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【速報】ボッキマン、山に挑む その②

「おぉ……」


俺は目の前に現れたものを見て驚愕する。

全長5メートルはありそうな巨大なロボットがそこに立っていた。


ロボットは白銀の甲冑をまとった中世の騎士を思わせるデザインで右手には青白い光をたたえた槍を携え、左手には円形の盾を持っていた。


俺はその姿に見惚れてしまう。


盾や槍にも細やかな装飾がされており、細部にまでこだわった作りをしているのが素人目にもわかった。


「すげぇ……」

俺は少し感動しながら、スマホを取り出すとロボットに近づいて行った。

すると騎士の方もゆっくりと動き出し、俺に向かって歩いてくる。


(おっ!う、動いた!すげぇ!)


俺は興奮気味に心の中で呟く。


そしてロボットが盾を構えた瞬間、騎士の周囲にバリアのような物が展開される。


「えっ!?」


俺は驚いた同時に後方に飛び退いたが、騎士はバリアを維持したまま槍を構え、追撃して来た。こんな見事なロボットを壊すのは少し気が引けるが、攻撃されるというなら話は別だ。


俺は迫り来る槍を間一髪で避けるとその腕を掴み、関節部分を蹴り飛ばしてやったが、俺の足がバリアに触れた瞬間、何かかが焼け落ちる嫌な音を聞いた。


思わず足元を見ると、バリアに触れた辺り、膝から下でズボンが消滅している。


スニーカーも影も形もなくなっていた。


俺は慌てて足を引き抜き距離を取ったが、関節を粉砕された白銀の騎士は自分の足を見つめて呆然と佇んでいる。


俺は恐る恐る近づくと、騎士の体に手を置く。

「こっ、これでおあいこだぞ……」

俺が自分の足を指さしながらそう言うと、騎士は俺の顔を見た。

そして、まるで感情があるかのように頭を垂れる。


俺が困惑していると、騎士はいきなり爆発した。いや、正確には自爆した。


俺の全身を爆風と鋼鉄の破片が襲う。服はもうボロボロだ。これから先、俺はどれだけ服を台無しにすることになるのだろう。


「ふぅー……」


俺はため息をつくと、スマホを取り出し画面を見た。

まだ動くようだが、服はともかく何度もスマホを買い替えさせられたらたまったもんではない。


「まあ、いいか、いや、全然よくねえけどな……それよりこれどうするか……」

俺は目の前に広がる光景を眺めながら独り言を呟くと、それに応えるように周囲に声が響いた。


『か、彼は、こ、ここっ、この国の誰からも愛された、

 ゆ、ゆっ勇者だったんぞ……な、なっ、何てことをしてくれたんだ……』


それは人間の声で、意味はよくわからないが、怒りと悲しみが込められたような口調だった。


俺は周囲を見渡すが、誰もいない。


「誰だよ?どこに隠れてるんだ?」


俺は虚空に向かって叫ぶ。

すると、騎士の残骸の上に蜃気楼のように人の姿が現れた。


それは派手な鎧をまとい、丸い眼鏡をかけた地味な顔立ちの若い男だった。

鎧の派手さのせいで地味な顔がさらに地味に見える。


男は不愉快そうにこちらを見たが、すぐにうつむくとぼそぼととしゃべり出した。


『わ、わわっ、私は……その……き、貴様のせいで、

 ぎっ、犠牲になった、た、きっ、騎士の、くっ、くく、君主……

 いや、しゅ、主君で……』


「ん?なんて言った?よく聞こえないんだけど……あんたどなた?」


俺は男の方に歩み寄りながら言う。


『あよ!』

男は怯えた様子で後ずさるが、俺は構わずに距離を詰めていく。


すると、男は自分の顔を頬を両手で叩き、芝居がかった口調になると先ほどとは打って変わり流ちょうに話し始めた。


『貴様のような盗賊風情に名乗る名前などない!

 我が王国に侵入し、騎士パンダグリエルを殺害した罪は万死に値する!

 しかし、哀れな被害者である彼へのせめてもの慈悲として、私自らが精鋭を率い、 

 貴様を直々に成敗してくれよう!!』


男がそう言い終わるとフロアが震動し壁が開いていく、どうやら先に進めということらしい。


「こっちに来るんじゃないのかよ……」


俺は肩を落としながらも、進むことにした。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


しばらく進むと開けた場所に出た。


そこは20平方メートル程度の空間で天井は高く、床や壁はコンクリートで固められている。


そして、その先には巨大な鋼鉄の扉が俺の行く手を塞ぎ、扉の傍らには小さなコンソールパネルが設置されていた。


「……なんだこれ?」

俺はコンソールパネルの液晶を睨む。そこには意味不明な記号の羅列があり、全く理解できなかった。すると突然、後ろから笑い声が響いてきた。


振り返るとそこには、あの主君を名乗る男が浮かんでいる。


『ふふふ、見ての通り抽象代数学における準同型定理だ。

 まずはこれを証明してもらおう……。

 ま、こんな単純な問題くらい余裕だとは思うが』


「いや、そうじゃなくて……ロボットと戦うんじゃないのかよ?」

俺が尋ねると男はわざとらしく眉間にしわを寄せた。


『おいおい、誰がそんなことを言ったんだ?

 ま、まさか貴様、この程度の問題も分からないのか?

 4歳の私ですら解けた問題なのに?こ、こんなの常識じゃないか?』


馬鹿にしたように笑う男を無視して俺は問い直す。


「わかった、問題を解かないと扉は開かないんだな?」


『その通り、では始めるとしよう。制限時間は10分だ。

 もちろん解けなければ、ここから一生出られないから覚悟するように。

 それでは、スタート!』


俺は仕方なく液晶に視線を落とす。しかし、液晶には相変わらず意味不明の文字が並んでいるだけだった。


仕方ない。


俺はため息をついて鋼鉄の扉を殴りつける。


フロアそのものが崩壊するような揺れと共に轟音が響き、扉には大きな穴が開いた。


男は音に驚いたのか避難訓練の子供のように頭を抱えてうずくまっていたが、やがて何が起きたか理解したようで絶叫する。


『きっ、貴様ぁああぁあ!!ふざけるなぁああああぁあぁ!

 きっ、きっ、貴様、ズルだ!インチキだ!!不正だ!こんなの間違ってる!!』


俺はうろたえる男を無視して扉をくぐる。


「OK!」


『OKじゃない!知恵比べだぞ!知恵で勝負しろ!』


「知恵を比べたくなるような問題にしろよ。じゃなきゃ俺は力比べのままで行くぞ」

俺の言葉を聞いた男は急に無表情になると、黙り込んだ。

そして数秒後、再び口を開く。


『貴様、その言葉をすぐに後悔することになるぞ。

 あとで吠え面をかくなよ……フフッ、クハハハハ!!』


俺は男をスルーすると、そのまま扉の先にある階段を下っていった。

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