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【悲報】ボッキマン、献血を妨害する その⑤

「と、いうわけだ!頼む!」


『お、おお、お前、傍若無人がすぎるだろ!

 わっ、わ、私にだってな、き、き気持ちを整理する時間が必要なんだよ!

 というか、ど、どういうわけなんだ!』


「そう言うなよ!俺にはお前しかいないんだ!この通り!」

俺は怒鳴り散らすハコセコを相手に必死で頼み込んだ。


「ボッキマン、ここは一体……」

「ああ、天才科学者が住んでる王国だよ。ちょっと前から友人になったんだ」


「王国?いや、しかし、こんな山の中にこれは……すごいな……」


俺はイグナイトを伴い、ハカセコの王国を訪れていた。俺一人で来るならともかくイグナイトを連れてくるのはまずかったかもしれない。

後で滅茶苦茶怒られるかもしれないが背に腹は代えられない。


少し待つと扉が開き、そこからハカセコが出てくる。

ハカセコの目の周りは少し腫れて赤くなっていた。


「ハカセコ、その目、どうした?大丈夫か?」

「う、うるさい、大丈夫だ!何でもない!」


「あ、俺はイグナイトと申します。よ、よろしくお願いします」

「あ、ああ、私は、は、ハカセコだ。よろしく」

イグナイトは少し緊張しているようだ。ハカセコの顔を見て生唾を飲み込んでいる。


「き、きっ、君はその……か、彼とは、どういう関係なんだ?」

「はい、お、俺はボッキマンと……」


「聞いてくれよ!俺はこいつに昔、殺されそうになったんだよ!

 まあ全然苦戦しなかったけどな」


「……」

「……」

緊張を和ませようと二人のやりとりに口を挟んだが気まずい沈黙が流れてしまった。


「えっと、すまん。わ、私に何をしろと言うんだ?」

「あ、はい、実は、献血に関して街で奇妙な事が起きていて、

 それについて調べているんです」


「献血……?献血なんてどこでもあるだろ?

 献血センターは全国各地にあるし、献血バスだって走っている。

 献血がどうかしたのか」

イグナイトはハカセコに事情を説明した。


「な、な、なるほど、そ、そういう事か。ち、ち、血の流れを追えと……」

「ははは、それじゃまるで医者みたいだな」


「おい、ボッキマン、茶化すのはやめろ!ハカセコさんに失礼だろ!

 ハカセコさん、申し訳ございません。

 俺が頼める立場ではありませんが、何かお心当たりがあるようでしたら

 助言をいただけないでしょうか……」


イグナイトが恐る恐る尋ねると、ハカセコはしばらく考え込むように俯いたあとに口を開いた。


「わわ、わかった、し、調べてやろう。ご、5分待て」

「ありが……え、5分?!」


驚くイグナイトを尻目にハカセコは近くの適当な機械にノートPCを置き、何やら操作を始めた。ハカセコの手元のモニターには数字が並んでおり、それがどんどん変化していくのが見えた。


俺は適当にそれを見てたが、唐突にイグナイトに腕を掴まれ物陰に引っぱり込まれてしまった。


「な、なんだ?どうしたんだよ?」

「ぼ、ボッキマン、お前はハカセコさんとどういう関係なんだ?!

 あんなに親しげに……」

「はぁ、別に普通に友達だよ」


「お前みたいな奴でも親しくしてくれる人がいるのか、

 まるで天使のように優しい心を持った方なんだな……それに」

「おいおい、お前はさっきから何言ってんだ?」


「何て愛らしい人なんだ……俺はハカセコさんの事をもっと知りたい……」

「は?お、おい……イグナイト、お前、目的を見失うなよ……」


「す、すまない、取り乱してしまった。もう大丈夫だ」

「お、おう」


俺はイグナイトの様子がおかしいことはわかったが面白そうだったので放っておくことにした。


「まっ、待たせたな、こ、これでいいだろう。

 けけ、献血センターからの血液供給量の減少と、それに伴う車両の……

 まあ、いい。ここ、これを見ろ」

そう言ってハカセコはノートPCをこちらに向けた。


そこにはいくつかのグラフと地図が表示されており、グラフの赤い線が徐々に減っていく様子が見える。そして同時に地図上にある枝分かれしたラインが変化するのが見て取れた。


「これ、もしかしてこれが運び出された血の流れなのか?」


「そ、そそうだ。ぼ…、没木。

 あ、ああ、明らかにおかしな場所へと流れているのが、わ、わかるはずだ」

ハカセコがある一点を指すとイグナイトが食いつくように画面を覗き込んだ。


「こ、ここ、ここだ、この建物。

 けっ、献血センターにしては、かっ、か、かなりエキセントリックだな……」

イグナイトはハカセコの指先に見とれているようだったが、やがて搾りだすようにその建物の名前を呟いた。


「ここは……矢深やぶか組会長の屋敷だ」

「やぶかぐみのかいちょうのやしき?」


イグナイトが言った言葉をそのまま繰り返すと、何故かムッとした表情で睨まれてしまった。


「そうだ、複数の地区を仕切っているそこそこデカい暴力団だ」

「え、マジか……いや、なんとなくデカい建物だなと思っていたけど、

 糾業会とは関係ないのか?」


「ない。お前、俺たちはヤクザでもなんでもないぞ。

 俺たちはこの街の弱者と共にある正義の組織だ」

「えぇ……」


そんなことを言われてもなあ……、俺は少し困惑していた。

何しろ俺は初対面でこいつらにいきなり殺されそうになったからな。


「ボッキマン、お前は誤解をしているのだ。

 俺たちは正義のために行動しているが、その方法は様々で、

 時には暴力で解決することもあるってだけだ」


「……ならなんの正義でビルの屋上を走ってただけの俺を殺そうとしたんだよ」

「あ、あれは、その、命令されてだな、正直俺も意味が分からなった……」


ハカセコが俺たちのやりとりを遮るように口を開く。

「お、おい、そっ、そ、そこまでしろ。

 た、建物は分かったが、これからどうするつもりだ?」

「はい!俺はこの建物に突入し、調査したいと思います!」

イグナイトは勢いよく手を挙げるとハカセコに宣言する。


「し、突入だと……ば、馬鹿を言うな。

 きっ、きき、君がどれほどの強さか知らないが、

 こ、殺されに行くようなものだ。やめておいた方がいい」

「でも、俺は……」


「じゃあ俺もついて行くよ。イグナイトもそれでいいだろ?」

「まあ……き、貴様も一緒なら、しっ、し、心配ないだろうが、

 かっ、かっ、彼を守ってやれよ」

「ああ、任せとけ」

「……」


イグナイトは無言で俯きながら自分の足元を見つめて考え込んでいるようだった。

俺は彼の肩を軽く叩く。


「ほら、行こうぜイグナイト。とりあえず今は俺たちの目的は同じなんだろ?」

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