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【速報】ボッキマン、巨人を討伐する その⑩

空から見た巨人がいた場所へ向かうと、すぐにそいつを見つけることができた。

動画で見た通りの怪物だ。近寄るとその異様さがより鮮明にわかる。


巨人の体は捻じれた関節の太い四肢を持ち、背中には焼け爛れた人間の体のようなものが生え、ところどころに尖った骨が突き出していた。胸元からは触手のような腕が何本も伸びており、それぞれが別の生き物のように動き回っている。そして何より、この巨人はあまりにも巨大だった。


目の前にいるにもかかわらず、全体像を把握することができないくらいに。

巨人は俺の接近に気が付いているのかいないのかわからないが、祈るような姿勢のまま、全く動こうとしない。


「おい、怪物のところについたぞ。お前の仲間はどこだ?」


女にそう呼びかけたが、返事はなかったか。だがその時、視界の端にうずくまるような人影が見えたので、そちらに目を向ける。

するとそこには腹から血を流して倒れ込む男の姿があった。


男の腹は大きく裂け、内臓が飛び出してしまっているようだが、泡の能力でそれを覆っているため出血はほとんどない。

男は俺の視線に気づくと、こちらを見つめ返してきた。


男の目は真っ赤に染まっており、白濁している。おそらく視力はほとんど失われてしまったのだろう。


どうやらこの男がセンドレッドの言っていた仲間らしい。


「お前がセンドレッドの仲間か?」


「ば、馬鹿な……!

 なぜ、なぜ……彼女をこんなところに連れて来た……!」

「質問をしているのは俺だ」


「そうだ、私がセンドレッドの仲間だ。

 彼女はもう戦えない……。早くここから連れ出してやってくれ……」


「ダメだ。お前も来い。こいつが俺に助けを求めた」


すると女が目を覚ました。


「ボッキマン……?ここは……」

気がついた女は男を状態を見ると悲鳴をあげた。


「おじさんっ!ひどい怪我をしてるじゃない……!?」

「……私は、もうダメだ……お前だけでも逃げるんだ……」

「やめてよ!あたしなんかのせいで……」

「そうじゃないんだ……私の力が足りないばかりに……」


俺はこの場違いな空間に取り残されたような気がした。センドレッドとかいう女の願いを聞き届け、ここまでやってきたが、結局はただの茶番にしか思えなかった。


「俺はあの巨人に用がある。お前たちはそこで静かにしていろ」


俺は背負っていた女を床に降ろすと、巨人の方へ向き直った。


「ちょっと待ってくれ……君は、一人で……

 いや、そもそもあいつと戦うつもりなのか!?」


「……なあボッキマン、あたしらを置いてもう逃げていいよ……」

「俺の言う事をなんでも聞くという話はどうなったんだ?」


激しい戦いになることを予測した俺は女にスマホを投げ渡すと、巨人の元へと向かった。背後から男の声と女の制止の声が聞こえるが、気にせずに歩みを進める。


「ボッキマン……彼が、あの……」


巨人の元へ近づくと、その巨躯を改めて実感することができた。近くで見るとなおさらだ。俺は拳を構えると、息を吸い込み、吐いた。


「お前がこの火災の原因なのか?」


俺は巨人に向かってそう問いかけるが、当然返事はない。

しかし、巨人が俺の存在を理解しているのは確かだ。なぜなら俺にははっきりと感じることができるからだ。殺気を。


巨人は立ち上がると、胸の前で両手を組み、そしてゆっくりと開いていく。そして、その手の中には大きな炎の渦が形成されていった。


俺はそれに構わず一気に跳躍する。


しかし次の瞬間、巨人の脇腹の辺りから生えている丸太のような触手が凄まじい唸り声を上げて俺の顔面に迫ってきた。


俺はそれを左手で掴むと、そのまま握り潰した。すると手の中で肉片が弾け飛び、蒸気と共に大量の血液が吹き出した。


俺はそれを顔に浴びないように腕で防ぐと、もう片方の腕で殴りかかる。だが、巨人はお構いなしとばかり俺に向けて手を振り下ろした。


すると凄まじい熱波と衝撃が全身を襲い、一瞬にして体が炎に包まれた俺はコンクリートの床が陥没するほど勢いで地面に叩きつけられていた。


(早い……)


こいつは人間ではない。


だから俺は人間を相手にするように手を抜いたりすることなく、一瞬で決めるつもりだったのだが、こいつの力は俺の予想を上回っていたようだ。


すぐに起き上がろうとしたその時、巨人が立ち上がっており、間接が奇妙に折れ曲がった腕で俺に殴りかかろうとしているのが見えた。


直径数mはあるであろう、鋼鉄の塊のような拳が火を吹き出しながら目前に迫る。

だが俺はそれを頭突きで受け止めると、そのまま奴の拳を粉砕する。


俺は奴の拳を砕いた勢いで弾き飛ばされながらも、素早く地面を蹴り、

その勢いを利用して奴の腹部に強烈な回し蹴りを食らわせる。


重く鈍い音が響き、巨体が大きくよろめく。

だがその時、突然視界が大きくと揺れたかと思うと、俺はその場に膝をついてしまう。

気が付くと死角から奴の触腕が伸びてきており、それが俺の首を捉えているのが分かった。


(バカが、俺は無敵だ。何をやっても無駄だ)


俺は自分の首を掴む巨人の触腕を掴んで引きちぎってやったが、その時、先ほど蹴り飛ばした巨人の腹の辺りに亀裂が入っていて、そこから白い光が漏れ出しているのが見えた。


それはまるで爆発寸前の爆弾のように凶悪な輝きを放っていた。

この怪物の中身がどうなっているのかはわからないが、もし仮にこいつが爆発したら、

無敵の俺はともかくセンドレッドと仲間の男は爆風に巻き込まれて死ぬことになるだろう。


「……」


俺は体勢を立て直しつつ、横目で二人の様子を伺う。男の方は口から血を流しながら、女の頭に手を当てて何かをしているようだった。


俺はそんな二人の様子を見つめていたが、やがて視線を目の前に戻す。


すると、巨人が両手を地面につけ、陸上競技におけるいわゆるクラウチングスタートの姿勢をとっているのが見えた。

次の瞬間、巨人は火花を上げながら急加速するとミサイルの如く突進して来る。


俺は反射的に身を屈め、横に飛び退く。


直後、頭上を凄まじい衝撃と共に熱波が通過する。

しかし避けたと思ったのも束の間、死角から触手に捕まれてしまった。


触手は巻き付くと同時に火を噴き上げる。

俺は服を焼かれ、慌てて身を捩って触手を振りほどこうとしたが、巨人はそのまま俺を振り回す。

そして放り投げるようにして俺を壁に叩きつけると、そこに何度も拳を撃ちつけた。


最初の数発は耐えていた分厚い壁も亀裂が入ると同時に崩れ始め、粉々に粉砕された。


俺は瓦礫と一緒に落下していく中で、空中で一回転し、

両足で着地するとそのまま十数m程滑って止まる。


直後、巨人がこちらに向かって走って来るのが見えた。

俺はそれを見据えると、息を吐き出すように短く笑う。


「俺は無敵だ、だから……」


俺はそう呟くと、巨人に向かって走り出す。

巨人は走る速度を上げると、俺を踏み潰そうと大きく足を振り上げる。しかし、俺の方が圧倒的に速い。


俺は振り下ろされる巨人の足を難なく避けると、巨人の足元に滑り込む。そして巨人の足首を掴み、思い切り捻る。巨人はバランスを崩すと、仰向けに倒れた。


俺はそれに跨ると、巨人を見下ろし呼び掛けた。


「お前が何をしようと無駄だ」

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