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【朗報】ボッキマン、外注業者になる その⑤

男は俺に怒鳴り散らすと、大股でこちらに向かって詰め寄って来た。


なぜ包帯を巻いているのかはよくわからなかったが、

こいつは以前、イグナイトと一緒に俺を襲撃した大柄な男で間違いない。


「あ?お前こそ何しに来たんだよ。下っ端ぽいし、別に呼ばれてないだろ?

 叱られる前に帰った方がいいんじゃないか?」


こいつには一言くらい嫌味でも言わないと気が済まない。


「何だと……この野郎……!!」

「ああ、忘れるところだった。あとパーカー代弁償しろよ。

 今や販売中止で貴重なヤツだからなあれは」


俺が思い出したように言うと、男は拳を握りしめる。すると、俺に能力を叩き込んだ時のように大柄な男の腕から真っ赤な煙が立ち上る。


「やめなさい。首領ボスの前だよ」


ナンバーツーは俺たちのやりとりに割って入る。

大柄な男は俺から目を離さなかったが、手を出すことはしなかった。首領は椅子に座ったまま腕を組んでいるが、特に止めるつもりはないようだ。


「わかってるよ。俺としてはこいつとは和解したいんだけどな」


俺は両手を挙げて敵意がないことを示しながら、ナンバーツーに話しかける。


「……それなら私は構わないが。

 その申し出を受け入れるかどうかは、彼が決めることだよ」


ナンバーツーは横目で俺を見つめると、大柄な男に視線を移す。つられて大柄な男を見ると、奴は鋭い視線でこちらを見ていた。俺は思わず顔をしかめる。


(うーん、やっぱり無理かなあ……)


心の中で呟きながら手を差し出す。

すると包帯の隙間から覗く目がさらに大きく見開かれた。


「よし、おっさん。

 ほら、お前も手を出せ」


しかし奴は俺の手を睨みつけたまま動かなかった。


「おい、どうしたんだよ。出来ないのか?」


俺は催促するように手を動かす。

いつの間にか糾業会の他の構成員たちも集まってきたようで、大柄の男の後ろで怪訝な表情を浮かべながら成り行きをうかがっていた。


「……誰がてめぇなんかと握手を……!!」

「ビビってんのか?」


俺が挑発するようにそう言うと、大柄な男は大きく息を吸い込んで大声で叫んだ。


「殺すぞ!!!!」


大柄な男はそう叫ぶと包帯の上からでもわかるほど血管を浮かべ、俺が差し出した手を両手で握り締めた。


その力は凄まじく、握られた俺の骨が一瞬できしみを上げる。

普通の人間なら皮膚は裂け、血管は弾け、筋肉は断裂して、痛みを感じる間もなく骨が砕けるだろう。普通の人間なら。


俺は奴の力に眉一つ動かすことなく耐えてみせた。


お返しとばかり握られた手に力を込めると大柄な男の体がビクっと震える。みるみる内に額に脂汗が浮き出し、頭に巻かれた包帯がぐっしょりと濡れる。


「……っ……!」


大柄な男は声を出すまいと必死で歯を食いしばっていた。

根性だけはあるらしい。


力を込めている内にどこかの傷口が開いたのか包帯が赤く染まる。ナンバーツーは顎に手を当て、少し口を開けながら、成り行きを見守っている。


「よろしくな、仲良くしようぜ」


俺はそう言うと力を抜いて手を離してやる。


すると大柄な男も俺の手を離し、崩れ落ちそうになったが、構成員たちに後ろから支えられすぐに体勢を立て直した。しかし大柄な男は無言で連中の手を振り払うと、背を向けて部屋から出て行こうとする。


「おい、どこ行くんだよ?

 だからパーカー代弁償しろって」

「ハァ、ハァ、クソが……!」


大柄な男は振り返らずに呟くと、肩で息をしながら扉の向こうへと消えていった。何しに来たんだあいつ。


「あれは罰だろ」


俺がそう言うと、首領の面頬の下の顔がニヤリと笑ったような気がした。


「そうだな……罰だな」


「君がここに来たことを誰かから聞いて、

 首領のことが心配になったんだろう……大目に見てやって欲しい」


ナンバーツーはそう言いながら俺に頭を下げた。


俺は別にそんなことは気にしていないのだが、

彼なりにフォローしてくれてるつもりなのかもしれない。


俺は小さくため息をつくと、先程まで座っていた椅子に座り直す。


「あいつって糾業会で一番強いの?」


俺が尋ねると、ナンバーツーは首を横に振る。


「……まあ、上の下くらいだよ」


じゃあなんであんなに威張っているのかと尋ねようとしたが、それは俺の口から出ることはなかった。


「で、何で俺をここに残したんだ?仲間になるって話なら俺は……」

「君の力のことを話をちょっとね」


ナンバーツーは話を遮るように言うと、俺の目をじっと見つめてきた。


「君は能力者の能力がどこから来るか知ってるか?

 生まれながらにして備わっているものじゃない。それはある日突然発現し、

 そして常態化する」

「あぁ、うん……」


俺は適当に返事をする。

自分の力にそこまで興味のない俺には正直どうでもいい話だった。


「ここに来るときに青白い光の流れを見ただろう。

 あの光がこの街の能力者に何らかの形で関わっていることまでは

 突き止めたんだが、そこで止まってる」

「なるほど」


俺は適当な相槌を打つ。

しかし、俺の内心は顔に出ていたのか、ナンバーツーは苦笑いしながら続ける。


「しかし、光の流れを調査すれば、能力者がどの地域に現れるかまでは

 ある程度把握できるようにはなったのだ」

「それはすごいな」


俺は感心したような声を上げる。

まったくわけが分からなかったがとりあえず褒めておいた。


「光の流れ、その偏り、そこから能力者の発生地域を予想し

 その調査を複数の幹部たちに委ねていたところ、突然君が現れた」


ナンバーツーはそう言うとニヤリと笑った。


「……つまり、俺はこの場所に流れていた光によって

 力を得たって言いたいのか?」


俺はそう答えながら考える。


「詳細は違うが、結論としてはそういうことだ」


ナンバーツーはそう言って俺の目をのぞき込む。おしろいの塗られた肌は白さを増し、その黒い唇が動くたびに妖しさが際立った。


「……いや、俺がこの力に気づいたのは中学生の頃で、

 この街とは遠く離れた所に住んでいた時のことだ。

 すまんが、あんたの言っていることとはまったく違うと思うぞ」

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