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【悲報】ボッキマン、ヒーローショーを台無しにする その⑥

「あの、一つ聞きたいんだけど」


俺は笑い終えると、気になっていたことを二人に聞いた。


「うん、なにかしら」

「センドレッドに何でも聞いてもらえることになってるんだけど、

 糾業会の本部ってどこにあるか教えてもらってもいいか?」


俺の言葉を聞いた途端、二人の顔色が曇る。


「えっと……それは……ちょっと難しいかな……」

「おいおい、約束だったんだけど」

「ごめん。本当に悪いと思ってるけど、そればっかりはダメよ」


マドワセルが申し訳なさそうな顔をする。


「そっか」


俺が頭の後ろに手をやり残念そうにしていると、マドワセルが声をかけてきた。


「あ、でもボッキマンさんが糾業会に忠誠を誓ってくれるっていうんだったら、

 本部に案内しても構わないわ」

「忠誠?うーん、それはちょっとなあ……」


でも、実際どうすればいいんだろうか、こいつらの仲間になるのもいいかもしれないが、今のままじゃ脅されて一方的に従わされたようでなんだか納得がいかない。


「ねえマドワセル、本当にダメなの?行きたいって言ってるけど……?」

「……何言ってるの、無理に決まってるでしょ。後で絶対問題になるから」


センドレッドの方に目を向けてみると、彼女は悲しそうにうつむいていた。


「……でもボッキマンさんは私たちの本部の場所を知って、

 それでどうするつもりなのかしら?」

「え?そうだな。まずボスとやらに話を聞きに行くだろ。

 後は……おっと、以前、糾業会に襲撃された時にお気に入りのパーカーが

 めちゃくちゃになったからその代金を請求をするとか」


俺が冗談めかすように言うと、マドワセルは慌ててスマホをいじり始めた。


首領ボスの件は私の一存では無理だけど、あなたの服のことなら……」

「いや、いいよ。あんたじゃなくて俺を襲ったあいつに払わせるからさ」

「……あいつって?」


そう言えばあいつの名前を知らなかった。


「ほら、えーと……なんか髑髏のシャツを着てるセンスが終わってる

 おっさんなんだけど」


俺がそう言うと、マドワセルの口端が持ち上がった。

センドレッドは苦笑いを浮かべている。


「ああ、あの人ね。ふっ……アハハッ……

 ボッキマンさんの言う通り、確かにちょっと……ふふ」

「あ、あのさ、ほんとに笑ってる場合じゃないから……」


センドレッドの表情は先程よりも明るくなったように見えるが、やはりどこかまだ元気がないように感じる。


「なあセンドレッド、今日はあのおじさんは一緒じゃないのか?

 やっぱり怪我は重かったのか?」


俺がそう聞くと、センドレッドは一瞬悲しそうな表情を見せた後、無理やり作ったような笑顔をこちらに向けた。


「ああ、それはその……おじさんは……」


センドレッドは言いにくそうに口ごもっているとマドワセルが口を開く。


「彼ならセンドレッドとコンビ解消よ。

 あの商業施設の巨人を捕り逃した責任を取ってね。

 で、このマドワセルがセンドレッドの新しい相棒ってわけ」


「そうか……そりゃ悪いことを聞いちゃったな……」


「別に、あんたが、その……気にすることじゃないよ、

 あたしらは助けてもらった側だし……」


センドレッドはそう言って、再びぎこちない笑みを浮かべる。

そんな彼女の様子を見ていると少し心が痛んだ。もちろん彼女が苦しんでいるのは俺のせいではない。


ただ、こうして会ったのも何かの縁だと思うし、どうにかしてしてやりたいとは思う。だが、今はここにいてももう得るものはなさそうだ。


俺は立ち上がると、二人に背を向ける。


「え?ちょ、ちょっと、ボッキマン、どこにいくつもり?」

「待ちなさいよ、ボッキマンさん。

 その、あなたに催眠術をかけようとしたことは謝るから……」


センドレッドたちが不安げに声をかけてくる。


「ごめん、俺もう帰るよ。糾業会のことは自力でどうにかすることにする。

 でももう悪戯はやめてくれよな」


俺はそう言うと、出口へと向かって歩き出した。だがすぐに呼び止められる。振り返るとセンドレッドが焦った顔で教えてくれた。


「ボッキマン、ダメなんだよ……

 教えただけじゃ本部には絶対辿り着けないから……。

 あそこに行くなら誰かが案内しないと……」

「へぇ……」


そう言われ改めてマドワセルの方を見ようとした瞬間、足元に何か転がって来た。


(……なんだこれ?)


視線を下げるとそこには、マスクを被った怪人が横たわり倒れていた。なぜかその手にはナイフが握られている。


「お前はザコ怪人ザッコデービル……」


俺が困惑していると、背後から何者かの声が聞こえて来た。


「センドレッド、どういうつもりだ?

 その男に組織の秘密を明かそうというのか?」


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


反射的に後ろを振り向くと、そこにはさっきまで怪人たちと戦っていたヒーローが立っていた。身長は俺よりも少々高めだ、185cmはあるだろうか?

脚が長くスマートな体型をしているが、服の上からでもしっかりとした筋肉が確認できる。


白を基調としたスーツには赤のラインと金の装飾が施されており、頭部も同じく赤のラインが入った白色のヘルメットを被っている。


マスクの部分は半透明になっており、その下には端正な顔立ちをした素顔があるようだが、光の影響で強い影が差しており、その表情はうかがえない。

それに加え、マスクやスーツ、特にグローブは怪人や戦闘員の血で汚れており、それがより一層この男の不気味さを感じさせた。


……そう言えばこいつも糾業会きゅうごうかいの一員だって言ってたな。突然現れたヒーローの問いかけに対し、センドレッドは首を横に振って答える。


「違う!あ、あたしは何も……それにこいつは……」


何かよくわからないがセンドレッドの立場が悪くなりそうだ。


俺は二人の会話に割って入る。


「あのさ、取り込み中に申し訳ないんだけど、

 まずは救急車呼んだ方がいいんじゃないかな」


俺の言葉を聞いたセンドレッドは、助けを求めるような表情でこちらを見つめてきた。そんなセンドレッドを一瞥すると、目の前のヒーローは俺の方を見ながら話しかけて来る。


「俺の名はサイキオン、話は聞いた。糾業会に挑むつもりのようだが、

 俺の見ている前でこれ以上の勝手なマネさせない」


どこか威圧感を感じる口調だ。俺は彼を落ち着かせるためにとりあえず愛想笑いを浮かべながら言葉を返すことにした。


「え、誰って?」

「俺の名はサイキオンだと言っただろう、この怪人め。よく覚えておけ!」


サイキオンと名乗るヒーローは、腰を落とし身構えると拳を構えた。


俺もその動きに合わせるようにファイティングポーズを取る。

俺たちが睨み合っているとマドワセルが口を開いた。


「ちょっと待ちなさいよ、サイキオン。

 彼は敵だと決まったわけじゃないから!」

「マドワセルさん、俺が何も知らないと思っているのか?

 首領ボスに会わせろ、金を寄こせ、俺は確かに聞いたぞ!」


「そ、それは……言葉のあやって奴よ、あなたの勘違いよ」

そう言いつつマドワセルは目をそらす。


「そうなのかボッキマン?」

「あとは俺を襲撃した奴をボコろうかなって」

俺がそう言うと、サイキオンは納得したようにうなずいた。

「そら見ろ!やっぱり危ない奴じゃないか!」


「ボッキマンさんやめて!こんな時にふざけないで!」


マドワセルは必死に説得するが、サイキオンは聞く耳を持たないようだ。


「とにかくこれ以上、街を騒がせる変態をのさばらせておくわけにはいかない。

 行くぞ、ボッキマン!」


そう言うと彼は右手を前に突き出し、左手を腰に当ててポーズを決める。

観客席は大盛り上がりだ。


「来い、ボッキマン!俺が相手になる!」


(行くのか来て欲しいのかどっちだよ……)


「いやお前誰だよ」

「だ、か、ら!

 俺の名前はサイキオンだって言ってるだろ!いい加減にしろ!」

「バカバカしい、一人でやってろよ」


俺はサイキオンを無視して、歩き出そうとする。


「ボッキマン!」


センドレッドが叫んだその瞬間、俺の頭に衝撃が走り、視界が一回転した。だが、俺は地面に手をついて身を捩ると素早く体勢を立て直す。


「ふんっ、ボッキマンよ。

 お前がそのつもりなら、力づくでその企みを粉砕してやろう」


サイキオンは回し蹴りのようなポーズを取ったまま、蹴り足をゆっくりと引いて行く。


「いやお前本当に誰だよ」

「お、おぉ、お、お前、本当にいい加減にしろよ……!

 頭で覚える気がないなら、その体に叩き込んでやる!」


「誰か知らないがいきなり不意打ちかますような卑怯者だしな、

 正義の味方とかじゃないのは確かだな」

「何が卑怯なものか!

 平和を守るために俺は常に全力で戦っているんだ!」


俺は拳を構え、サイキオンの出方をうかがう。


「いやだからサイキオン、待ちなさいってば!」

「待たん!」


マドワセルの言葉を無視し、サイキオンは飛びかかって来た。

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