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【朗報】ボッキマン、人生相談に答えていた その④

俺は近くの地面に突き刺さっているトゲを観察する。


先ほどカフェの壁に刺さっていたトゲと比べると、成長が遅いのか肉の柱はまだ形成されていない。


(日光に弱いのか?それとも栄養源が違うのか?)


近づいてよく見てみるとトゲの先端には小さな穴が開いていてそこから黄色い汁が滲み出ている。これが何なのかはよく分からないが、とにかくまずトゲを引き抜いて回収するしかないだろう。


俺はトゲを引き抜こうとそっと近づき、屈み込んだ。だが次の瞬間、足元が大きく揺れ俺は転んでしまう。


何事かと思って見ると、すぐ足元にデカいカボチャのような巨大な肉の塊がある。

どうやらこいつが俺のことを転ばせたらしい。

しかしこれってあのトゲが地中に根を張ったものなのだろうか、地面にトゲが刺さってから一分も経ってない。壁に根が張っていた時よりも成長が早いんじゃないか。


周囲の連中の様子を見てみる。誰もこちら見ていないようだが、念のためなるべく目立たないように行動しよう。まずは肉の塊だが、こいつを放置しておくと新たに肉の柱になると見て間違いないだろう。


さっきから神代が必死になって攻撃しているせいでトゲがばら撒かれて、あちこちに肉の柱ができつつある。……あいつは肉の柱を止めたいんだろうが、そのせいで被害が大きくなっている。


そんな事を考えていると、また地面が揺れ、バランスを崩してしまいそうになる。


足元の肉の塊がどんどん大きくなってきているのだ。

さっき見た時から30秒も経っていないが、倍近くの大きさへと成長している。こいつらは何から栄養を得て、こんなにも急激に成長したり大きくなったりするんだろう。


観察をしていると目の前の肉の塊に、肉の柱から飛んできたトゲが突き刺さる。

すると肉の塊はビクンと震えたかと思うと、全身がぶよぶよと波打ち始めた。


「うわっ!」

思わず声を上げると周囲の何人かが一斉にこちらを振り向く。彼らは肉の塊を見て一瞬驚いた顔をしていたが、すぐに興味を失ったらしく視線を逸らした。


(いやいや、お前ら少しは気にしろって! )

俺は心の中でツッコミを入れるもその間に肉の塊はどんどん膨張し続けていた。


一方で突き刺さったトゲの方は肉の塊に根を張り、そして両者は絡み合うように一体化していく。これはもう見ている場合ではないだろう。俺は腕に力を込め、無敵の拳を肉の塊に打ち込んでやる。


拳は何の手応えもなく肉の塊にめり込み、拳により穿たれた穴からは、悪臭と共に黄色っぽい液体が噴き出した。

そして肉の塊は生命活動を停止したかのようにくすんだピンク色へと変色し、腐敗臭と黄色い液体をまき散らしながらぐずぐずと崩れ始めた。


「うぐぉおぉ……」

肉の塊が崩れ落ちると同時に俺は苦悶の声を上げる。


問題なく肉の塊が倒せたことよりも、死ぬ際に発せられた悪臭でダメージを受けてしまった。周囲にいた見物人もあまりの臭いに鼻を手で覆っている。いやもうさっさと逃げて欲しい。


この調子で周囲のトゲを回収しなきゃいけないのか。勘弁してくれ。


◆ ◆ ◆ ◆ ◆


神代は相変わらず瓦礫や地面に突き刺さったトゲを肉の柱に向かって投げつけている。ただあまり効果的ではないのか、彼女が暴れまわるたびに周囲にはトゲが増えていく一方だ。神代は善意でやってるんだろうが、もう笑うしかない。


今こうして見ている間にも一本のトゲが俺の足元に突き刺さっていた。それを引き抜き、握り潰しながら俺は周囲を見回す。予想通り、あちこちに肉の柱が形成されつつあって、それがまたトゲを生み出している。


この状況でどうやって回収すればいいんだよ……。


肉の柱が出現してからおよそ3分でこれだ。このままだと、あっという間に街中に肉の柱が出来てしまうだろう。そうなったらお手上げかもしれない。


「没木さん!」

神代がこちらを見て大声を張り上げる。

「まだ回収していなかったんですか!?早くしないと!」

彼女はそう言いながら肉の柱に向けて瓦礫を投げつける。


「(だからそんなことしたって終わらないんだよ……)」

俺が心の中でぼやきながら地面からトゲを引き抜くと、周囲から驚くような声が上がった。


「それって引き抜けるものなんですか?!」

何人かの野次馬が驚いた顔で俺を見つめてくる。まるで怪物を見るような目つきだ。


「いやあの……なんか引っこ抜けたんだけど、

 でも危ないから逃げた方がいいかも……」

俺は戸惑いながらもトゲを握り締める。

トゲは簡単に潰れ、指の間から漏れ出た汁が手を伝って地面へと滴り落ちる。彼らはそんな俺の様子をどこか不安げに伺っていた。


俺は苦笑しながら手についた汁を振り払うと、改めて周囲を見回す。肉の柱があちこちに生えていて、人々はパニックに陥り始めている。いやもう逃げろよマジで。

こいつら何考えてるんだろう。


「あの、これってどうしたら止められますか?」

近くにいた若い男が困惑した様子で俺に声をかけてくる。

「え?いや……わかんないけど……とりあえず危ないから近づかないほうが」

「はあ……」

男が困った表情を浮かべたその時、悲鳴が聞こえた。


振り返ると一人のおっさんが手を抑えてうずくまっている。手のひらの皮膚は裂け、そこから黄色い膿のようなものが染み出ていた。

彼の足元にはトゲが転がっている。トゲを引き抜こうとして怪我をしたようだ。どうやらトゲから出ている黄色い液はかなり危険なものらしい。


「あの、さっきのトゲって……大丈夫だったんですか?」

若い男が俺に恐る恐る聞いてくる。

「うーん、俺が抜いたトゲはたまたま当たりだったんだろ。

 それより早く逃げた方がいいぞ。多分この辺にもトゲが刺さってるから……」

そう言って周囲を見回していると、一人の女性が悲鳴を上げた。


見ると彼女の足をトゲが掠めたようで、その傷口からは血が溢れ出していた。周りの人間が彼女に駆け寄ろうとすると、突然地面が爆発し、土煙が辺り一面を覆う。新たな肉の柱が誕生したのだ。


流石にこの状況に危機感を覚えたのか、周囲の人間は我先にと逃げ出し始める。

だが目の前の若い男は何か考え事をしているようで逃げようとしない。なんなんだコイツは。

「おい、あんたも逃げようぜ。もうすぐここも危険になるぞ」

俺が声をかけると彼はハッとしたようにこちらを向く。そして少し考えた後、口を開いた。


「すみません、僕も手伝いたいなって思って。こんな状況だし……」

「いや、手伝いたいなら、あの怪我した女の人を抱えて逃げてくれよ。

 ロマンスがスタートするかもしれないだろ?」

俺がそう言うと、彼は困ったような顔で首を縦に振り走り出した。

よしよし、これでいい。みんなさっさと逃げてくれるといいのだが。


その時、空から轟音が響いてきた。ようやく治安部隊のおでましのようだ。

「遅せーよバカ!」

思わず愚痴ってしまう。まあ10分もかからず来たのは褒めるべきなんだろうけどな。


鎧のような防護服、通称EXOエグゾスーツに身を包んだ大男たちがヘリからどかどかと降りてくる。


「皆さん!落ち着いて避難してください!慌てる必要はありません!

 我々が安全な場所へ誘導いたします!」


リーダーらしき人物が声を張り上げる。野次馬たちは安堵の息を漏らしながら彼に付いて行く。連中のおかげで何とかなりそうだ。


神代を連れて俺もさっさとここから離れよう。


俺が神代の方を見ると、彼女は飽きもせず超能力で瓦礫を投げつけていた。

「神代さん!そろそろ逃げましょうよ!」

神代を興奮させないように言葉を選んで呼び掛ける。


「没木さん!?大丈夫ですよ!

 もう少しで倒せるはずですから!そうしたら一緒にここから離れましょう!」

神代は振り返りながら笑顔で言う。


倒すとかじゃねーよ!いい加減にしろよ!

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