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【速報】ボッキマン、虫捕りに出掛ける その⑧

「勃起すると無敵に?そんなバカな話があるか!」

「し、知らねーよ!人知を超えた存在の仕業で俺のせいじゃない!

 なんか使命があるんだろ俺には!」


佐凪博士は納得できないといった表情を浮かべていたが、やがて諦めたように俺を解放した。


「まあいい、とにかくその力についてはあまり人に見せるな。

 あとは力を使うなら『それ』はせめて隠す努力をしろ、ファールカップとか

 そういうものがあるはずだろう」

「わかったよ……」

俺が困り顔で言うと、佐凪博士は呆れた様子で首を振った。


「まったく……マーリー、今見たものは忘れたほうがいいぞ、

 あとこの男には不用意に近づかない方がいい。

 何をされるかわかったもんではないからな」

「はい……」


「それじゃあな、没木。私の忠告が役に立つことを願っている」

「ああ、じゃあまたな」

こうして、俺と佐凪博士は別れた。


佐凪博士と別れてから部屋の扉を開けると、七角が肩を落とし座り込んでいた。


「遅かったね……話は終わったの」


「え、もしかして待っててくれたのか?悪い、ちょっと色々あってさ」

「気にしないでいいよ。俺も君に謝らないといけなかったし」

「えっ、俺に?何のこと?」


「その、怖い思いをさせたことを謝りたくってさ、

 本当に申し訳ないと思ってるんだ。ごめん」

「いやいや、全然気にしてないし、こっちこそ仕事の邪魔しちゃって」

俺は手を振りながら言ったが、それでも七角は申し訳なさそうな顔をしていた。


「没木が止めてくれなかったら、俺、死んでたよ。

 強い奴っていっぱいいるんだな……」

そう言って、七角は自分の拳を見つめた。


「マーリーのこと?あいつは別格じゃないの。あんな奴はそういないと思うけど」

マーリーの名前を出すと彼は少し心配そうに俺に尋ねた。


「あの人ってオレのことなんか言ってた?」

「え、いや特には……」

「そっか、そうだよね」

俺が答えると、七角は再び俯いた。


「……」

「……なあ、大丈夫か?どっかケガしてるとか……」


「い、いや、ごめん、なんでもないよ。それより早く出よう。

 オレが来た道から出ると下水を通らなくていいから」

「お、おう」

俺は彼の後に続いて通路に出た。


「あ、そういえば仕事って言ってたけどここに一人で来たのか?」

通路を歩きながら、俺は思い出したように口を開いた。


「……」

「あ、すまん。なんか聞かれると困る感じだったかな」


「ううん、別にいいよ。

 実は二人で来たんだけど、その人が中に入るの嫌がってさ。

 まあ地上で監視する人も必要だったんだけどね、

 結局、オレが一人だけでこっちに来たんだ」

「ふーん、大変だな」


「でもさ、あんなにすごい博士だと思わなかったな。

 オレも強さには自信があったんだけど」

「ああ、あの人もまあ、特別だと思うし」

俺の言葉に七角は苦笑いをした。


「オレさ、今まで強いつもりで戦って来たけど本当は今まで弱い者いじめを

 してるだけだってよくわかったよ。これからはもうそういうことはしないように

 しようと思う」

「そっか、それがいいよ。きっと」


七角がやって来た通路の出口は少し街から外れた所にある廃工場の駐車場のような場所だった。そこには大きなトラックが停まっている。

荷台には何か巨大なものが積んであるようだ。


「じゃあ、俺はこれで。世話になったな」

「こちらこそ、ありがとう。また会えるといいな」


七角と別れの挨拶を交わしていると唐突に後ろから声をかけられた。


「おい、そいつが博士なのか?随分若いな」

振り返ると、髪を短く刈り込み、うっすらと口髭を生やした三十代くらいの男が立っていた。

男は作業服に身を包み、首筋にあるタトゥーを掻きながらを俺の顔を眺めている。


「違うよ、見てわかんないの?」

七角は男を一瞥するとバカにしたように鼻を鳴らした。


「ああ、わからんな……てことはアレを連れてくることには失敗したのか?」

「うん、諦めた方がいいよ。オレとあんたが束になっても無理」

七角はそう言うと俺に向き直った。


「じゃあ元気でね」

「え、あ、ああ……」


「おい待て、ならそいつは誰なんだ?」

俺が去ろうとすると、男は強い口調で俺を呼び止めた。


「ただの一般人。オレたちのせいで湧いたゴキブリを追っかけて下水道に

 迷い込んでたから連れて来たんだよ」

「ゴキブリを追いかけて下水道に入るようなバカがいるわけないだろ。

 そいつはどこまで知っている?」

七角はため息を吐くと面倒くさそうな顔をしながら俺に告げた。


「没木、この人はバカの癖に自分の頭がいいとか勘違いしちゃってる

 最悪のタイプだから早く帰った方がいいよ」


「え、ああ、そうか、じゃあ」

七角に言われて俺はその場を離れようとした。

だが、男はそれを止める。

「待て、その男について詳しく話せ」


「はぁー……

 あのさ、あんたが知りたいのは博士じゃなくて一般人のことなの?」

「……」

七角は挑発するように言うが男は無表情のまま俺の様子をじっと見つめている。


「この人は普通の人間だから何も知らないし、オレたちの仕事にも関係ない。

 何も聞いてないし、見てもいない、はい終わり」

「ダメだ。そいつが何を知っているのか知る必要がある」


「どうして?没木は何も知らないよ?それに一般人を変なことに巻き込んで

 警察に目をつけられたくないでしょ?早く帰してあげようよ」

七角は俺を守りたいらしく男を説得しようとしていた。


「お前じゃ話にならんな。おい、博士に会ったか?

 博士は何と言っていた?」

「い、いや……ハカセって言われてもわかんないかな、ははは……」

俺は愛想笑いを浮かべながら誤魔化そうとした。


「その手に持っている銀色の物は?」

男は俺が手にしているブラウニーに視線を向けると質問を変えた。

「あー、もう!しつけえな!」

七角は苛立った様子で男の胸ぐらを掴む。


「没木は関係ないって言ってんだろ!?これ以上やるようなら殺すぞ!!」

「何をそんなに焦ってんだ?」

七角の剣幕に対し、男は落ち着いたまま不愛想に吐き捨てた。


「まあいい……お前がその気なら話す気にさせてやる」

「はあ?じゃあこっちは二度とそんな考えが起きないようにしてやるよ」

七角はため息をつき、男を突き飛ばすと拳を構えた。


どうしよう?


状況は悪化する一方だ。

俺がボケっとしているせいで二人の関係が悪化してしまった。


ただ七角の言うように本来なら彼らのモメごとなど俺には関係ない。


……関係ないんだが関係なくはない。


七角は下水道にいる時からずっと初対面のよくわからない男でしかない俺の身を案じ何度も守ろうとしてくれていた。

彼はちょっと乱暴なところはあるが決して悪い奴じゃない。ここで彼を放置して逃げ出すことは没木一歩として間違ったことのような気がする。


俺は深呼吸をし、二人に呼び掛けた。


「おい、二人ともちょっと落ち着こうぜ、ラブ&ピース!」


俺がそう叫ぶと二人は動きを止め、俺の顔を見た。

「えっと、まずさっきの質問だけど博士って何の話だ?さっぱりわからない」

俺は両手を広げ、首を横に振った。


「嘘をつくな。その手にあるのは博士から渡されたものなんじゃないか?

 違うのか?」


「えっ、ちげえよ。これはな、高性能なお掃除ロボットなんだよ。

 ほら、こんな感じで」


俺がブラウニーを地べたに置くと、ブラウニーは俺の意図を汲み取ったのか無言でゴミを吸い始めた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 展開が全く予想出来ない… 出てくるキャラクターが妙に良い [一言] いつも読ませて頂いて有難うございます 楽しませて頂いております 勃起して徘徊していただけの青年がこの先どこ迄いってしまう…
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