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038.ガールズトーク

別視点です。

 夕食からの入浴後、私たちは各自割り当てられた部屋にて消灯準備をしていた。


「ねぇねぇ、男子の部屋って二段ベッド4つの8人部屋なんだって~!」


 みんなで明日の準備をしていると突然枕を挟んで反対側にいる優愛がそんなことを言いだす。


「女子の4人部屋と比べると随分人口密度が高いわね。それは慎也君から?」

「うん~!大外くんと同じベッドで下段になってんだって~」

「ふふっ。どうせこだわり無いからって言ってそうなってしまったのね。想像ができるわ」


 この2人の男子関係の情報源はほぼそれくらいしかない。慎也くん以外の男子と話しているところをロクに見たことが・・・・・ってあれ?思い返してみたら二人一緒は仕方ないとはいえ、可能な限り慎也くんの側に居続けていない?この姉妹は。


「それでっ!お姉ちゃん!カレーの時のアレはなんだったの!?」

「・・・・・・・・・アレってなんのことかしら?」

「解ってるんでしょ!慎也くんへの〈あーん〉だよっ!!」

「・・・・・・・・・覚えてないわね」

「ウッソだぁ!絶対覚えてるよ~!!」

「あなた達!廊下まで聞こえてるわよ!静かにしなさいっ!!」


 優愛が優衣佳に詰め寄っていると唐突に扉が開いて随伴の保険の先生が現れた。


「ご・・・ごめんなさい」

「話すのは別に構わないけど、もうすぐ消灯だから静かにね。それともここは3人みたいだし私が4人目として寝ようかしら?」

「いえっ!問題ありません!大丈夫です!」

「ふふっ。話しすぎて明日の集合に遅れないようにね」


 先生は「青春ね~」言い残して静かに扉を閉める。先生も私たちとそんなに離れてないハズなのに随分と達観したことを・・・


「優愛・・・」

「翔子ちゃんもごめんね。それでお姉ちゃん、アレは結局なんだったの?」

「ん、私も気になる」

「翔子さんまで・・・あれは、なんていうか、抑えきれなくなったのよ・・・」

「どういうこと?」

「昼にあの人にギュッとされて、それからなんというかフワフワしてて・・・気持ちが抑えきれなくなって・・・もうっ!あとは言わなくてもわかるでしょっ!」


 そう優衣佳は言って布団を頭からかぶってしまった。


「それにしてもお姉ちゃんはあんなに甘やかすタイプだったなんてね~。・・・よしっ!翔子ちゃん、消灯時間過ぎたけど明日の準備できた?」

「えっ、うん」

「それじゃあ・・・・・・・・・これから恋バナを始めますっ!恒例でしょ?」


 優愛は小走りで電気を消して戻って布団をかぶりそんなことを言う。


「恋バナって、私はあの人が好き~とか、言い合う?」

「うんうん!それそれ!」


 このメンバーで恋バナ?


「この3人でそれ、する意味ある?」

「ということはやっぱり、翔子さんも・・・?」


 布団から顔だけ出した優衣佳がそう聞き返す。私はゆっくりと頷いた。


「やっぱりねぇ~、だろうと思った。じゃあ恋バナに戻るけど、翔子ちゃんはいつからなのっ?」

「恋バナは、続けるんだ」

「もっちろん!むしろ好きな人みんな一緒なんてそれこそ盛り上がるよ~!」


 盛り上がる・・・の?

 私は優愛の質問を答える為中学時代を思い出す・・・・・・・・・・あれ、いつから?私が好きになったのは一体どこから?


「わから・・・ない」

「わからないって?」

「好きになった時が、わからない・・・優愛たちみたいな、ドラマみたいな出会いなんてしてない。物語にあるような助け方もされてない。何がきっかけか・・・わからない」


 自分で言ってて混乱してくる。私はなんで好きになったの?いつから好きになったの?そんな思いが堂々巡りして自分で自分の気持ちに自身が持てなくなってくる。こんな気持ちで好きと言っていいの?


「・・・翔子さん、それなら気になったというのはわかるかしら?」

「気になる?」

「そう。ついつい目線で追ってしまうとか、何してるか気になるとか。そういうことに心当たりはあるかしら?」


 優衣佳にそう言われてもう一度思い返す。生徒会に入った時・・・いや、あの時は何も思わなかった。3年に上がって生徒会の作業にも慣れてきた時・・・その時にはもう目で追っていた・・・なら・・・・・・


「あった、かも」

「そう?どんな時だったかしら?」

「授業・・・そう、授業で彼と目が合った。彼は私に笑って手を振ってくれた・・・・・・・その時から、気になるように・・・」


 そうだ。3年に上がる直前の特別授業でクラス合同の授業があった。その中に生徒会で知り合った彼が目に入った。いつもなら一瞥するだけで終わるのだがつい彼と目が合ってしまい、手を振ってくれた時に見たあの笑顔が忘れられなくって・・・・


「そうそうわかるっ!あの目がフニャっとなるのがすっごい良くってね~!」

「優愛、気持ちはわかるけど落ち着きなさい。翔子さん、それも立派なきっかけよ。人を好きになるのにドラマみたいな理由じゃなくってもいいじゃない。人にどうこう言われようが好きな気持ちは誰にも変えられやしないわ」

「・・・ありがとう、優衣佳。経験豊富な恋愛上級者、だね」

「私が、恋愛上級者・・・?」

「翔子ちゃん騙されないでっ!お姉ちゃんは小学校の頃からずっと1人をストーカーまがいのことしてまで好きでいるんだよっ!」

「ちょっと優愛っ!」


 いつも凛としている優衣佳がストーカー?それにずっと1人ってつまり・・・


「ストーカーって・・・?」

「仕方ないわね、いい?これからのことは他言無用よ。もちろんあの人も含めて」

「・・・わかった」



 それから私は2人の過去を知った。血の繋がりがないこと、家族になった後何があったのか、優衣佳の小学時代のことも。

 ひとしきり話し終わった後優愛がスマホの画面を私に見せてくる。


「それでお姉ちゃんが隠し撮った写真がこれっ!」

「ふぉぉぉぉ!!優愛!私にも!!」

「もちろんっ!今送るね~」


 ピロンと私のスマホが鳴るので確認する。私の画面には1人の小学生の姿が。面影は残ってるけど黒髪だし可愛い!!ついつい鼻息が荒くなってしまうのは仕方ない。


「・・・・ありがとう、優愛。優衣佳も、撮ってくれてありがとう」

「えへへ~どういたしまして。私もよく見るんだ~」

「とても不本意だけど、どういたしまして」

「・・・ところで優愛、最初に言った、好きな人が同じだと盛り上がるって・・・なんで?」


 私は最初に感じた違和感について聞いてみることにする。


「へ?そんなにおかしなことだったかな?」

「経験上、好きな人が一緒だと、むしろ嫌悪してる。だから、言い方悪いけど、貴方たち姉妹が仲良くしてることが・・・その・・・」


 相手はライバルなのだから。生徒会をやっていて何度も見てきた。同じ人を取り合う敵、むしろ蹴落とす相手、そうやって仲が崩壊して絶交なんてこともあったから。そして今回は姉妹同士が同じ人を取り合っている。正直仲良くしているのが不思議でならなかった。


「あぁ!それは私とお姉ちゃんの仲を繋いでくれた恩人でもあるからねぇ~。今は同じ人を取り合ってもお姉ちゃんの事も大好きだよ~!」

「はいはいわかったわ。だから優愛は離れなさい」


 優愛が転がって隣にいる優衣佳に抱きつくが適当にあしらわれてる。なら、私は・・・?


「もちろん翔子ちゃんのことも大好きだよっ!なんかね・・・私たちなら同じ人を取り合っても大丈夫だっていう確信があるの・・・。なんの根拠も無いけどねっ!」

「優愛・・・」

「もちろん私も翔子さんのことも大好きよ。それに大丈夫っていう確信も不思議とあるわ。そういう感覚、無いかしら?」

「たしかに・・・ある」


 そんな確信は私も持ってる。2人の発言を妄言と捕らえられない不思議な感覚が。


「それに、他のクラスメイトなら絶対仲良く出来ないけど、私への接し方を見る感じ同じ人を取り合ってる扱いじゃ無いしね~」


 優愛はあっけからんと話す。やだ、意外と策士。


「だから私たち3人は絶対大丈夫よ」

「うん・・・・・でも、多分3人じゃなくて、4人」


 私は優衣佳の言葉に一つ訂正する。これには同じ人を好きになってるという点で確証があった。


「翔子ちゃん、もうひとりって?」

「ん、雫。きっと彼女も、好きだと思う」


 以前教室まで突撃してきた部活動で後輩の彼女。中学時代見てきた限りほとんど確定だ。


「あの子ね・・・私たちはあの日が初対面であんまり知らないのだけれど、そんなに仲が良いのかしら?」

「雫は、私たち3人の誰よりも、彼と一緒にいる時間が長い。彼女が入学して3年に上がるまでの2年間、ずっとベッタリだった」

「それって・・・もしかして元カノってやつじゃ!?」


 優愛が顔を青くしてそう言い出す。


「私も、思った。けど、聞いてみたら違うみたい」

「そっか~。よかったぁ」


 そう言って安堵する表情を見せる優愛と優衣佳。

 段々と思い出してきた。それで牽制も兼ねて彼の後ろの張り付くようになったんだ。今となってはその時に漂ってくる彼の落ち着く香りが目的になってるような・・・


「雫はずっとライバルだったけど、それでも私にとって大好きな後輩」

「・・・私たちとも仲良くできるかしら?」

「もちろん」


 紛れもない本心。雫はとってもいい子。きっと優衣佳も優愛も仲良くできると思う。それがたとえ同じ人を取り合ってても。


「ならさっ!これからゴールデンウィークじゃんっ!だからこういうの考えたんだけどさ・・・」


 優愛が提案した考えを私たちは聞く。それは良いアイデアだ。


「いいと、思う」

「私もいい考えだと思うわ。それじゃあ雫さんへの連絡は翔子さん、任せてもいいかしら」

「ん。任せて」

「それじゃあもういい時間だし、これくらいにして寝ましょうかね」

「は~い!お姉ちゃん、翔子ちゃん、おやすみ~!」

「ええ。翔子さんも、おやすみなさい」

「・・・おやすみ」


 私たちは布団に潜り直して目をつむった。私たちならきっと大丈夫だろう。心の中は晴れやかなまま眠りについた。


この作品はハッピーエンドでありハーレムタグが付いております。(念押し)

次回更新は2日後の26日です。

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