鳴すらも「ヒュッ」という微かな音に変わる。
私の皮膚から体温が奪われ、急速に乾燥していく。瑞々しさは失われ、代わりに古い校舎の壁と同じ、冷たく硬い木材の質感が私を侵食していく。私の意識は、もはや一つの生物としてではなく、この校舎の軋み、床の震え、そのものと同化していった。
薄れゆく視界の中、目の前の床に、私の目から零れた最後の一滴の涙が落ちた。それは床に触れた瞬間、真っ黒なインクへと変わり、意思を持つかのように動き、文字を綴った。
『ワタシハ、エイエンニ、ココデ、チリツヅケル』
扉が、まるで「授業終了」を告げるかのような響きを持って、ゆっくりと、重厚に閉じられた。
バン!
完全な暗闇が訪れる。その静寂の中で、かつて私が、そしてあの少年が捨てた真鍮の呼び鈴が、誰かの手によってチリリと一度だけ、清らかに鳴った。
――場面は切り替わる。
そこは、都内のとある映画館。劇場のスクリーンには今、新たな「標本」となった元教諭の、声なき絶叫を上げる苦悶の表情が、残酷なまでの高画質で映し出されている。
客席の後方で、支配人の黄泉野完結が満足げに深く頷いた。
「……さて、次のお客様をご案内しましょうか。当館のコレクションは、まだまだ空きがございますので」
銀幕の中、元教諭は、永遠に終わることのない放課後を過ごし続ける。
劇場の照明が消え、物語は再び、次の犠牲者を待つための深い闇へと戻っていった。




