表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森の中の猫のいる図書室  作者: 道上 萌叶
1章 魔力と魔術
34/42

緊急魔道具一斉改装 2

 魔術とは、呪文を唱えることによって生み出した術式に、魔力をのせることで発動する術のことだ。術式を生み出すだけでは展開することができないし、魔力がなくても展開することができない。

 生活魔術である照明魔術の明るさや、攻撃魔術の威力などの魔術の効果は、のせる魔力量を調整することで変えることが可能となる。

 そして今回私が展開する魔術は、防御結界と異常察知魔術、どちらも範囲指定魔術だ。

 範囲指定魔術とは、編み出した術式に魔力をのせた後、術式に乗せた魔力を操作して、魔術を展開させたい範囲を指定する必要がある。指定するには、魔力を薄く広げること。つまり、魔術をかけたい範囲全体に、術者が操作する魔力を薄く均一に広げる必要がある。

 私の魔力量では、1度の魔術展開で維持できる範囲は、1つの領地が限界となる。けど、あらかじめ魔力を込めてある魔石を使用する超広範囲魔術は、限界を超えた範囲指定が可能になる。と、家にある魔術書で読んだことがある。

 超広範囲魔術を展開するには、事前準備が必要になる。

 まずは魔石の準備。術式を展開する核となる魔石が1個と、魔力量を補うための魔石が5個、合計で6個の魔石を用意して、全てに魔力を込めておく。

 この時に用意する魔石は、どれも最上級の価値があるものが好ましい。個人の限界を超えて展開することになる超広範囲魔術は、安価なもので済ませようとすると、魔力量が足りずに失敗する可能性が高くなるからだ。

 次に、術式を展開する核となる魔石を術者が持ち、5つの魔石は、魔術を展開させたい範囲の外周に、等間隔で置く。今回の超広範囲魔術はプリマベル王国全域にかけるものだから、全て国境付近に、等間隔になるように置いてもらっている。

 すべての準備が整ったら、後は魔術を展開するだけだ。

 でもそれにはまず、核となる魔石、つまり、今、私が持っている魔石を通じて、事前に用意されている魔石に込められたすべての魔力を感じ取る必要がある。なのに私は、魔術を展開する前の、魔石に込められた魔力を感じ取ることができていない。

 国内全域に張り巡らす超広範囲魔術は、相当な量の魔力が必要になる。今日まで、1週間をかけて、6つの魔石に魔力を込めてもらった。だから1つ1つの魔石には、相当な量の魔力が込められている。にもかかわらず、魔力を感じることができていないのは、シルヴィオ様がここにいるからだ。

 シルヴィオ様は、彼自身に存在している魔力を感じることができていない。故に、魔力を制限していない。そして今、私は彼の魔力に当てられないようにかけていた、対魔力防御結界を解除している。シルヴィオ様の魔力は、今、この部屋の中に満ち溢れている。最上質の魔石に込められた、大量の魔力を感じ取ることができないほどに。


「‥‥‥作戦、少し変更します」


 瞬時に判断を下して、すぐに魔力を感じることを中断する。

 初めて使用する超広範囲魔術に集中するため、私は展開していたすべての魔術を解除している。でも、このままでは超広範囲魔術すら展開させることができない。

 閉じていた目を開けて、短く呪文を唱え、もう慣れてしまった対魔力防御結界を展開する。シルヴィオ様個人に向けて。

 これでシルヴィオ様から放出され続ける魔力はなくなった。次は、室内に充満してしまったシルヴィオ様の魔力をどうにかする。

 魔力を見ることのできる私にとって、その色は持ち主の感情に左右される。でも、持ち主から切り離されてしまった魔力の色は、全て透明だ。少しだけ黄色がかっているように見えるけど、よく見ようとしなければわからない。

 でも感じることはできる。少しでも正確に魔石の魔力を感じるためには、部屋に充満した魔力をどうにかする必要がある。

 もう1度短い呪文を唱えた私は、術式に乗せた私の魔力を薄く引き伸ばして、室内に存在している魔力を包み込むように、室内全体に張り巡らせる。私の魔力で包み込むことができたら、慎重に、でも素早く魔力を操作して圧縮する。

 この2つだけなら、同時展開するとしても、集中を切らすことはないだろう。


「ふぅ……」


 これでようやく、魔石の魔力を感じることができる。

 集中するために目を閉じると、今度は意識を向けなくても、自然と手の中の魔力を感じることができた。

 手の中の魔力の塊を感じながら、脳内でプリマベル王国の地図を描き、事前に指定していた、他の5つの魔石が置かれている場所に意識向ける。手の中の魔力に繋がるように、ここから離れた位置に5か所、似たような魔力を感じることができた。

 魔石に魔力を込めるのは簡単なことだが、適当に魔力を込めただけでは、こうして離れた位置にある魔石の魔力を感じることができない。それでも今、私が国境付近にある魔石の魔力を感じることができるのは、魔石同士の魔力を均一に混ぜて中和させたからだ。今、ここにある魔石と国境付近にある5つの魔石は、普通に見たらそれぞれ別々の魔石だ。でも、こうして中心にある核の魔石を通じると、6つの魔石は全て繋がっている、1つの巨大な魔石だと感じる。家の魔術書で読んだ、超広範囲魔術の心臓の中心、それが今、私の手の中にある。心臓の中で、今、とんでもない量の血液、魔力が、循環している。私は今から、この量の血液を全て、余すことなく操らなければならない。

 深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。

 プレッシャーがのしかかってくる。私にこんな魔力を操作できるのかと、私が私を追い詰めている。

 超広範囲魔術は古代魔術の1種だ。古代魔術を使用できるものは、現在は存在しない。

 でも、カシミロ様はできると言っていた。あの言葉は、嘘ではなかった。私ならできると、カシミロ様は確信していた。だから私なら大丈夫。私は応用ができないけど、教科書に書かれたことは、1度読んだ本の内容は、全て正確に実行することができるから。

 深く吸った息をすべて吐き出してから、瞼を持ち上げる。持ち上げた状態でも、手の中の魔石を通じて、巨大な魔石を感じることができる。

 息を吸い込んで、防御結界と異常察知魔術を組み合わせた呪文を唱えた直後、私の頭上に小さな魔術式が現れた。

 これは私にしか見えないんだっけ、となぜか今、シルヴィオ様の護衛初日の事を思い出す。

 どうして魔術式が私にしか見えないのか、気にはなる。でも今はそれを気にしている場合じゃない。

 意識を集中させて、頭上の魔術式を大きくさせていく。天井を突き抜けて、魔法陣のほとんどが室外に出てしまってからは、脳内に描いている地図を参考にして、プリマベル王国の空を覆うギリギリの大きさまで広げる。

 魔術式の巨大化が完了したら、今度は魔力を術式に乗せる。慎重に、それでも素早く、巨大な心臓から血液を送り出していく。見る見るうちに魔術式に魔力がのって、今、魔力の塊がプリマベル王国の空の中心に存在している。あとは、この魔力を全て均一に、国内全域にいきわたらせるため。

 目を閉じて、脳内にもう1度地図を描く。

 まずは国境。

 目を閉じたまま、魔力を操作して、塗り絵をするように、国境から少しずつ、国内を魔力で塗りつぶしていく。

 外から内に。外から内に。

 魔力が足りなくならないように意識しながら、ムラができないように、魔力で国内を塗りつぶしていく。

 外から内に、魔力が国内を覆いつくして、最後、中心になっている庁舎の魔術師団長室に魔力が迫ってきた。

 肌で魔力を感じて、中心にいる私の周りも魔力で覆うことができてから、ゆっくり目を開ける。


「……超広範囲魔術、展開できました」


 その直後、5の大鐘が、プリマベル王国の空気を震わせた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ