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【速報】ボッキマン、巨人を討伐する その②

すでに到着していたエレベーターに乗り込み、俺は4階のボタンを押す。


あの幽霊が4階にいる保証はないが、先ほどの灯篭、そしてあのミステリアスなおっさんから察するに『コンブマン』というテナントが関わっている可能性が高い。


扉が閉まり、エレベーターは上昇を始める。するとすぐに浮遊感のようなものを感じた。


「……幽霊にキモいとか言われちゃったよ」


そう呟いて俺はため息をつく。エレベーターの中は静寂に包まれており、機械音だけが響いている。先ほどの幽霊とのやり取りを思い出し、俺は改めて不思議な体験をしたものだと感じた。


(まさか本当に霊を見る日が来るなんてな)


そんなことを考えながらボーッとしていると突然、エレベーターが真っ暗闇に包まれた。停電かと思い周囲を確認するが電気が落ちている様子はない。


俺は不安になりながらもスマホを取り出し、ライトをつけようとしたがスマホが反応しなくなっている。


「え、嘘だろ」


故障かと焦っていると、不意に天井から何かを叩きつける大きな音が聞こえてきた。誰かが昇降機の上に乗って叩いているのだ。


「おい、お前さっきの幽霊か?やめろ!」

俺は怒鳴ったが返答はない。やがて昇降機は激しく揺れ始めた。まるで巨大な手で掴まれ振り回されているような感覚だ。


「おいやめろってバカ!ふざけんじゃねーよ!」

それでも幽霊は何も言わず、ただひたすらにエレベーターを上下左右に揺らし続ける。どれくらい時間が経っただろうか。


ようやく振動が収まったかと思うと今度は勢いよく落下するような感覚が襲ってきた。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


無敵の力を持つ俺は平気だったが、もしそうでなかったら俺は今ので死んでいたかもしれない。地上階に激突した衝撃で歪んでしまったエレベーターの扉を引きちぎるようにしてこじ開けると、俺は怒りに任せて階段へと走った。


しかし、そこでまたもや妨害される。

階段を上ろうとすると足を何者かに掴まれたのだ。


足元を見ると、青白い手が生えていて、それが俺の足を掴み引き留めている。

「てめーいい加減にしろよ!ぶっ殺すぞ!」

俺は幽霊に向かって怒鳴ったがやはり返事がない。


俺は力任せに足を引き抜くと、そのまま一気に駆け上がり、やっと4階まで辿り着くことができた。


「ハァ……やっとついた……ざけんじゃねーよマジで……」


俺は悪態をつきながら謎のテナント『コンブマン』を目指して歩いて行く。

そうは言っても、別に殴り込みをかけようというわけではない。ちょっと見てみるだけだ。ただのあの幽霊がいたら文句くらいは言いたいが。


4階の廊下は薄暗く、不気味な雰囲気だった。B地区のにぎやかな雰囲気から隔絶された空間のように感じられる。しばらく歩いていると、ふわっと香水のような甘い匂いが漂ってきて思わず鼻を押さえた。


(なんだこの匂い?どこからだ?)


そう思った瞬間、背後から肩を叩かれた。

驚いて振り返るとそこには先ほどから俺を殺そうとしていた幽霊の姿があった。幽霊はなぜか泣きそうな顔をしてこちらを見つめている。


「お、お前、さっきはよくもやってくれ……」

俺は困惑しながらも、目の前に浮かんでいる幽霊の着物に手を伸ばす。そして触れようとしたところで、その手をはたかれた。


「触らないで!!」

大声で叫ばれたので反射的に手を引っ込める。


「え、ごめん……悪い……」

俺の反応に対して幽霊はしばらく黙っていたが、意を決したように口を開いた。


「あたしに触れないで……お願いだから……」

「い、いや、わかったけど何なんだよお前は、いきなり殺そうとしてくるし」


俺がそう言うと、幽霊は申し訳なさそうな表情を浮かべてぼそぼそと話し始めた。


「ごめん……あたし、あんたが先生のことを……

 ストーカーしてるんじゃないかと勘違いしてて……」

「え、先生って誰?」

「……その……先生が言ってるの……あんたを連れて来いって」

「いや、まぁそれはいいんだけどさ、先生って」


そう言った途端、廊下の奥の扉が開き、ビルの前で出会ったミステリアスなおっさんが顔を出した。おっさんの表情は少し緊張気味だったが、俺の顔を見るとすぐに笑顔を作り話しかけてきた。


「すまん、そいつに悪さされたんだろ?入ってくれ」


こうして俺は男に招かれ、謎のテナント『コンブマン』へと足を踏み入れた。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


男に案内されて入った部屋はまるでどこかの事務所のようであった。


奥にデスクがあり、手前側には応接セットが置かれている。ただ、窓もなく照明も薄暗いのでどこか陰鬱な雰囲気が漂っている。


男は部屋の中央にあるソファーに座るよう促すと、自分は向かい側の椅子に腰掛けた。俺が言われるままに座ると、彼の緊張が少し和らいだような気がした。


「えーと、まず自己紹介させてくれ。

 俺はここ有限会社コンブマンで探偵をやっている幻二四郎げんにしろうだ」


「あ、どうも……俺は没木一歩ぼつきいっぽだ。よろしく」


「それで、殴られたんだろ?あいつに。すまなかったな」

「いや、殴られたというか、俺あの幽霊にエレベーターごと

 落とされて殺されそうになったんだけど……」

「……え、マジで……?初耳なんだけど……

 というか俺、次から階段なの……」


男の言葉に幽霊は泣きそうになり目を潤ませながら下を向いてしまった。


なぜ殴られ、なぜこんな場所に連れ込まれたのか。そもそもここはなんなのか。どうして幽霊はこの男のところにいるのか。疑問は尽きないが、ひとまず俺は幻二四郎と名乗る男に尋ねることにした。


げんさん、あんた探偵なの?

 なんでなんとか探偵事務所じゃなくてコンブマンって名前なんだ?」


「げんさん……お前……いきなり慣れ慣れしくなったな……

 出会って1分経ってないだろ……」


彼はそう言いながらも、特に気分を害した様子はなかった。むしろ面白がっているようにさえ見える。


「いや、そのな、探偵事務所みたいな名前にしたらな?

 探偵事務所みたいな依頼が来て、俺はその辺のありきたりな

 仕事をするハメになるだろうと思ってな。

 後な、先に言っておくがあと俺はれっきとした人間だ。ほら身分証」


どうやらここが普通の探偵事務所ではないことは確かなようだ。


「えーと、じゃあ幻さんは一体何の仕事をしてるんだ?」

「だから探偵だって」


思わずこけそうにそうになる。


「いや、そういう意味じゃないんだけど……」

「わかってるよ。俺がやるのは俺にしか出来そうにない依頼だけだ。

 それ以外は全部断るようにしている」


「うーん……?」

言っていることがよくわからず曖昧な返答をすると、彼は苦笑しながら話を続けた。


「例えばな?殺人事件が起こったとする。警察は捜査をするわけだが、

 中には連中の手には負えない事件というものもある。

 そんな時、俺の出番が来るって寸法だ」


「へぇ……じゃあ能力者犯罪の特殊部隊みたいなもんか……」


俺がそう言うと幻二四郎の顔つきが一瞬険しくなった。


「おっと……そうだった。

 お前普通の人間じゃないだろ?それについて話そうと思っていた」

「え……普通だと思うけど……」


「隠さなくてもいい。お前の魂からは異常なものを感じる……

 そうだな……わかりやすく言えば、お前は人外の存在に近い。

 それも強力な力を持った存在だ」


俺が今まで出会ってきた能力者、ぬいや神代かじろ七角ななつの

それからイグナイトにも外見的に能力者だと判断できるような違いはない。

しかし、目の前の男には俺が能力者であるということが一目でわかったらしい。


「あんた……なんの能力者なんだ?人の心が読めるとか?」

「いや、俺は超能力は使えない。ただ霊を操る力があるってだけだ」

「それって能力となにが違うんだ?」


「この街にいるような奴らと違い、

 後天的に何らかの影響で発現した力じゃないってことだ。

 俺の力は修行によって身に付けた、出自のはっきりしている力だ」


そう言うと幻二四郎はおもむろに空中を指さした。

そこにはいつの間にか先ほどビルの前で見た灯籠が浮かんでいて、緑色の火を吐きながらゆらゆら揺れていた。

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