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【悲報】ボッキマン、不安になる その⑨

画面にはあの神代が制服を身に纏った姿で現れ、

自信満々といった様子で立っている。

その姿はまるで、晴れ舞台に立つスターのように堂々としたものであった。


「あ、あの……どうかしました?」

玉矢が不安そうな表情を浮かべて俺の方を見る。俺はそんな玉矢に構わず、大型ディスプレイの中の神代に視線を向けたまま固まっていた。


『みなさん、こんばんは!私は神代清香しんたいきよかと申します。

 超能力を使った犯罪から皆さんを守るための部隊、

 そのリーダーを務めることとなりました』

そう言って、神代は胸を張る。


すると彼女の形の良いバストが強調される形となり、周囲の男性陣がどよめき出す。俺はその反応に思わず笑ってしまった。


しかしそれ抜きにしても神代の制服姿は新鮮だった。俺は私服しか見たことがなかったので、こうして制服を着ている彼女を見ると不思議な気分になる。


「……彼女もあの時、カフェにいましたよね」

隣にいる玉矢が俺の顔を見上げてくる。

「ああ、そうだな……」

俺は玉矢の方に顔を向けず、ただ大型ディスプレイを見つめ続ける。


「……あなたはカフェで神代さんと親し気に話されてましたよね、

 やはりお知り合いなんですか?」

「いや……ちょっとした知り合いってだけでそこまで親しいわけじゃないよ。

 しかしまあこんな大役を任されるなんてすごいことだよ、ほんと」

「そうですね……」

玉矢は真剣な眼差しで大型ディスプレイを見上げている。

俺も大型ディスプレイに映る神代の姿をまじまじと眺めていた。


相変わらず綺麗な顔だ。

それに、俺に会った時よりも生き生きとしている。


スポンサーの中年女は神代の肩に手を当てて物凄い笑顔を向けているが、神代は嫌そうな顔一つせず微笑んでいた。


「しかしあのおばさん、

 能力犯罪とやらのために金かけて何をやりたいんだろうな……」

「僕にはわかりませんがきっと大きな意味があるんでしょう」

「そうかぁ……」


俺は大型ディスプレイに映る神代の姿を見ながら思う。

あいつ、楽しそうに笑ってるな……。

きっとこれが本当にやりたかったことなんだろうな。

まあ俺はこんな放送に出て記者会見みたいなことをするなんて絶対嫌だけど。


「なあ、でも能力者の犯罪って言うけど危なくないのか……?

 一概に能力者って言っても

 相手がどんな能力を持っているかなんてわからないだろ?」


「はい、確かにそれはその通りですが……

 破壊規模等からある程度どんなの能力でどのような危険があり得るかを

 推測することは可能なようです。

 それにサポートしてくれる仲間だっていますので……」

「ふぅん……」

玉矢は以前の神代とまったく同じようなことを言っていた。


「……まあ、頑張ってくれよ」

俺は小さく呟くとディスプレイに背を向ける。


「え?見て行かれないんですか?」

「ああ、大体わかったしな。家にも用事を残していたしもう帰るよ」

俺は困惑する彼を背に帰ろうとした。


「あっ、忘れてた!

 俺の名は没木一歩ぼつきいっぽだ。じゃあな」


俺は去り際に玉矢に自分の名前を告げたが、彼はディスプレイの中の神代を熱心に見つめたままで、俺の言葉など耳に入っていないようだった。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


「ハコセコに会いに行ったよ」


俺は自宅に戻ると、椅子に体を預けながらブラウニーに呼び掛けた。


「はあ……で王様は、俺、じゃなくて私のことで何か言ってましたか?」

「え?いや別に……」

「そうですか……じゃあまだ王国には帰れないんだな……」

お掃除ロボットのブラウニーの表情はわからないが、どこか寂しげな印象を受けた。


「いや、お前が帰りたいなら無理にここに居る必要もないぞ?」

「いえ、王様の命令ですから」

「命令ねぇ……」

俺は腕を組みながら考える。


「それってお前のやりたいことなのか?」

「え?ロボットだからやりたいこととかはないですよ」

「そうか、まあそうだよな……」

俺は間抜けな質問をしたことに少し恥ずかしくなり、頬を掻いた。


「それからさ、以前言っていた女を痛めつけていた犯人に会ったよ」


「それでどうなったんですか?犯人を懲らしめたんですか?」

「死んじゃったよ……自殺だ、見てないけど、多分な」

「何故ですか?」

「何故ってそれは……罪の意識に苛まれてとかそういうことじゃないのか?」


「うーん……そうでしょうかね?」

「じゃあ何でだと思うんだよ?」

「さあ……わかりません、私はお掃除ロボットですから」

「なんだよ。わけわかんねえなあ……」

俺は天井を見上げて溜息をつく。


己を醜い人間だと思い込み、ひたすら自分を拒絶し恨み続けた潮木はその通りの存在になり、犯罪者として自ら命を絶った。

一方で、若く輝くような美貌を持つ神代はその才能を見込まれ、スポンサーまで付くほどの有名人となった。

一体、どちらが幸せなのだろうか。


まあ考えるまでもないか……。


潮木は出会う人間や環境が違っていればあそこまで歪まずに済んだのだろうか。

そんな疑問が頭を過る。

しかし今となっては真相は闇の中だ。俺は潮木の事をほとんど知らない。

彼が過去どんな目に遭って、何を想い、どうして死んだのかなんてわかるはずもなかった。


俺は潮木の側、それとも神代の側なのだろうか。


「(俺は今、どちら側に立っているんだろう)」


俺の名はボッキマンあらため没木一歩ぼつきいっぽ

無敵の力を持つ男。


影響されやすく、騙されやすく、

そして……この物語の主人公であり、ボッキマンの最大のライバルでもある。

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