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怪異館シネマシアター  作者: 弌黑流人


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29/70

孤独視(四)

 チリリリリリリリリリリリリリッ!


 呼び鈴の金属音が、サラウンドの全スピーカーから突き刺さるように鳴り響く。


 「……俺は、もう黙ってない!」


 誠の咆哮と共に、特別教室の扉が内側から吹き飛んだ。

 カメラは教室の中央、無数の「針」が背中に突き刺さった、いじめられっ子の少年の影を捉える。

 影から伸びた黒い触手が、逃げ惑う拓海と沙織の足首を、骨が砕ける音と共に掴んだ。


 「誠、助けて! 悪かった、沙織はお前にやるから!」


 「誠くん助けて! 私、あなたのことが一番好きだったの!」


 二人の醜い命乞いが、猛烈なチョークの砂嵐にかき消されていく。


 誠は、その場に立ち尽くす。

 少年の影が、誠の体と重なり合い、一つに溶け合う。

 同時に、劇場には激しい雨音と、階段から転げ落ちる「ゴツ、ベシャ」という肉の衝突音が響いた。


 現実の光景が、フラッシュのように画面を裂く。

 階段の踊り場で取っ組み合い、足を滑らせ後頭部を打ち付け即死した誠と拓海。二人の死を見て逃げ出したが、破損した非常階段から落下した沙織。


 「……ああ、そうか。誰も、生きてなかったんだな」


 誠の呟きは、もはや人間の声ではなかった。

 スピーカーからは、三人の最期の断末魔が、左右交互に、耳元で囁くように多角的に鳴り響く。

 誠はゆっくりと歩き出し、四番目の教室の扉を開けた。

 そこは、無数のピンが壁一面に打ち付けられた、標本室だった。


 「助けてくれ! 誠! 誠ぉぉ

――!」


 「待って、誠くん、行かないで――!」

 

 引きずり込まれた拓海と沙織の四肢に、巨大なピンが「グシャッ」という音を立てて打ち込まれた。


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