紅に燃えた告白
一方その頃、奇数列に並ぶ朝陽は普段の落ち着きを崩していた。D組の列に並ぶ幼馴染、佳子の様子が気になってしょうがない。
先程の拒絶するような冷たさはどこへやら、視界に映る佳子はクラスメイトと楽しげに会話を弾ませている。軽口を叩き合い、指先で突き合うその姿はかつて朝陽の隣で笑っていた、在りし日の佳子と重なる。
同じ幼稚園から別々の小学校に入学してからも2人は顔を合わせることが多かった。時間さえあれば一緒に放課後を満喫し、同じ学習塾でも勉学に励んだ。日々共に笑い合う仲でそれはこれからも変わらないと心から信じていた。
しかし、一体どこで何を間違えたのだろうか。ボタンを掛け違えたかのように、ある日を境に佳子との間に距離が生まれてしまった。佳子は人が変わったように朝陽への態度を辛辣なものへと変えていった。
どこか棘のある、冷めた様子の佳子。当然朝陽は困惑の気持ちで一杯だったら。なんとか以前のような付き合いを取り戻そうと試みる朝陽だったが結局それは報われず、中学1年生の夏休みで佳子が塾を辞めてしまったため、疎遠となっていた。佳子の家の住所は知っていたものの、もう気軽に行くことは無くなっていた。
何が原因なのかは分からない。唐突な友人の変化の背景を知ることは叶わなかった。
しかし、佳子との関係に変化が訪れた日の前日、朝陽はある男の子からとの遭遇を果たしていた。
夕陽が空を赤く染めた日の放課後、公園で朝陽は野良猫と戯れていた。近所の人達にも愛される、白い柔毛の子猫だ。人懐っこい性格なのか、人間慣れしたような様子で朝陽にもよく懐いていた。心を交わす朝陽にとっては大切な友人とも言える1匹だった。
そんな朝陽が猫と遊んでいた最中、1人の男の子が自転車に乗って公園に飛んできた。その公園は放課後の子供達にとっての遊び場として親しまれていて、涼しげな風が木々の香りを優しく運んでいた。
今でも朝陽は覚えている。男の子は友人との遊ぶ予定だったのだろうか、自転車から降りて周りをキョロキョロと見回していた。恐らく朝陽とは同い年、若しくは近い年齢であったのは間違いない。彼は周囲に視線を送る中で朝陽の姿を捉えていた。
子猫の頭を優しく撫でて、指先で顎を弄ぶ朝陽の姿に魅入ったかのようにその場で立ち止まる少年は朝陽の元へ突然駆け寄ってきた。駆けてくる少年に子猫は脚を動かし、彼の足元に歩み寄る。少年が朝陽の前で立ち止まるとその足に身体を擦り付け、喉を鳴らす。驚いたように目を見開いた男の子は屈んで猫の背中をそっと撫でる。目を細める子猫は心地良さそうに身を捩る。
男の子は猫を撫で回した後、立ち上がって朝陽をじっと見つめる。猫が彼の周りに歩き回る光景を前にしながら朝陽も釣られるように立ち上がる。お互い視線を交わし続ける中で目の前の少年は僅かに頬を紅色させていた。忙しなくポケットの中に手を突っ込んでは引っ込ませてまた指を忍び込ませる。男の子の1人悩む光景が朝陽の前で繰り広げられる。そして少年は何か決意したかのようにギュッと体を強張らせ、朝陽に強い眼差しを送る。空の赤に負けないほど頬を染める少年。
そんな目の前の男の子から次の瞬間、予想だにしない言葉が飛んできた。
「好きです。付き合ってください」
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