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君だけだった〜今も君の歌を探している〜短編集  作者: Wataru


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5/7

D-SOUNDS 1/2

解散後。


秀治と玲は、D-SOUNDS 1/2というライブをやることになった。


ボーカルとベースは代役。


知り合いのミュージシャンに頼んだ。


リハーサルスタジオ。


哲也の歌が終わる。


玲は腕を組んだまま黙っていた。


「……もう一回いい?」


「うん」


哲也が頷く。


演奏が始まる。


歌が入る。


玲は首を傾げた。


「……そこ、もう少し高くできる?」


「わかった」


哲也は歌い直す。


でも。


違う。


「ごめん。もう一回」


哲也は困ったように笑う。


「了解」


三回目。


四回目。


五回目。


「……何か」


玲が言いかけてやめる。


スタジオの空気が少し重くなる。


見かねた秀治が立ち上がった。


「ちょっと休憩しようよ」


玲を見る。


「な?」


玲はしばらく黙っていたが、


「……わかった」


短く答えた。


ーー


喫煙所。


秀治は缶コーヒーを開ける。


玲は煙草に火をつけた。


しばらく沈黙。


やがて秀治が言う。


「……玲、変じゃね?」


「何が」


「何がじゃねーよ」


秀治は苦笑する。


「哲也、別に下手じゃないじゃん」


「……うん」


「なのに何回やらせんの」


玲は煙を吐く。


答えない。


秀治は続けた。


「何か違うんだよ、じゃ説明になってねーし」


玲は少しだけ眉を寄せた。


「……何か、違うんだよ」


「だから」


秀治はため息をつく。


「アイツは奏じゃないんだから、違うに決まってんじゃん」


玲の動きが止まる。


「……そうだけど」


「そうだけどじゃねーよ」


秀治は笑う。


「お前さ」


コーヒーを飲んだ後言った。


「奏の声探してるんだろ」


玲はすぐに首を振る。


「……探してない」


「へー」


「探してない」


少しだけ強い口調。


秀治はそれ以上言わなかった。


飲み終わった缶をゴミ箱に捨てる。


「とにかく、そういうことだから」


立ち上がる。


「頭冷やせよ」


そう言ってスタジオへ戻っていった。


ーー


一人になる。


玲は煙草を見つめた。


細い煙が、


ゆっくり空へ溶けていく。


……探してなんか。


そう思う。


思うのに。


耳の奥で。


歌声が聞こえた。


『誰よりも愛している』


昔のスタジオ。


マイクの前で歌う奏。


目を閉じて。


少しだけ苦しそうに。


でも幸せそうに。


歌っていた。


玲は目を閉じる。


煙草を吸う。


肺の奥が熱い。


……探してなんかない。


そう呟く。


だけど。


哲也じゃなく。


奏だったら。


こう歌う。


こう笑う。


この曲のここで、俺と目を合わせる。


気づけば。


そんなことばかり考えていた。


秀治の言葉が頭をよぎる。


『奏の声探してるんだろ』


違う。


そんなわけない。


もう終わったんだ。


何年も前に。


終わったはずなのに。


玲は煙を吐く。


白い煙が視界を覆う。


奏。


なんでいないんだよ。


なんで。


なんで俺は今更。


こんな気持ちになってるんだよ。


煙だけが、


静かに空へ消えていった。

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