孤独視(四)
チリリリリリリリリリリリリリッ!
呼び鈴の金属音が、サラウンドの全スピーカーから突き刺さるように鳴り響く。
「……俺は、もう黙ってない!」
誠の咆哮と共に、特別教室の扉が内側から吹き飛んだ。
カメラは教室の中央、無数の「針」が背中に突き刺さった、いじめられっ子の少年の影を捉える。
影から伸びた黒い触手が、逃げ惑う拓海と沙織の足首を、骨が砕ける音と共に掴んだ。
「誠、助けて! 悪かった、沙織はお前にやるから!」
「誠くん助けて! 私、あなたのことが一番好きだったの!」
二人の醜い命乞いが、猛烈なチョークの砂嵐にかき消されていく。
誠は、その場に立ち尽くす。
少年の影が、誠の体と重なり合い、一つに溶け合う。
同時に、劇場には激しい雨音と、階段から転げ落ちる「ゴツ、ベシャ」という肉の衝突音が響いた。
現実の光景が、フラッシュのように画面を裂く。
階段の踊り場で取っ組み合い、足を滑らせ後頭部を打ち付け即死した誠と拓海。二人の死を見て逃げ出したが、破損した非常階段から落下した沙織。
「……ああ、そうか。誰も、生きてなかったんだな」
誠の呟きは、もはや人間の声ではなかった。
スピーカーからは、三人の最期の断末魔が、左右交互に、耳元で囁くように多角的に鳴り響く。
誠はゆっくりと歩き出し、四番目の教室の扉を開けた。
そこは、無数のピンが壁一面に打ち付けられた、標本室だった。
「助けてくれ! 誠! 誠ぉぉ
――!」
「待って、誠くん、行かないで――!」
引きずり込まれた拓海と沙織の四肢に、巨大なピンが「グシャッ」という音を立てて打ち込まれた。




