逆転とまさかの罰ゲーム
美鈴からの唐突な罰ゲーム宣伝に固まった未来。
「え、腹筋5回?」
「嫌すぎて0個消えてるって」
和樹が苦笑を浮かべる傍ら、美鈴がエッヘンと胸を張る。
「だって勝負してるんだよ? 罰ゲームが無いなんて事ある?」
「いや、腹筋は嫌なんだけど。朝倉もそうだよな?」
隣の朝陽へ助けを求めた未来だったが……
「私は別に。50回程度なら大丈夫です」
「そこ空気読んでくれよ」
悲しいかな、パートナーは勉強も運動もそつなくこなす優等生様。運動能力壊滅型人間の未来とは価値観が合わないようだ。
「まあ勝負は勝負ですから、勝ちは狙いましょう」
「……お願いします」
そして罰ゲームの存在が、未来の操作に多少なりとも影響を与え始めた。
「朝倉、そこ俺が撃ち落とすわ」
「あ、ありがとうございます」
まだ操作に粗さは見られるものの、未来が朝陽とのチームプレイに適応し始めた。
朝陽が敵の弾幕に晒されているところをアイテムを使って大量に敵を倒したり、自分から相手の気を引いてピンチになりながらも朝陽に攻撃のチャンスを与えたりなど。
徐々に2人はスコアを稼げるようになっている。
そして遂にボスエリアまで辿り着いた。緊迫する警告音と共に、禍々しい巨体が現れた。先程和樹と美鈴を敗北へ追いやったボスのお出ましだ。
バスの能力はやはり暴力的で、チーム正反対は苦戦を強いられることに。
「芹沢さん、そこはまずいのでは……」
「そうだよな……」
敵との能力の差に敗北の2文字か2人の目の前に迫っている。2人の操作するキャラはそれぞれ体力ゲージが残り少しといったところ。
「腹筋は嫌だ、腹筋は嫌だ、腹筋は嫌だ……」
罰ゲームを目前に未来の口からは呪詛のように拒絶の言葉が出始める。
「どんだけ嫌なんですか」
彼より幾分か落ち着き払っている朝陽は、未来の変わりように呆れ顔を見せる。
「久しぶりだよな、運動系の罰ゲーム」
「うん、今日ぐらいはいいかなって!」
「お前一応病人だけどな」
無邪気な笑顔を浮かべる美鈴に、表情が死んだ未来が小言を挟む。
中学の頃からの付き合いである3人。3人で遊ぶようにようになった当初、今回のように体力系統の罰ゲームを賭けた日があった。運悪く未来が勝負で最下位になってしまい、悲惨な光景を生んだことが3人の脳裏に蘇る。
朝陽の尽力でなんとかエリアボスに喰らいたくものの、2人揃って倒れるのも時間の問題だ。
ピンチを謳うようなBGMが2人の焦燥感をさらに煽る。
2人が敵の攻撃から逃げ惑う中、画面上にとあるアイテムが表示される。
「あ、これって……」
敵の弾幕を避けつつ、そのアイテムを回収した。
「あ、良いなそれー!」
美鈴がベットの上で足をジタバタさせる。
「芹沢さん、これを使えば……!」
「なにそれ」
よく分かってない未来をよそに早速朝陽は拾ったばかりのアイテムを使用する。すると画面から眩い光が放たれ、ボスの体力ゲージがあっという間に減少した。
「うぇ、なんじゃそれ……よく分からんけど倒せそう」
「今のやつはこのゲームで1番強いって言われてるアイテムだぞ」
和樹が未来に、先程のアイテムについて簡潔に教える。
「あー、最強アイテム的なやつってことか」
未来はそう呟きながら攻撃の手を止めない。朝陽もボタンをとにかく押す。
そして遂にボスを討伐した2人。画面ではボスが空高く飛ばされて、星と化すコミカルな映像が流れている。
前哨戦とボスとの戦いでドッと疲れた2人は、大きなため息をつく。2人とも手のひらに汗が滲んでいる。
しかし次に訪れるのはボスという大きな存在を倒した、2人の確かな達成感だ。
「やったんだな、俺達」
「はい、芹沢さんへのサポートとあのアイテムを使った私が頑張ったと言っても過言ではない気がしますが」
「……可愛くないやつだな」
最後まで軽口を叩き合う2人。だが彼らはチーム幼馴染へと向き合って、僅かながら勝利を確信したように口角を上げる。
「てことで、今回は俺達の勝ちだな。ま、せいぜい腹筋を楽し……」
「ねね未来! 今回ってスコアを競い合うんだよ?」
「そうだぞ、自分達のスコア見てみろよ?」
「へ?」
ボスを無事に倒した自分達のスコア。ボスを倒したことでその数値は確かに高得点とも言えるものだ。だが和樹達のスコアと比べてみたらどうだろう。チーム幼馴染の数値より下回っているではないか。
「え、は、え、ちょ、なんで?」
朝陽も驚きからか無言で目を見開いている。
「いやだってさ、2人とも最初のエリアで全然稼いでなかったじゃん」
「「……あ」」
そう、ボスこそ倒したもののそれ以前のエリアでは2人ともしょうもないことでフレンドリーファイアお構いなしの小競り合いをしていたのだ。
「……朝倉」
「……芹沢さん」
2人とも黙りこくってしまった。
「はーい! ということで2人とも腹筋50回の刑、お願いしまーす!」
その後、涼しげな顔で上体を起こす朝陽の隣で、床に倒れ込んでヒィヒィ悲鳴をあげる未来の姿があったとかなかったとか。
どこか締まらない展開をよそに、遥か空では雲が青いキャンパスに影を落とし始めていた。
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