野暮用はいらない
リレーの出場者達の順番決めが各クラスで行われた後、遂に全体練習の時間がやって来た。グラウンドに引かれた全周200mのトラックの中に生徒達が座り込み、自身の出番を待つ。出走者の中で奇数走者と偶数走者に分かれ、対角線上に集まって順番を確認する。
それぞれのクラスから15名の走者が選出され、14人目までは半周の100mを、アンカーは1周を走ってゴールへ向かう。
未来と美鈴は偶数走者の列に、朝陽と和樹は奇数奏者の列に並ぶ。
膝をついて自クラスの列に続く未来に美鈴が声をかける。
「ねね、未来」
美鈴からの呼び掛けに未来は振り向く。
「ん、どうかしたか?」
美鈴は偶数列の方へ視線を送る。朝陽と和樹、そしてリレーに出場するらしい佳子の姿が彼女の瞳に映る。
「中学の時にも聞いたと思うけど、未来と佳子って同じ小学校だったんだよね?」
「まあ、そうだけど」
未来はどこか居心地が悪そうに視線を逸らす。
「だよね。私って佳子と一緒に遊ぶことが今でも結構あるんだけどさ、今思えば2人ってなんとなく距離置いてる感じだったよね?」
「……だからなんだ」
ぶっきらぼうに答える未来を美鈴がじっと見つめる。未来がその視線に気付いて見つめ返してみるが、美鈴からの視線に耐え切れずプイッと再び視線を逸らす。
「……なんなんだよ、さっきから」
未来の文句に美鈴は笑顔を浮かべて肩を叩く。
「ううん、何でもないよ!」
明るい笑みを浮かべる美鈴に未来は呆れ顔を見せる。よく分かっていない様子だが、美鈴の挙動にふと肩の力が抜けたようだ。
「よく分かんないやつ」
微笑を漏らした後に空を眺め始める未来を横目に、美鈴は和樹と朝日が並ぶ奇数列へ目を向けた。
(多分、言いにくいことなんだよね)
美鈴の脳裏には彼女と和樹が初めて未来と会話を交わした時の光景が甦る。
あの時、未来は今よりも無愛想で冷めた目をしていた。それとなく距離を取ろうとしたり、放課後もいち早く家に帰ろうとしたり。
あの時の未来は人付き合いというものを忌諱していたようにさえ見える。美鈴と和樹2人とも打ち解けるようになるのは困難に思われた。
しかし、時間をかけて未来が心を開くようになってからは彼の素顔が明らかになっていった。
超がつくほど勉強が苦手、運動音痴ということは同じクラスになって以降知っていたが、意外にも寂しがり、見舞いにくるような律儀な一面などなどが現れるように。
そして美鈴達にとってはある事で恩人とまでなっていた。しかし本人にその話をすると、ものすごく嫌そうな顔を浮かべる。
和樹、美鈴にとってはもう欠かせない1人となっていた。そんな彼が話しづらそうにしている事を詮索するのは野暮だ。美鈴は1人そう納得し、遠くの朝陽の姿を見つめる。
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