↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
77/163

076.家事スキル判定!~前編~

ほんの少しの、羽休め


「それでは~! 第一回、慎さんの家事品評会を開催します!!」


 ドンドンパフパフー!と1人盛り上がっている雫の周りで、いつもの女性陣3人が拍手をしながら苦笑いをしている。

 俺は呆気にとられながらも必死に先程の言葉を咀嚼するよう努力する。


「………これはどういう状況?」


 ダメだ、頭が回らない、今の状況で言葉を理解するのは残念ながら失敗に終わった。諦めて声の発生源に聞き返す。


「はい!先程言ったタイトルの通り、今日は慎さんの家事スキルの見極めを行います!!」

「家事スキル……?」


 家事スキルというと炊事洗濯掃除だよね……?なぜ今更……?


「そうです!以前体育祭の日、慎さんは洗濯ネットの存在すら知らなかったじゃないですか… と、いうことで慎さんが今どのくらいの家事スキルを持っているか判断をしようということです!」


 彼女の説明によりだんだんと頭が回り始めるのを実感する。

 ……なるほど、雫の言っている意図は理解できた。俺が一人暮らしするにあたってきちんとそのスキルを持っているか気になったのだろう。でも今まで問題なく過ごしてこれたし問題ないと思うのだが。

 しかし、それをするにあたって一つ問題がある。



「とりあえず、雫のやりたいことは解ったしその見極めとやらも了解した。………でも、いくら何だって寝起き一発目にそれをいうことかな!?」



 そう、時刻は午前8時。休みの人によってはまだ夢の中の人も少なくない時間帯だろう。

 5日ほど前から久しぶりに帰っている母に家事を任せて俺も惰眠を貪ろうと思っていた。そんなさなか雫に叩き起こされ、目を開くと女性陣4人に加えて紗也の5人によって俺のベッドが囲まれていた。

 そんな光景に驚愕している時の第一声がアレである。頭が回らないのも当然のことだろう。



「ごめんね、慎也くん。こんな朝早くから……」

「いや、全然いいんだけど……よくこんな朝早くから家入ることができたね」


 俺は優愛さんを安心させてから若干眠そうにしている紗也に目を向ける。紗也は結構朝が弱いタイプだ。それも朝から友達と遊ぶのを嫌がるレベルで。

 俺が寝ている間に家に上がれたということは母か紗也が家に入れたのは明白。更に緊急時でもない今日、優愛さんらがいきなり訪問することも考えにくいだろう。つまり彼女たちは事前に紗也か母に了解を得て入ったと考えるのが自然となる。


「ん……紗也と頑張って交渉した」


 そう補足してくれる翔子さん。 おかしいな……翔子さんと雫は紗也と面識なかったはずだけど……。


「お兄ちゃん………」

「あっ、ごめんな紗也、朝弱いのにこんなに大勢で……」

「ううん、いいの。私が頼んだことだか…ら………」


 ポスン、と眠気が限界に達した紗也は俺に抱きつくような形で眠りの世界に旅立ってしまう。俺はそれを受け止め布団を掛けてから彼女たちと向き直った。


「それで……紗也が言うには自分で頼んだことらしいけど?」

「そこらへんについては私が説明するわ」


 俺の前に優衣佳さんが立ちふさがった。



 優衣佳さんの説明によるとこうだ。

 まず初めて会ったあの日、いつの間にか紗也と連絡先の交換をしていた優愛さんが4人のいるグループに招待して翔子さんと雫とも知り合った。

 そして昨日5人で買い物に行った際に紗也からこんな言葉が出てきたそうだ。「いままでずっと家事してこなかったお兄ちゃんが一人暮らしするのが心配でたまらない―――」と。

 そこで俺の家事スキルを抜き打ちで診ようという話になり、イタズラ好きの雫が「それなら朝からの様子を確認したい」と言いだしたそうだ。

 ここで紗也は朝からは難しいと一度は断ったそうだが交渉の結果、今ここに繋がるという話だった。



「………このことを母さんは?」

「もちろんご承知の上よ。むしろ慎也君の事を心配していたみたいね、凄い乗り気だったわ」

「あーーー…………なるほど」


 4月に何度も電話を掛けてきていた母だ。ノリノリで了承するのも簡単に想像がつく。


「慎也くん……迷惑だった……かな?」


 ベッドに腰掛けている俺に目線を合わせて不安そうにする優愛さん。俺は彼女の頭に手を乗せて答える。


「ふぁっ………」

「ううん。ありがとう、心配してくれて。紗也も母さんも心配してたみたいだし大丈夫だってことを見せつけないとね」

「うん。 私も、ありがとう……えへへぇ……」


 俺もまだ寝ぼけているのだろうか。普段なら恥ずかしいとおもうような行動も今なら何でもできる気がする。

 俺は赤くなっている優愛さんを微笑ましく思いつつ雫に顔を向けた。


「それで雫。俺はこれから一通りの家事をすればいいの?」

「…………」

「…雫?」

「……あっ!はい!そのとおりです! 慎さんの御母上には妹さんの2人分の朝ごはんしか作ってもらってないので、慎さんは自分の朝食・洗濯・掃除をお願いします!!」


 何やらボーッとしていた雫が慌てたように解説する。

 なるほど、つまりいつもどおり1人の時の行動をしろということか。これなら簡単に合格点が貰えそうだ。


「わかった。それじゃあ早いとこ始めなきゃだね」

「あっ……」

「あ……あの!!」

「ん?」


 俺が優愛さんから手を離して家事に取り掛かろうとしたところで雫に呼び止められる。優愛さんから名残惜しそうな声が聞こえるも俺は心を鬼にして聞かなかったことにする。


「私も後でいいので……優愛先輩みたいに頭をなでて……もらえます、か?」


 雫は手を自身の胸の前にやり上目遣いになりながら問いかける。

 ………やはり俺は寝ぼけているのだろう。その要望に答えるかのようにそのまま彼女の頭に手を伸ばし、雫の顔がパッと明るくなる。


「慎さぁん……!  ……………わ~~!違います!そうじゃぁありません!!」


 ようやく自分の行動と意識が追いついた俺は、照れを隠すのも含めてその伸ばされた手をワシャワシャと乱雑に撫でた。


「………俺が合格点貰えたらね」

「わかりました!慎さん、合格です!!」

「「さん!!」」


 俺が合格を貰えそうになった直後、優衣佳さんと翔子さんから突っ込みが入った。残念だ。







「それで、俺は普通に家事をしたらいいんだよね」


 俺は普段着に着替えるため彼女たちには一旦リビングに行ってもらった後、紗也を部屋まで運んでから最後の確認を行う。


「ええ。それで工程ごとにそれぞれ審査員がつくわ」

「審査員?」


 優衣佳さんが補足説明してくれる。


「料理なら私、洗濯なら翔子さん、掃除なら雫さん…といったようにね。全員から合格を貰えれば終了よ」

「合格………できなかったら?」

「そうね……その時は補修という名のお勉強会かしらね」


 つまり合格を貰えなければ補修か。学校の勉強とは違い生きるために必要なことだからマイナスなイメージは感じない。


「了解。ちなみに、優愛さんは?」


 俺が優愛さんに視線をむけると彼女はその目を逸し、明後日の方を向き始めた。


「………優愛さん?」

「…………」


 俺が問いかけても彼女は目線を合わせようとしない。これは……


「慎也くん、優愛は……味見係」

「あぁ……」

「だから、優愛には期待しないで」


 翔子さんの説明で納得いった。彼女には優衣佳さんがいるし、仕方ないといえば仕方ない。


「うわぁ~ん!お姉ちゃ~ん、翔子ちゃんがいじめる~!」

「はいはい。優愛ももっと家事できるようになりましょうね」


 泣きつく優愛さんを抱きとめる優衣佳さん。うん、良きかな………じゃなくって、優愛さんも料理を勉強してるって聞いたけど全体的にはどうなんだろう。


「優愛さんってそんなに家事ができないの?」

「それはぁ……そのぉ………」


 優愛さんは俺の問いにモジモジしだす。


「優愛は料理はできるようになってきたのよ」

「おぉ、それならいいじゃん!」

「料理はね………未だに自分の部屋は掃除できないし洗濯もまだまだ……採点する立場には程遠いわ」


 優衣佳さんがトドメを刺す。


「雫ちゃぁぁん………」

「今度優愛先輩の家事スキルも診ないといけませんね~……」


 優衣佳さんに裏切られた彼女は今度は雫の元へ。これも良きかな。


「………慎也くん?」

「……おっと……それじゃ、早速はじめますか!みんな、採点よろしく!!」


 翔子さんの蔑むような目を受けた俺はよしっ!と意識を切り替えて彼女たちの前で俺の家事スキルを披露することとした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。