今も君の歌を探しているーアレンジverー
「このバンド格好よくね?」
高校生のとき。
始まりはそんなんだった気がする。
休み時間に、奏と曲を聴いたり。
「いい」
「だろ」
そのうち、バンドやってみようぜってなって。
奏の幼なじみの良直が入った。ドラムだけ辞めて、なかなか安定しなくて、秀治が入って。
やっとD-SOUNDS になれた気がした。
バンドが形になったら、
インディーズからメジャーデビューまではあっという間だった。
観客や関係者がどんどん増えて。
デビュー曲はオリコン16位にランキング入り。
雑誌やテレビに引っ張りだこ。
女優さんや、モデルさん、アナウンサー
出会いも山ほどあった。
今思えば。
あの頃は完全に調子に乗っていた。
だから
奏に。
「いいだろ」
彼女とのツーショットなんか見せて自慢して。
アイツの一瞬止まった顔なんて、気にしなくて。
「……おめでとう」
そう言われたときの
自分の胸の小さな痛みも、気にしなかった。
「……違う夢ができた」
メジャーデビューから2年。
唐突に奏が言った一言で。
D-SOUNDS は終わった。
解散して20年以上経っても、
あいつの代わりなんかいなくて。
ステージの上で
いつも奏を探していた。
どんなボーカルと組んでも。
あいつならこうだったとか。
ここが少しあいつに似てるとか。
何であいつなんだ。
あいつじゃないとダメだ。
何が足りない?
技術?
人柄?
声?
高校からの付き合いだったから?
どれもしっくり来なかった。
不意に、テレビで男同士のカップルの特集番組に目が留まる。
……男が男を好きになる。
……今までは、そういう人もいるくらいに思ってた。
……自分とは関係ない話。
……そう思っていた。
テレビでとあるカップルが言う。
『20年忘れられなくて、告白したんです』
「……嘘だろ」
……俺、あいつのこと。
信じられない。
信じたくない。
こんなこと。
今さら。
離れて20年以上経ってから気づくなんて。
誰にも言えなかった。
ーー
楽屋でギターを弾いていたとき。
「……またその曲?」
悠希が呆れたように言う。
「……落ち着くっつうか」
「よっぽど好きなんですね」
そう言われて、肯定も否定もできなかった。
……やっぱり。
改めて、そう思うだけだった。
「玲さん」
「ん?」
「この曲、やりませんか」
タイトルを見て止まった。
『奏ーKANADEー』
「……見てれば、わかりますよ」
「……そんなわけ」
歌詞を読む。
『たとえ戻れなくても』
『この想いは変わらない』
俺は何も言えなかった。
「……伝えられるうちに、伝えましょうよ」
曲にしても、あいつに届かないかもしれない。
でも、届くかもしれない。
そのくらいで
丁度よかった。




