表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森の中の猫のいる図書室  作者: 道上 萌叶
1章 魔力と魔術
38/41

魔術稽古打開策 2

「……まず、魔力を見ることのできる時間が短いことへの懸念は、簡単に解消できるはずです。魔力には、持ち主によって特徴があります。これは私の推測、ですが、本来混ざり合うことのない魔力を無理に混ぜて中和しようとしたことで、魔力同士が反発し合って魔力が見えたのかと思います。……その状態を、維持し続けます」


「維持……つまり、完全に中和させるのではなく、中和する1歩手前で止めている、と言うことですか?」


「……はい」


 そんなことができるのか、と言いたげなエルトン様に頷くと、彼は目を細めて口角を上げた。

 1週間くらいシルヴィオ様の護衛についている私は、エルトン様とも同じくらい一緒にいた。だから魔力を見なくても、彼がこの顔をしている時の感情がわかる。


(エルトン様、楽しそう)


 エルトン様は普段、魔術を使わない。シルヴィオ様の護衛で補佐でもある彼は、魔道具を使うことはあるけど、魔力についても詳しくはないみたいだった。

 でも、私が今言っているのは非常識なことだとわかっている。わかっていて、私が本当にできるのか楽しみにしている。エルトン様の魔力が楽しそうにぽこぽこ弾けているのが証拠だ。


「……当然、魔力を中和する直前で止めることになるので、シルヴィオ様に害はありません。見えていなくても、特徴の異なる魔力は、普段から反発しあっていますから」


「目に見える状態になるまで反発させた場合の影響はないのですか?」


「反発するのは、シルヴィオ様の身を守ろうとする防衛反応です。実際に異なる魔力がシルヴィオ様の体内に入るわけではないので、危険はありません」


 魔力が反発していなければ、どんな魔力であっても自由に体内に入ってきてしまう。そうなればタイプの違う魔力が体内で混ざって体に不調をきたす、つまり、魔力酔いを引き起こすことになる。だから魔力の反発は、自分のものではない魔力から自分の身を守るものでもある。

 どれだけ魔力の制御が得意で、どれだけ魔術の扱いに長けている人でも、他者の魔力から身を守るために、自身の周りに魔力を纏っている。完全に体内に収めることをしない。魔力酔いしやすいシルヴィオ様は、その魔力が()()()()()()()()だ。


「ですが、シルヴィオ様は人一倍魔力に酔いやすいのですよね。ならば体内に入らずとも、魔力酔いを引き起こす可能性があるのでは?」


「……そうならないために、シルヴィオ様の魔力量は他の方より多くなったはずです」


()()()()()?」


 それはどういうことだ、とエルトン様が眉を寄せた横で、シルヴィオ様の魔力が僅かに揺れ動いた。


「……シルヴィオ様は、幼い頃、魔力量が少なかったのではないですか?」


 シルヴィオ様は、何も初めから魔力を感知できなかったわけではないのでは。そう推測を立てて問いかけると、シルヴィオ様の周りの空気が、いや、魔力が少し緩んだ。


「ああ、エレナの言う通りだ。私は【ウニロ】ではないが、5歳頃までは【ウニロ】と大きく変わらない程度の魔力量だった。それまでは僅かながら魔力を感じることができていたしね」


 やはり、と私は納得した私は、戸惑いに魔力を揺らしながら、エルトン様が「存じませんでした」と呟いたのを聞いた。すぐ傍にいたシルヴィオ様にも聞こえたらしく、「言っていなかったからね」と困ったように笑っている。


「……魔力を感じなくなったのは5歳になって半年ほど経ってからだよ」


 目を伏せながら言うシルヴィオ様は、魔力を感じなくなった原因、急激に魔力が増えた原因とその時期を知っているようだった。それはきっと、


「……エミリオ様の誕生、ですね?」


「! ああ、そうだね」


 入り口に立っていたアーウィン様の魔力が、ほんの少しだけ揺れた。おそらく彼は、魔力の少なかったシルヴィオ様を知っている。当時のことも、きっと知っているのだろう。

 カチカチ、と脳内で音を立てて、バラバラだったパズルのピースがはまっていく。

 抑えられない魔力量と、感知できなくなった魔力。それもこれも、エミリオ様の魔力から、シルヴィオ様を守るものだった。


「シルヴィオ様の魔力とエミリオ様の誕生がどう関係するのです?」


 眉を寄せたエルトン様は、魔力が増えた後のシルヴィオ様しか知らないのだろう。だから何があったのか知らない。

 私も15年前、エミリオ様が生まれた時に何があったのかは知らない。でも、脳内再生でパズルはほとんど完成している。推測ではあるけど、わたしが考えていることは正しいと確信している。


「……生まれたばかりの子は、魔力を抑えることができません。魔力量の少なかったシルヴィオ様は、生まれたばかりのエミリオ様の魔力に反発しきれず、魔力酔いを起こしてしまったんです。エミリオ様の魔力量は、今のシルヴィオ様に負けないくらい多いので」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ