再会と乱れる交流
5月の陽光が日照る最中、蛇口からステンレス素材の筒へ水を注いだ4人は木陰で休息に浸っていた。グラウンドの隅に生える大木達は木の葉を揺らし、校舎前の花壇には日の光を浴びる向日葵が背の丈を伸ばしているかのようだ。
日陰で涼む4人の体から流れる汗もピークを終えたからか勢いが鎮まっていた。
「生き返るわー」
未来は水筒に口をつけて大きく伸びをする。
「全体練習はもうすぐかねぇ」
ハンディファンを手に声を振るわせる美鈴は和樹の肩に頭を乗せる。和樹はベタつく肌を気にしてそっと手で押し返そうとするが押しつけられる肩を前に諦めがつき、そっとしておくことに。
「芹沢さん、もう大丈夫ですか?」
先程タオルを渡した朝陽は未来の顔を覗き込む。未来は疲労が抜けたように、リラックスした表情で顔を向ける。
「ああ、朝倉のおかげだ。ありがとな」
「それ、あそこのお2人が聞かせたら嫉妬されますよ。現に高山さん達も芹沢さんを支えてましたし」
朝陽は眉を下げて苦笑する。未来は「どうだか」と言いたげに肩をすくめて再び水筒に口をつける。喉仏が浮き出る曲線が波打ち、喉に潤いを加える。
プハァと水筒を下ろすと同時に、体育教員の声がグラウンドに響く。
「よーし、これから全体練習だ! クラスごとに集まって、順番とか色々決めろ!」
和樹と美鈴は一緒に腰を上げて、未来と朝陽に駆け寄る。
「俺達も行くか!」
和樹の声に2人は頷き、4人は歩みを進める。
美鈴と和樹にちょっかいをかけられ、未来は思わず後ろ向きに歩く。それが不注意に繋がってしまい、横から走ってきた生徒とぶつかってしまう。
「きゃっ!」
「いて……」
未来はよろめきながら何とか倒れ込むことを防ぐ。一方、彼とぶつかってしまった女子生徒側も謝りたげに頭を下げようとしつつ、後ろにあわや倒れるところだった。
「ごめんなさい」と言いかけた未来の言葉は中途半端に途切れる。朝陽と同じロングヘア、真っ黒な髪を靡かせてジャージの砂をはたき落とすその生徒は……
「佳子……」
未来がそう呼ぶ女子生徒、日々乃佳子は驚きと、嬉しくなさそうな目つきで未来を見据える。
「……未来じゃん」
2人の間に微妙な空気が流れる。周りの騒ぎが余計に賑やかに聞こえる。
「佳子、だよね……?」
未来の横に立つ朝陽の声はどこか震えているように聞こえた。佳子の視線は朝陽へとスライドし、未来と朝陽の間を行き来する。
「朝陽……なんで2人が一緒にいるの?」
佳子の疑問を耳にしつつ、未来と朝陽は顔を見合わせる。
「なんでっていうか……それよりも芹沢さん、佳子とは知り合いなんですか?」
朝陽の質問に答えるように、未来も似た言葉を朝陽へ返す。
「まあ、小学校の頃から……てかお前らも知り合いだったのか」
静かに驚く未来に朝陽は頷く。
「はい。私達、幼稚園の頃からの幼馴染……」
「ごめん、もう行っていい? 私のクラスあっちだから」
朝陽の言葉を遮った佳子は歩む足を急がせ、2人の間を通り抜ける。朝陽は慌てて彼女を止めようとする。
「待って……!」
「待てない」
朝陽を確かに拒絶するように冷たい態度をとる彼女はそのままD組の元へ急ぐ。
後ろで見守っていた美鈴達は心配そうに2人に駆け寄る。
「大丈夫? 私、佳子とは中学の頃から一緒だし、結構仲良いんだけど……あんな佳子、初めて見た」
和樹の手を握ってそう言葉を零す美鈴。
未来といえば、取り乱しているとはいえないもののどこか落ち着きがない。しかし朝陽はもっと深刻なように見える。拳をギュッと握り締め、瞳を揺らしながら佳子の背中を見つめる。どこかやり切れなささえ感じる表情を浮かべる朝陽を前に、和樹と美鈴は顔を見合わせる。
共通の知人が意図せず呼んだ不協和音。太陽はそれを見ぬフリするように、暑い日差しを下界へ注いでいる。
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