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特別にはなれなかった

「このバンド格好よくね?」


玲とは、

音楽の好みが似ていた。


「いい」


「だろ?」


玲と一緒にいる時間は楽しくて、

いつもあっという間だった。


学校で音楽を聴いて。

放課後はCDショップへ行って。

気づけば、

毎日のように一緒にいた。


バンドを組もうと、

どちらから言い出したのかは覚えていない。


ただ、

自然とそうなっていた。


バンドに対する憧れももちろん大きかった。


それ以上に

玲と少しでも長く一緒にいたかった。


これが恋愛感情だと気づいたのは、

玲に会う度に胸が苦しくなってからだった。


でも、

その気持ちはおくびにも出さない。


玲の恋愛対象は女性だった。


男は恋愛対象外。


「俺、奏の声が好きなんだよね」


その一言が、俺を支えていた。


それだけでどんなにきついスケジュールも乗り越えられた。


「お前だって、俺のギターじゃなきゃ歌わないっしょ?」


「……うん」


玲はバンド仲間として、俺を必要としてくれている。


それでもいいと思っていた。


ーあの日までは。


メジャーデビューしてすぐの頃。

玲に彼女ができた。


「いいだろ」


……そうか。


「……おめでとう」


知っていた。


いつかこうなることも。


わかっていた。


なのに。


ショックだった。


「奏くん、ソロやらない?」


デビューして一年が過ぎた頃。


マネージャーから打診があった。


『お前だって、俺のギターじゃなきゃ歌わないっしょ?』


『……うん』


玲との約束。


「メンバーと相談します」


「メンバーはいいって」


「……え?」


目が一瞬泳ぐ。


「……玲も?」


「うん」


恋人も。


ボーカルも。


俺じゃなくても。


俺がいなくても。


玲は何も変わらない。


俺は、もう。

必要ない。


「……違う夢ができた」


そう言ったとき、玲は止めなかった。


「どんな夢?」


俺が話すと


笑って、

「そうなんだ」

って。


それだけで。


やっぱり。


玲にとって俺は、

特別じゃなかった。


離れて20年以上経つ。


玲は今でもバンドをやっているらしい。


他のボーカルがいる。


彼女もいる。


いや、

もういい歳だし。


……結婚したんだろうな。


……子供もいるんだろうか。


きっと、

幸せにしてるだろう。


これでよかった。


「……元気にしてるかな」

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