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異世界最強の農家様 〜俺は『農家』であって魔王じゃねえ!〜  作者: 農民ヤズー


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聖国行きについて

 

「で、どういうつもり——」

「ヴェスナーちゃん! どう言うつもりなの!? 聖国に行くって……危険なのよ!」

「母さん……」


 勇者達が一旦帰った後、親父は俺に向かって話しかけてきたが、それを玉座脇の通路から走ってきた母さんが抱きついてきながら遮った。


「危険なのはわかってるよ。でも、聖樹に関することなら一度は様子を見ておかないといけないんだ。解決できるにしても、できないにしてもな。もしここで様子を見ないでフローラに同じことが起こったら、この国は死ぬことになるんだ。だから、まだよその国で起こっているうちに何がどうなっているのかを知っておかなくちゃいけない。それが王様としての俺の役割だと思ってる」


 今回のことは、聖樹が切り倒された影響が今になって出てきたんだろう、と思っている。けど、それは俺がそう思っているだけで、実際には何か違うかも知れない。

 もし違うのであれば、今回の異変がフローラにも出てこないとも限らない。そうなったら、その時になってから対処を考えるのでは遅いのだ。今のうち……まだ他所の出来事として見ていられるうちに解決方法のかけらでも見つけておかないと。


「でも……危ないの……。危ないかも知れない、じゃなくて、本当にあなたを狙っている者がいるのよ。それも、個人ではなく、国という大きな集団で」


 わかっている。それでも、俺は行きたいと……いや、行かなければならないと思っている。

 それがこの国を守ることに繋がるし、それが王様としての俺の役目だと思っているから。


 もちろん、それは俺の考えだし、まだまだ王様として抜けているところもあるから、この考えはダメかも知れない。だからここにいるみんながダメだというようなら、俺も諦めるつもりではいるけど。

 それでも、多少の反対なら行くつもりだし、できることならみんなには賛成してもらいたい。


「じゃあ、私も行くわ! 何があっても守ってあげる!」


 俺が考えを変えないのを理解したのか、母さんはそんな風に意気込んでみせた。

 でも……


「いや、それはちょっと……だめじゃないか?」

「どうして? 私のことが嫌いなの……?」

「そういうわけじゃないけど……母さんって一応カラカス所属じゃなくて、まだ王国所属だろ? 少なくとも、表向きは王国からの出向ってことになってるんだ。そんな母さんをよその国へ連れて行くってのはできない」

「でもぉ……ならこの人を連れて行ってちょうだい! それなら、なにが襲ってきても大丈夫だから」


 半分くらい泣きが入ってきている状態で母さんは親父のことを指差しながら言った。

 でも、それもだめだ。


「それもできない。親父を連れて行けば、確かに俺の危険って意味では問題ないと思う。でも、そうするとこの国の守りが薄くなる。俺も親父もいない間にこの街が誰か……魔王やドラゴンや巨人なんてのと戦うことになったら、って考えると、安心して外に出てなんていられない」


 もしかしたら、ではあるし、ほぼ確実に来ないだろう。

 でも、絶対じゃない。

 俺や親父がいない間に他国が攻めてくる可能性もあるし、なんだったら特殊部隊とか送り込んでくるかも知れない。そいつらは、俺を脅すために俺の大事なものを狙ってくる可能性だって考えられる。その時、母さんを守れる者がいなくなるのは困るんだ。

 だが、親父がいれば何があっても守ってくれるだろう。俺のために、ではなく、何よりも自分のために。何せ、自分の妻なんだから。


「リエータ。それ以上はこいつの邪魔になる。親なんだ。心配するなとは言わねえが、進むのを邪魔しちゃなんねえ」

「……そう、ね。そうよね……。ごめんなさい」


 はっきりと伝えられた親父の言葉に、母さんは気落ちした様子を見せてからトボトボと部屋を出ていき、親父は一旦こちらに目配せをしてから母さんの後を追っていった。


「——で、どうする?」


 その場に残っている婆さんとエドワルドはどうするのか、どう考えているのか問いかけてみたんだが、できることならこの二人にも賛成してほしいと思っている。


「どうするも何も、坊の中ではもう行くことが決まってんだろう?」

「まあ、そうだな。様子を見たいってのも確かだけど、フローラが行きたいっていうし」

「危険に突っ込んでいく理由がそんなものですか。呆れますね。もっとも、それができるだけの力を持っているのですからタチが悪い」


 エドワルドは俺が口にした理由を聞いて、呆れたように肩を竦めている。


「あんたは反対なのか?」

「自国の王を敵国に送り込む、と考えれば誰だって反対でしょう。——ですが、良いのではありませんか?」

「いいのか」

「ええ。その方が私の——失礼。私〝達〟の利益になりますので」


 今こいつ「私の利益」って言おうとしたな。まあ、それが結果的に国のためになってるんだからそれはそれで構わないけどさ。


「なら賛成ってことでいいんだな。……でも向かうにしても、流石に一人で、ってわけにはいかないよな?」

「当たり前だろう? 坊だけで行ったら、なめられるどころの話じゃないよ」

「そうですね。交渉を行う使節団に護衛。それからあなたを含め全体の世話をする者が必要になりますが、一国の王が出向くことを考えると、最低でも三百は欲しいですね」

「三百……そんなにいるか?」


 正直、そんな大所帯になるとは思っていなかった。連れて行くのは数十人……精々が百とかそれくらいだと思ってたんだけど、三倍か……。


「これでも少なくした方です。何せ、国王が他国に出向くんですよ? それも、敵対していると言っても過言ではない国に。護衛だけでも千はいてもおかしくない状況ですが、そこはカラカスのメンバーということで個人の力が他所よりも強いため、数を減らすことはできるのです」


 まあ、カラカスの奴らは生き残るために必死になってスキルを鍛えるからな。何せ、孤児なんかは頼れるものがそれしかないんだ。外から流れ込んだ奴らだって、ここで生き延びるのにはかなりの力が必要になるし、逃げてきたような奴なら誰かに追われても生きていられるだけの力が備わっていることになる。

 そんな奴らだから、他の平和な街に比べればはるかに強いだろう。

 他の街では第五位階はかなり上位の強さってことになってるけど、この街では第五位階は割と平凡な強さだ。強いと言えるのは第七位階から。


「もっとも、あまり多過ぎても相手方から文句を言われることになるでしょうから、という理由もありますが。流石に千人も通すつもりはないでしょう」


 聖国からしてみれば、必要なこととはいえ敵対国の武装勢力を千人引き入れるようなもんだしな。しかもその全員が犯罪者。本来ならば一人として入れたくなかっただろうし、その数を減らしたいのは当然の話か。


「まあ、たくさん連れて行くのはわかったけど、人選を任せていいか? 俺は誰連れて行ったらいいか分からないんだけど」

「そんなもの、ちょうど良い人選がそちらにいらっしゃるじゃないですか」


 エドワルドはそう言いながら婆さんのことを指差したが、婆さんが『良い人選』なのか?


「そちらにって……婆さんのことか?」


 見た目的には長距離を移動するのも困難って感じがするんだけど。まあ、基本的に乗り物に乗っての移動だから大丈夫かも知れないけど——って、そういえば婆さんは〝婆さん〟じゃなかったんだったな。なら、大丈夫か?


「ええ。忘れているかも知れませんが、カルメナさんは『外務大臣』ですよ。適役と言って差し支えないかと。むしろ、この場で出なければなんの意味があるのか、となりますね」

「そうだねえ。普段は色々と他の部署を手伝ったりはしてるけど、それだってほんのちょっとのことさ。坊やエド坊みたいに上役としてまともに仕事をしてるのかって言ったら、そんな大したことはしちゃあいないね。ああ、最近はあんたの母親の茶飲み相手をしてるか。あれだって一応は『友好の使者』ってことになってるわけだし、外務の一環と言えなくもないだろ? でもまあ、仕事と言ったらそんなもんだね」


 あー、そういえばそんな感じの役割だった気がする。

 この国あんまり他国と繋がりないし、外務大臣の仕事なんて精々がリリアの故郷に出向いてレーレーネと話をしたり、ザヴィートからやってくる使者の相手をしたりってくらいなものだ。

 でも、それだと暇だからってことで、後は他の部署に顔を出してなんかやってる、って感じなのが今の婆さんの状態。後は自分の根城に戻ってなんかやってるみたいだけど、そうしていられるくらいには暇だってことだ。


「なるほどな。でも、それはわかったけど、あんたはいいのか? 商談もすることになるんだし、そうなったらあんたの分野じゃないか?」


 婆さんがくるのはいいんだけど、俺としてはエドワルドの方が行きたそうなんじゃないかと思える。だって今回は食料に関して売買の話をするだろうし、金が関わってくる。こいつが参加したくないわけがない。

 もっとも、実際にそうされると、婆さんとエドワルドの二人がいなくなることになるのでちょっと困るけど。どちらかには残っていてもらいたい。


「そうですね。正直なところ直接言って話をしたいところではありますが、いかんせん私には力がない」

「力?」

「ええ、そうです。おそらくは向こうで何かしらの危険に遭遇することになるでしょうけれど、私にはそれを生き延びられるという確信が持てるほどの力がありません」

「でも、あんたボスだったじゃないか。親父や俺たちには劣るとしても、それなりに戦えるだろ?」


 こいつは他のボス達よりも力がなく、力よりも金で成り上がったのは知っていたが、それでもカラカスの一区画をまとめ上げていたボスの一人だ。全く力がないなんてことはありえない。もしこいつに力がないんだったら、金なんて奪われておしまいだからな。

 だから、最低でも第七位階が徒党を組んで襲ってきても撃退するだけの力があるはずだ。


 だが、エドワルドは俺の言葉に首を横に振った。


「わかっていませんね。私の強みとは、金を使って無数の武器防具、魔法道具を揃え、傭兵を用意することです。拠点防衛に関しては役に立ちますが、今回のように遠くへ行くとなると……。ましてや今回は敵国です。連れて行くにしてもさほど多くは連れて行くことはできないでしょうし、私の戦力はガタ落ちです。そんな状況で行けば、私が死ぬ可能性がありますので、それは認められません」

「なるほど、人数か。数の暴力で押しつぶすのか。それじゃあ厳しいわけだ」


 今回は他国に行くために、そんな余分な者を連れて行くことはできない。そのため、いくら魔法具があったとしても、十全に活用することができずに終わってしまう可能性は十分にある。


「加えて、今回はカルメナさんの能力が役に立つでしょう」

「婆さんのって……魅了か?」

「ええ。聖国の者を魅了していただければ、食料に関しての交渉はうまく行くでしょうし、その後は密偵として使えますから。そして、何かあった際の歯止め役としても使えるかもしれません」


 確かに、魅了してしまえば交渉も何もあったもんじゃないしな。多分向こうだって対策を立てているだろうけど、その辺は婆さんも年の功というものがあるだろうし、うまくやるだろう。


「情報集めを坊の能力に頼ってばかりってのもアレだからねえ。今回みたいなことがあった時には情報が入らなくなるし、ここらで別の手段を用意してもいいだろう?」

「でも、もう潜入してるやついるよな?」


 俺たちが向こうの情報を知ることができているのは、そいつらが教えてくれているからだ。

 そしてさらには今回の報告を受けて増員もしたし、情報集めはそいつらに任せておけばいいんじゃないだろうか?


「いますね。ですが、それはあくまでも一般信徒として、あるいは協力者に過ぎません。こちらの都合よく動かせる上層部の人間はいません」


 あー……なるほど。確かにこっちから送り込んだって言っても、聖国の上層部にまで食い込めているのかと言ったら、そうでもない。

 エドワルドの場合は個人的な繋がりがありそうだけど、それだって都合よくなんでもいうことを聞いてくれる感じではなく、お互いに利用し合うような金や利益で繋がっている関係のはずだ。


 そんなんだから、ここいらで上層部で『使える奴』を用意しておくのもありだろう。


「じゃあまあ、なら人選に関しては任せる。適当に用意しておいてくれ」


 そんなわけで俺が聖国に行くことが決まり、後は三日後にもう一度ある勇者との話し合いまで待っているだけだな。


 ……せっかくだし、暇つぶしに——いや安全のために勇者達の監視でもしておくかな?


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