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異聞始末録  作者: 黒サケ缶EX
異聞始末録 欧州道中 異聞あり①
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第二章 夢の記憶



 翌朝、リーヴとサエキはホテルで合流した。


 リーヴはすでに、前日に集めた記録を整理し直していた。目撃者の証言を時刻や場所だけでなく、夢に関する内容でも分類している。


「今日は、夢についてもう一度確認するつもりよ」


 彼女は資料を並べた。


「昨日までは、夢を見たかどうかを中心に聞いていた。でも、それだけじゃ不十分かもしれないと思って」


「夢を見たことと、夢を覚えていることは別だからな」


「そう。夢を見ても、目が覚めたときには忘れてしまうことがある。反対に、内容をはっきり覚えていることもあるわ」


 リーヴは記録の一部を指した。


「まずは、目撃した人と、目撃していない人の証言を比べる。夢の記憶が残っているかどうかを、できるだけ正確に確認したいの」


「いいと思う。最初から結論を決めずに、記録を分けて見たほうがいい」


「ええ。では、始めましょう」


 リーヴはホテルの責任者に協力を求め、前日に話を聞いた宿泊客と従業員のうち、追加の確認が可能な者から聞き取りを行った。


 同じ質問を繰り返すだけではない。目撃した人物の特徴を尋ねる前に、夢の内容を覚えているかを確認する。夢について話した後に、現実で何を見たのかを改めて説明してもらう。


 証言を誘導しないよう、質問の言葉も慎重に選んだ。


 時間はかかった。


 それでも、記録を並べ直すと、見過ごせない傾向が浮かび上がった。


 目撃したと話す者は、夢の内容を何らかの形で覚えていた。夢の中に人影がいたこと、奇妙な姿を見たこと、あるいはその存在に関する印象など、覚えている内容の細かさには差がある。


 一方、夢を見たという記憶そのものが残っていない者からは、目撃証言が得られなかった。


 リーヴは表を見つめ、指先で机を軽く叩いた。


「夢の記憶が、目撃の条件になっている……」


「少なくとも、今回集めた証言はその見方を支持しているな」


 サエキが答えた。


「ええ。もちろん、証言だけで何もかも説明できるわけではない。でも、これだけ傾向がそろうなら、偶然として片づけるべきではないわね」


 リーヴは記録をさらに分類した。


 夢の中で見た存在の姿について、具体的に覚えている者。人影がいたことだけを覚えている者。姿は曖昧でも、奇妙な存在がいたという印象が残っている者。


 証言の細部は一致しない。


 しかし、現実で目撃した姿にも、同じような違いがあった。


「ある人は人間に近い姿だと話している。でも、別の人は翼や尾まで見ている。夢の中で見た姿の記憶が、それぞれ違っているのかもしれない」


「あるいは、夢の中で見たものを、目覚めた後に違う形で思い出している可能性もある」


「そうね。どちらにしても、夢の記憶と目撃された姿には関係がありそう」


 リーヴは端末に仮説を記録した。


 夢の中に現れた存在は、その夢を覚えている人間にだけ、現実でも目撃される。そして、目撃者によって姿が異なるのは、それぞれが覚えている夢の内容と、その存在自身の力が関係しているのではないか。


 ただし、夢の中の存在が、どうやって現実で目撃されるのかはわからない。


 記録からわかるのは、夢と目撃が結びついていることまでだった。


「もう一つ、気になる点があるわ」


 リーヴは別の記録を開いた。


「目撃者は多いのに、直接襲われた人がいない。何かを壊した形跡もない。姿を見せること以外、目立った行動をしていないのよ」


「人間に危害を加えることが目的ではないのかもしれないな」


「あるいは、危害を加えられるほどの力がないのかもしれない」


 リーヴはそう言ってから、少し考えた。


「もちろん、今の段階では両方とも可能性ね。弱いから何もできないのか、何か別の目的があって行動を控えているのか。そこは、実際に確かめる必要があるわ」


「正体がわかっていない以上、警戒は続けたほうがいい」


「同感よ」


 リーヴは資料をまとめた。


 夢の記憶と目撃の関係は、ようやく見えてきた。だが、なぜその存在が人間の夢に現れるのか、何を望んでいるのかは、まだわからない。


 調査は前進した。しかし、答えにたどり着いたわけではなかった。


「目撃情報のあった場所を、もう一度確認しましょう。記録だけでは見えないものもあるかもしれない」


 リーヴは立ち上がった。


 サエキもうなずき、二人はホテルの廊下やロビーを改めて調べ始めた。


 リーヴは目撃地点をひとつずつ確認し、周囲の状況と証言を照らし合わせた。サエキは彼女の調査を妨げない位置から、現場の様子を観察していた。


 それでも、日中の調査で新しい痕跡は見つからなかった。


 怪異が何をしているのか、なぜ現れるのか。手掛かりは、目撃者の記憶の中に偏っている。


 リーヴは端末を閉じた。


「結局、もう一度、現場で確認するしかなさそうね」


「そうだな」


「……こういうとき、解析専門の人が一人でもいれば、もう少し楽なんだけど」


「昨日も同じことを言っていなかったか?」


「言ったわよ。今日も言うわ。明日も必要なら言うつもり」


「それは、ずいぶん根気がいるな」


「人員を増やしてくれない上層部に言うより、あなたに愚痴をこぼすほうが早いもの」


「私に人員を増やす権限はないぞ」


「わかっているわ。だから、愚痴なのよ」


 リーヴは肩をすくめた。


 サエキは小さく笑った。


 その軽口の後、リーヴは再び記録に目を落とした。


 仕事の愚痴を言う余裕はあっても、調査を投げ出すつもりはなかった。


 彼女は、まだ残っている証言の差を見直した。


 夢の記憶が、目撃の条件になっている。


 そして、目撃された存在は、人間に似ていながら、翼と尾を持つことがある。


 この二つをつなぐ何かが、現場にあるはずだった。



その日の夜。


 リーヴは、目撃情報が複数重なっているホテルの廊下を再び訪れた。


 これまでの証言を整理すると、怪異は決まった場所に現れるわけではない。しかし、同じホテルの中で、何度も目撃されている。


 夢の記憶と目撃の関係が正しいのなら、現場で姿を確認することが、次の手掛かりになるかもしれなかった。


 リーヴは端末を確認し、周囲の様子を注意深く観察した。


「ここで間違いないわ。複数の目撃証言が重なっている」


「昼の間に呪法で防御の魔方陣を敷いておいたが、相手の実力がわからないのですぐに距離を取れるようにしておこう」


「ええ。相手の能力がわからない以上、無理に近づく必要はないわ」


 リーヴは、退路と周囲の状況を確認した。


 調査員に必要なのは、危険に飛び込む勇気だけではない。危険がどこにあるのかを把握し、必要ならば退く判断も含めて、事態を管理することだった。


 そのとき、廊下の奥に人影が現れた。


 人間のような輪郭。しかし、背中には不自然な翼があり、身体の後ろには尾のようなものが揺れている。


 人間に似ている。だが、人間ではない。


 リーヴは、即座に聖銀弾入りの銃を構えた。


「……視認できる?」


 リーヴはサエキに確認する。


「できる、だがあれは……」


 サエキはリーヴの聖銀弾の効果がなかった時考慮して、退魔の木剣(短刀)を構える。


 

 人影はただ、二人の方を向いていた。


 リーヴは、その姿を端末に記録しようとした。だが、視線を動かすたびに、輪郭の印象が微妙に変わる。翼の大きさも、顔立ちも、はっきりと定まらない。


 目撃者ごとに姿が異なっていた理由が、少しだけわかった気がした。


「夢の中で見た姿を、そのまま現実に映している……?」


 リーヴはつぶやいた。


 もちろん、目の前の現象だけですべてを断定することはできない。それでも、これまでの証言と、今見ている姿には共通点があった。


 夢の記憶が、目撃される姿に関係している。


 その可能性は、さらに高くなった。


 人影が一歩、こちらへ近づこうとした。


 リーヴは警戒を強めた。


「サエキ、気をつけて。何をするつもりなのか、まだわからないわ」


「わかっている、だがどうやら私の敷いた魔方陣の影響で動けないようだ」


 人影は、リーヴとサエキに近づこうとした。


 だが身動きが取れない。


 そのとき、リーヴは相手の様子に違和感を覚えた。

 「あなたの敷いた術は防御だけではなく、相手の動きも封じる効果があるの?」


 「いや、そんな効果はないが……」


 人影は身動きが取れない。


「何がしたいのかしら?」


 

 その時、人影が叫んだ


「クソがぁぁ!!俺様に何をした!?」


 かすれた声だった。



 リーヴは、サエキと一瞬だけ目を合わせた。


「……何かしたの?」


「……何も」


 サエキはリーヴの問いに戸惑いながら答えた。


「だが、油断できない。動きが取れない内に対処しよう。」


 「そうね、サエキ援護して私が先に仕掛けるわ」


リーヴは掌を人影に向けて魔法を放った。


リーヴの掌から白い光が放たれた。


サエキは直ぐに追撃をするためにリーヴが放った退魔の魔法とは異なる法力を放とうとした。


 「ギェェェェ」


人の声ではない叫び声をあげて人影は消えていった。



「……これで終わりか?」


 サエキが呟いた。



 サエキは周囲を見渡した。


 少なくとも、目の前の異常は収まった。人影が再び姿を現す気配もない。


 リーヴは記録を保存し、端末をしまった。


「ひ、ひとまず、この場は収束と判断するわ。あとは別の目撃されたフロアを調べましょう」


「そうだな、念の為にこの周辺を清めておこう」


「そうね」


 リーヴとサエキは聖水を振りかけていく。


「さぁ、次に行きましょう」


 結論をいえばその後は何もなかった。


 リーヴとサエキはその後も油断せずに慎重に事を運んだ。


 事件はひとまず収束した。


 しかし、夢の中に現れた存在が、現実で何を成し遂げようとしていたのか。その企みが、どこまで実現する可能性を持っていたのか。


 その答えは、二人の手元には残らなかった。


第四章 休暇の終わり


 翌日、リーヴは調査結果をまとめ、必要な報告を終えた。


 目撃証言の食い違い。夢の記憶との関連。現場で確認した怪異の特徴と、現実での干渉能力が限られていたこと。


 確認できた事実と推測を分けて記録したものの、報告書はまだ完成には程遠い。ホテル側との調整も残っていた。念のため、目撃のあった場所には魔除けの護符など、現地で用意できる防護措置を施しておく必要がある。


 ようやく端末から顔を上げたリーヴは、ロビーで待っていたサエキを見つけた。


「待たせたわね。協力してくれてありがとう。おかげで、調査を進められたわ」


「役に立てたならよかった。ところで、仕事が終わったなら、せっかくだし食事でもどうだ?」


 リーヴは一瞬、心底ありがたそうな顔をした。


 だが、すぐに疲れたため息がこぼれる。


「誘ってくれるのはありがたいんだけど……報告書がまだ残っているのよ。それに、ホテルに防護措置を施す手配もしなくちゃならないし」


「食事をする時間もないのか?」


「食事をする時間はあるわ。食事を楽しむ余裕がないだけ」


 リーヴは疲れ切った顔で答えた。


「せっかくポーランド政府から許可をもらって調査に来たのに、最後に残るのは書類と各所への連絡。怪異を追いかけている時間より、端末と向き合っている時間のほうが長いんじゃないかしら」


「それは大変だな」


「他人事みたいに言わないで。あなたは休暇中なんでしょう?」


「だからこそ、せめてコーヒーくらいは付き合える。近くに店があるんだ。オープンサンドもあるらしいし、俺が奢るよ」


 リーヴは少しだけ目を見開いた。


「……いいの?」


「そのくらいならな。報告書は逃げないだろう?」


「残念だけど、逃げないどころか、放っておくと増えるのよ」


「それなら、増える前に一息ついておこう」


 サエキの言葉に、リーヴはとうとう小さく笑った。


「そうね。じゃあ、お言葉に甘えようかしら。コーヒーとオープンサンドで、もうひと頑張りできるかもしれないし」


「その意気だ」


「でも、遠慮はしないわよ。こっちは人手不足で働き詰めなんだから」


「最初から一杯だけとは言っていないさ」


「言ったわね。覚えておくわ」


 リーヴは、先ほどまでの疲れた顔にほんの少しだけ活気を取り戻した。


 店では、二人はコーヒーとオープンサンドを前に、他愛のない話をした。


 サエキがワルシャワの街並みを見て回ったこと。観光客で賑わう場所と、少し路地に入っただけで雰囲気が変わること。リーヴが仕事の合間に見かけた店の話をすると、サエキは「休暇なら、そういう場所を見つけるのも楽しみの一つだな」と応じた。


「あなた、本当に休暇を満喫しているのね」


「まあな。予定どおりとはいかなかったが」


「それは悪かったわね」


「気にしなくていい。こうしてコーヒーを飲む時間もできた」


「そう言ってもらえると助かるわ。……次に会うときは、せめて仕事の話をしなくて済むといいんだけど」


「それはお互いさまだな」


 二人は笑った。


 ほんの短い休憩だったが、リーヴにとっては久しぶりに仕事から意識を離せる時間だった。


 店を出て歩き始めたところで、リーヴはふとサエキの足元に目を落とした。


 靴には汚れがこびりつき、服にも現場でついたらしい汚れが残っている。昨夜の一件でついたものだろう。


「あ……ごめんなさい。あなたの服も靴も、すっかり汚してしまったわね。休暇中なのに、余計な手間をかけさせてしまったわ」


「これくらいなら問題ない。ホテルのバトラーに頼めば、きれいにしてもらえるだろう」


「バトラー?」


 リーヴが聞き返した。


「ええと……あなた、どこのホテルに泊まっているの?」


 サエキが宿泊先を告げると、リーヴはぴたりと足を止めた。


 そこはワルシャワでも指折りの最高級ホテルだった。しかも、サエキが泊まっているのはスイートルームだという。


「……へえ」


 リーヴはサエキを見上げた。目元には、隠しきれない恨めしさが浮かんでいる。


「随分と景気がいいのね。こっちは人手不足で一人きりの出張、宿泊先といえば仕事の都合で選んだホテル。あなたは休暇で来て、スイートルームに泊まって、バトラーに服まで任せられる、と」


「並べてみると、ずいぶんな違いだな」


「感心している場合?」


「いや、リーヴもたまには休暇を取ったほうがいいと思ってな」


「休暇を取れるなら、とっくに取っているわよ」


 即答だった。


 サエキは苦笑した。


「それもそうか」


「……別に、あなたが贅沢をしていることに文句があるわけじゃないの。休暇なんだから、好きに過ごせばいいと思うわ」


「そうか」


「ただ、今の私には少しばかり眩しいだけ」


「なら、次に休暇が取れたときの参考にすればいい」


「参考にするには、まず休暇を取るための人員が必要なのよ」


 リーヴは肩を落とした。それから、わずかに口元を緩める。


「まあ、今日はコーヒーをご馳走になったし、これ以上は言わないでおくわ」


「助かるよ」


「その代わり、次に会ったときもご馳走してもらおうかしら」


「次も休暇中に会えたらな」


「私は仕事中かもしれないわね」


「そのときは、またコーヒーくらいなら付き合うさ」


「……本当に、気楽な人ね」


 呆れたように言いながらも、リーヴの表情は先ほどより幾分和らいでいた。


 やがて二人は別れた。


 サエキは休暇の続きを過ごすため、宿泊先へ向かう。リーヴは端末を取り出し、残っている報告と防護措置の手配を確認した。


 目の前には、まだ片づけるべき仕事が山ほどある。


「……さて。もうひと頑張りね」


 リーヴは小さく息を吐き、再び歩き出した。


 夢に現れた悪魔が何を望み、現世に足場を築こうとしていたのか。その答えは、まだ出ていない。


 それでも、今回の事件はひとまず収束した。


 そしてリーヴには、次の事件が来る前に、今度こそ報告書を片づけるという、目の前の仕事が残されていた。


異聞始末録 特別編   リーヴの手記


今回の事案について、確認できた内容を記録しておく。


ワルシャワ市内のホテルで目撃された人影は、通常の人間とは異なる特徴を備えていた。目撃者によって証言に差があり、翼や尾の有無、姿形も一致していない。


調査を進めた結果、奇妙な夢を見たことそのものよりも、その夢を覚えているかどうかが、目撃の有無に関係している可能性が浮かび上がった。ただし、夢の記憶がどのように現実での目撃につながるのか、仕組みまでは特定できていない。


対象は現実世界での力が極めて弱く、こちらの防御を突破することもできなかった。最終的には退けることができたものの、あれが何を目的としていたのか、現実に足場を築こうとしていたのかについては、確かな結論が出ていない。


……報告書なら、ここまでで十分だろう。


問題は、この程度の事案でも、報告書は報告書として書かなければならないことだ。しかも、調査が終わったからといって仕事が終わるわけではない。記録をまとめ、関係各所に提出し、ホテルの安全を確保するための防護措置も手配しなければならない。


現地の協力を得られたことには感謝している。ポーランド政府からの許可もあった。だからこそ、こちらも責任を持って対応する必要がある。必要なのは理解している。理解はしているのだが……。


どうして、こういう案件に限って人手が足りないのだろう。


EURO-Aは欧州各地の怪異に対応するための組織だ。国境を越えた事案に対処する以上、各国の機関との調整が必要なのもわかる。現地の事情や面子があることも、頭では理解している。


それでも、せめてもう一人くらい調査員を回してくれてもよかったのではないか。現場の確認から聞き取り、情報の整理、仮説の検討、報告書の作成まで、ほとんど一人でこなすことになるとは思わなかった。


……いや、サエキが手を貸してくれたのは助かった。彼の視点がなければ、夢を見たことと、その夢を覚えていることを分けて考えるのに、もう少し時間がかかっていたかもしれない。


もっとも、彼は休暇中だった。偶然会った知人に仕事を手伝わせたのだから、こちらが文句を言える立場でもない。


それにしても、仕事が終わったあとに食事へ誘った彼が、私の返事を聞くなりコーヒーとオープンサンドを奢ると言い出したときは、正直ありがたかった。おかげで、ようやく一息つくことができた。


……その後、彼の宿泊先を聞いて、少しばかり気分が変わったのだが。


ワルシャワでも最高級のホテルのスイート。しかも、服や靴の汚れはバトラーに頼めば問題ないという。


随分と景気がいい。


こちらは人手不足の現場で走り回り、夢と現実の境目を調べ、怪異を退けたあとも報告書とホテルの防護措置に追われているというのに、彼は休暇を満喫している。いや、もちろん彼が自分の金でどこに泊まろうと自由だ。わかっている。わかっているとも。


ただ、同じ仕事をしてきた知人が、片や高級ホテルのスイートで休み、片や書類の山を前にしていると思うと、多少は言いたくもなる。


次に会うときは、もう少し余裕のある状況で会いたいものだ。できれば、こちらが仕事を片づけている間に、彼だけが優雅に休暇を楽しんでいるような状況ではなく。


さて、愚痴はここまでにして、残りの仕事に戻ろう。


今回の事案はひとまず収束した。だが、対象が何を望んでいたのか、現実にどこまで干渉できたのかは、まだ確かなことが言えない。


あれは本当に、ただ夢にしがみつくことしかできない存在だったのだろうか。





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