懺悔の拒絶
「すまなかった……私が、私が悪かったんだ……!」
私は四番目の教室――「標本室」の重い引き戸の前で崩れ落ちた。膝を打ちつけた痛みも感じない。ただ、せきを切ったように溢れ出すのは、後悔の形をした濁った涙だけだった。
顔を上げると、教室の中央に、あの映画と同じ光景が広がっていた。背中に無数の、透明で鋭利な「無視」という名の針を刺された少年の影が、音もなく立っていた。その影には顔がない。ただ、漆黒の虚無がこちらを見つめている。
私は震える手でポケットから呼び鈴を取り出した。これさえ鳴らせば、この悪夢が終わると信じたかった。これこそが、彼を救うための、あるいは私を許してもらうための「道具」だと思い込んでいた。私は泣きながら、狂ったようにその呼び鈴を振り鳴らした。
チリリリリリリリリリリッ!
静寂を切り裂く金属音が、無人の校舎に虚しく反響する。
「許してくれ! 私はもう逃げない! お前の苦しみを、今なら理解できる! 私が証人になる、お前が受けた仕打ちを、世界に、社会に告発するから!」
私は必死に、彼がかつて欲しがったであろう言葉を投げかけた。しかし、返ってきたのは、廊下の全方位から降って湧いたような、か細い子供たちの冷ややかな笑い声だった。
『いまさら?』
『おそいよ』
『せんせい、もうだまってて』
その声は、かつての教え子たちのものだったかもしれない。あるいは、この校舎に囚われた数多の怨念かもしれない。
少年の影が廊下の壁をせり上がり、天上まで届いた頭部に見下された。影は私の空虚な懺悔など、一欠片も求めていなかった。彼が必要としていたのは、遅すぎた救済などではなく、かつて自分を無視し、死よりも深い孤独に突き落とした者が、自分と全く同じ場所で、同じ絶望を味わうこと。ただそれ一点だけだった。
影の足元から、墨汁のような黒い触手が無数に伸び、私の両足首をがっしりと掴んだ。
「待ってくれ! 私は、私は反省しているんだ! 償わせる機会をくれ!」
抗う私の言葉は、空気中に充満したチョークの粉にむせび、肺の奥を焼いた。叫びは音にならず、ただ熱い吐息だけが漏れる。私は抵抗も虚しく、その冷たい闇の中へと、四番目の教室の中へと、ずるずると引きずり込まれていった。




